07/09 - EU環境責任指令 - European Directive on Environmental Liability

2004年4月付EU環境責任指令 -
環境損害の防止及び修復に関する環境責任についての2004年4月21日付欧州議会および理事会指令2004/35/CE Directive 2004/35/CD of the European Parliament and of the Council of 21st April 2004 on Environmental Liability with regard to the Prevention and Remedying of Environmental Damage (ELD指令)

背景

環境損害の防止及び修復に関する環境責任についてのELD指令は2004年4月30日に発効しました。同ELD指令はEU加盟国が2007年4月30日までに同指令に準拠した国内法を整備するよう求めています。しかし、最近になって多くの加盟国がようやく同指令の国内法化に至りましたが、未だに準拠に必要な法案が成立していない加盟国もあります。2009年7月1日現在、以下の加盟国が同指令の国内法令化の完了を欧州委員会に通知しています。:イタリア、リトアニア、ラトビア、ハンガリー、ドイツ、スロバキア、ルーマニア、スウェーデン、スペイン、エストニア、キプロス、マルタ、ブルガリア、オランダ、ポーランド、チェコ共和国、ポルトガル、デンマーク、ベルギー、アイルランド、フランス、ルクセンブルク。 英国としてはイングランドとウェールズは法令化を通知していますが、スコットランドと北アイルランドでは法案の採択を待っています。

本回覧では、同指令の主要条項をまとめていますが、他の指令と同様、それぞれの国内法で同指令の主旨をどのように満たすかについてはある程度柔軟な対応が認められていることをご了承ください。また同指令では、その規定する環境損害の防止及び修復に関し、各加盟国がより厳しい措置を制定することを妨げてはいません。

本ELD指令の基本原理は、環境損害あるいは差し迫った環境損害の脅威をもたらしたオペレーター (船主を含む)に財政的責任を負わせるということです。従って同指令の目的は、オペレーターが財政的責任の負担を軽減するために環境損害のリスクを最小限にする措置を講じ実践するよう促すことです。

本ELD指令においては、環境損害(Environmental damage)とは「保護種および自然生息地あるいは特定の自然科学に影響のある地域への損害」、「水への損害」および「土壌への損害」と定義されています。同指令は、オペレーターに、特定の職業活動(occupational activities)から生じた環境損害の防止及び修復措置に係る費用について厳格責任を負わせています。特定の職業活動として、危険物質(註1)、汚染物質(註2)、越境輸送する廃棄物(註3)などの内陸水路あるいは海上運送があげられます。

本ELD指令の規定以外のすべての職業活動により生じた保護種および自然生息地への損害あるいは差迫った脅威については、オペレーターに過失責任を負わせています。同指令は人身事故や個人財産あるいは経済的損失には適用されません。

同指令の下では、オペレーターは以下を求められています。

  • 環境損害はまだ発生していないが、損害が発生する差し迫った脅威がある場合は必要な防止措置を取ること
  • 防止措置を講じたにもかかわらず、環境損害の差し迫った脅威がなくならない時にはいつでも、脅威に係るすべての状況を管轄当局へ通知すること
  • 環境損害が発生した場合は速やかに管轄当局へ通知し、更なる損害を防止、抑制するためにあらゆる実践的方法
    を採り、必要な修復措置を取ること

現行の国際責任補償体制との関係 

国際責任補償体制を施行しているEU加盟国では、責任あるいは補償が下記の補償体制の適用対象となる事故から生じた環境損害あるいは損害の差し迫った脅威は、本ELD指令の適用除外となり、これら補償体制が適用されます。

  • CLC条約:油濁汚染損害の民事責任に関する国際条約
    (The 1992 International Convention on Civil Liability for Oil Pollution Damage)
  • IOPC ファンド条約:国際油濁補償基金
    (The 1992 International Convention on the Establishment of an International Fund for Compensation for Oil Pollution Damage)
  • バンカー条約:タンカー以外の船舶の燃料油による汚染損害に関する国際条約
    (The International Convention on Civil Liability for Bunker Oil Pollution)
  • HNS条約: 有害危険物質の海上輸送に伴う損害についての責任と補償に関する国際条約
    (The International Convention on Liability and Compensation for Damage in Connection with the Carriage of Hazardous and Noxious Substances by Sea) 

持続性油の海上輸送から生じた油濁損害に対する責任及び補償体制の枠組みである1992CLC及び1992IOPCファンド条約については、EUのすべての沿海加盟国が批准しています。燃料油の流出により生じる汚染損害をカバーするバンカー条約はEU加盟国のうち15カ国のみが批准しています。HNS条約は国際的にはまだ発効していません。EU加盟国の水域における有害危険物質の海上輸送から生じる、あるいはバンカー条約を批准していないEU加盟国の水域における船舶燃料油の流出あるいは排出から生じる損害あるいは損害の差し迫った脅威に対する責任及び補償は、本ELD指令の適用対象となります。

本ELD指令では、船主は1976年船主責任制限条約(LLMC)あるいは1996年議定書を批准する旗国の国内法に従い、責任制限の権利を引き続き保有することを規定しています。イタリア、ポルトガルおよびスロバキアを除き、その他すべてのEU沿岸加盟諸国は、1976年船主責任条約あるいは1996年議定書のどちらかを批准しています。本ELD指令に従って発生する防止措置及び修復措置の費用はイタリア、ポルトガルおよびスロバキアでは、これら国際的な責任制限制度の下で制限されず、これら管轄地域では、潜在的に無限責任が課されることがあります。 

修復措置 (Remedial Measures)

本ELD指令の枠内で環境損害が発生した場合、オペレーターは指令に従って行う修復措置を特定し、管轄当局の承認申請を行います。環境損害の修復を確実にする最良最適な手段を決定するために(オペレーターが)遵守すべき共通の枠組みは本ELD指令に概説されています。

修復措置を提案するのはオペレーターですが、できない場合は当局が修復措置を特定します。管轄当局はオペレーターが修復措置を実行することを要求するかもしれませんし、当局自身が行うことも考えられます。

これら修復措置は、できるだけ最良な方法を使って評価し、また本ELD指令に記載の基準リストに基づくことが義務付けられています。これら措置には、公衆衛生や安全面でそれぞれの選択肢の効果、その選択肢を実行した場合のコスト、成功率、それぞれの選択肢により将来の損害を防止する可能性などが含まれます。これら措置については、当局が適切と認定し、損害を受けた天然資源あるいは自然生息地を、損害が発生する以前の状態あるいはそれと同様の状態に修復するに十分であると満足する必要があります。修復措置は、初動的措置(Primary)、補足的措置(Complementary)、財政補償的措置(Compensatory)の組合せとなります。

初動的修復は、損害を受けた資源あるいは失った自然の機能を、損害が何もなかったような状態に戻す、あるいは近づける措置です。補足的修復は、初動的修復では損害を受けた天然資源や自然の機能が、損害がなかったかのような状態まで十分に修復しなかった場合に補足的に行う措置です。これらの措置は損害があった場所かあるいは代替地で行うことができますが、それが可能で適当な場所であっても、代替地は損害があった場所と地理的に関連性がなければなりません。補償的措置は、損害が発生した日から初動的あるいは補足的措置が行われるまでの当座の損失を補うために実施される措置のことです。

この補償的措置には、一般市民への財政的補償は含まれてはいません。本ELD指令においては被害を受けた環境の修復あるいは回復の解釈は、IMOが採用する国際的な責任補償制度の下での環境損害に対する補償の適用範囲と異なっています。

本ELD指令では、一人あるいは複数の身元確認可能な汚染者(identifiable polluter(s))を明確に特定できるはずで、損害は具体的に、かつ定量化することができ(concrete and quantifiable)、損害と汚染者の間には因果関係(Casual link)があるはずであると明記しています。 

除外規定

オペレーターは下記の事実を立証すれば本ELD指令の下での責任から除外されます。: 

  • 適切な安全対策を講じていたにもかかわらず、第三者により損害が発生したということ
  • 当局から発せられた強制命令あるいは指示に従った結果生じた損害であるということ

また、オペレーターには落ち度や過失がなく以下の事柄から環境損害が生じたということを、オペレーターが証明した場合、加盟国はオペレーターに修復費用を負担させないことを許可することができます。

  • オペレーターがその職業活動において、事故当時の科学的・技術的知識では損害を引き起すとは考えられなかったと立証できる製品を使用したこと
  • 当該国内法及び規則の下における認証、授与された条件に完全に従っていたか、特別認可された排出あるいは出来事

さらに本ELD指令は、武力紛争、戦争行為、内戦、暴動、あるいは異常かつ不可避で抵抗しようのない自然現象によって引き起こされた環境損害、あるいは差し迫った脅威は適用対象としていません。

本ELD指令には強制保険制度はありません。しかし、加盟国はオペレーターが本指令の下での自身の責任をカバーするために財務的保証契約を提供する何らかの金融保証機関を整備するよう求められています。

本ELD指令は欧州委員会(European Commission)に対し、実際の環境損害の修復現場における本指令の効果や、損害保険その他財政保証を2010年4月30日までに適用する可能性などについての報告を求める多くの再検討条項があります。また欧州委員会は、欧州議会(European Parliament)や閣僚理事会(European Council)に対し、2014年4月30日までに本ELD指令改訂案や、国際責任補償体制及びLLMCにおけるオペレーターの責任制限の権利の適用の見直しを報告するよう求められています。

国際グループは、EU加盟国による本ELD指令の実施及び同指令の再検討条項に基づき欧州委員会が提出する報告書を今後とも監視してまいります。

同様の回覧が国際グループ加盟のクラブ・メンバーに送られています。 

UK P&I クラブ 日本支店

註1. 危険物質(Dangerous goods)

IMDGコード、IBCコード第17章及び液化ガスばら積み運搬船の構造及び設備に関する規則第19章に規定の物質

註2. 汚染物質(Polluting goods) 

マーポール付属書Iに規定の油、同付属書IIに規定の液化有毒物質及び同付属書IIIに規定の有害物質

註3. 越境輸送廃棄物(transboundary shipment of waste)

EC内外の輸送時の管理監督について定めたCouncil Regulation 259/93において許可の必要な、あるいは輸送禁止された廃棄物

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