29/10 - ニッケル鉱の安全輸送(インドネシア・フィリピン)

アウトライン

  • 最近の死傷事故により、貨物の液状化によって船舶が復元性を失うという危険性が注目されています。
  • インドネシア及びフィリピンから輸出されたニッケル貨物は、過剰に水分を含みやすく、そのために液状化し不安定になりやすい貨物として認識されています。
  • 国際海上固体ばら積み貨物(IMSBC)コードは2011年1月1日より義務化され、特に液状化するおそれのある貨物に関する規定が盛込まれました。
  • 本クラブ回覧はそのような貨物に関する義務や注意事項に関してお知らせするものです。
  • IMSBCコードが遵守されなかった場合、このような積載貨物の移動から生じる責任及び費用について、クラブのてん補が制限されることがあります。

組合員各位、

インドネシア及びフィリピン ー ニッケル鉱貨物の安全輸送 

はじめに

2010年10月、11月にJian Fu Star号、Nasco Diamond号及びHong Wei号の3隻がインドネシアから中国へニッケル鉱を輸送中に沈没し、44名の船員の人命が失われた事はご承知の通りです。沈没の原因はまだ確定しておりませんが、ニッケル鉱は、微粉鉄鉱石(Iron Ore Fines)や多くの精鉱と同様、積載時に貨物の水分量が運送許容水分値(TML: Transportable Moisture Limit)を超える場合、液状化するおそれのある貨物です。そのような貨物が液状化すると、船舶は復元性を失い、ひいては転覆につながる可能性があるため、上記3隻は貨物の液状化の結果沈没した可能性が高いと思われます。

インドネシア及びフィリピンで積載されたニッケル鉱貨物が液状化し、船舶の復元性を失ったものの、幸いにも本船の喪失に至らなかったケースは数多く報告されています。あるケースでは、座礁して船体がかなり損傷した事故もありました。現在フィリピンでは、ニッケル鉱はルソン島のサンタクルズ(Santa Cruz)、ミンダナオ島のスリガオ(Surigao)とトゥバイ(Tubay)、パラワン島のリオ・トゥバ(Rio Tuba)の4か所のみで積載されています。

鉱石貨物の液状化は、通常の航海でも、例えば航海中の船の動揺やメイン・エンジンや他の機器の振動等によって引き起こされる場合があります。

国際グループはインドネシア及びフィリピンからニッケル鉱の積載及び運搬について、2010年11月24日から12月3日に開催された第88回IMO海上安全委員会(MSC)においてインドネシア及びフィリピンの代表に非公式に懸念を表明しました。国際乾貨物船主協会 (Intercargo)はこれに賛同し、ニッケル鉱など液状化のおそれのある貨物の運送に伴う危険性について言及し、さらに、傭船者や船長の中には、荷送人の申告書と試験結果を、独自に検証する機会も与えられず受け入れる事を激しく強要された者がいること事を指摘しました。マーシャル諸島はIntercargoの意見を支持し、インド代表は同国当局がインドで積載される微粉鉄鉱石の安全輸送のために取っている改善措置について説明しました。

ニッケル鉱の積載と輸送に伴う特定の問題

インドネシア及びフィリピンからのニッケル鉱の積載及び輸送に関して、下記のような特定の問題があります。

(a) ほとんどの鉱山は辺鄙な場所にあるため、荷役の港湾の設備が無いか、非常に限定されており、積荷役の機材や方法は基本的なものしかありません。貨物は海岸にそのまま山積みされているため、完全に野ざらしの状態です。

(b) 従来ニッケル鉱貨物の積出しは、かつては雨量の少なかった2月から5/6月の乾燥した時期に行われていました。しかし、ここ数年の事例では、雨季と乾季の明確な境目が無くなり、乾季にも激しい雨が降るようになってきました。そのため山積み貨物は、今までと同じような天日乾燥の恩恵を受けていません。

(c) 鉱山が遠隔地にあることから、サーベイヤー又は専門家が本船に代わって現地に向かい、貨物サンプルを採取することが困難です。

(d) インドネシアやフィリピンでは、試験所がほとんどありません。通常、鉱山は独自に試験所を持っていますが、貨物サンプルの試験の際に適切な試験機材が満足な状態で使われているか、国際海上固体ばら積み貨物(IMSBC)コードに規定する手順に沿っているかを判断することはほとんど不可能です。これまで行う事ができた鉱山の機材や試験、サンプリング方法の監査では否定的な結果でした。従って、2011年1月1日付で国際的に強制化されたIMSBCコードの下で荷送人が求められている、運送許容水分値(TML)と流動水分値(FMP:Flow Moisture Point)の証明書などの情報は信頼性に乏しいと言えます。

(e) ニッケル鉱は産地により成分や物質特性がかなり異なっています。貨物が均質でないため、貨物全体のTMLや水分値を正確に判断するのは困難です。荷送人がいくつもの産地から出荷された不揃いの貨物に対してTML証明書を1通しか提出しない事がしばしばあり、これはIMSBCコードに違反しています。

(f) ニッケル・ラテライト鉱には粘土粒子が多く、そのためにフローテーブル法によるFMP試験は主観的になりがちで、その結果は疑問の余地が残ります。フローテーブル法での試験が適切でない場合には、IMSBCコード附則2の1.1.1節の規定では、積地の関係当局が認める試験方法を用いなければなりません。

(g) 船舶への積載はいつも描地で、海岸に山積みされたものを自ら運んできたバージあるいは輸送艇から行われます。山積みされていた貨物は、そのサンプル試験の後、鉱山から海岸までの輸送中や海岸で山積みされている間に雨ざらしになった事が考えられます。IMSBCコードでは、水分値の試験と積載の間は7日を超えてはならないと規定していますが、これはほとんど守られていません。

(h) 鉱山で行った試験結果を受け入れるよう荷送人から激しい圧力を受けながらも、本船サイドのサーベイヤーが貨物サンプルを採取し、独自の試験を行ったという報告が多数あります。時には、身体的な脅迫行為にほかならない事もありました。

国際海上固体ばら積み貨物コード(IMSBCコード)

IMSBCコードは1974年SOLAS条約及びその議定書に従い発効しました。IMSBCコードは、ニッケル鉱のように液状化するおそれのある貨物を含む、固体ばら積み貨物の安全な積付と輸送に関し、国際的に合意された規則を定めています。同コードに記載されていない貨物は、第1節の1.3項が適用されます。同コードは2011年1月1日より国際的に強制適用されました。

1974 年SOLAS条約の附属書第VI/2章では、荷送人は船長又はその代理人に対して、貨物の適切な積付と安全輸送が実施されるために必要となる事前注意を実行できるよう、積付の前に貨物についてのすべての関連情報を提供する事が求められています。

IMSBCコード第4節では、貨物に関する情報を提供する義務と責任は、荷送人にあると規定しています。

液状化のおそれのある貨物(種別A貨物)について最も重要な事は、船積時における貨物水分値及び運送許容水分値(TML)を確認する証明書が掲示されなければならない事です。IMSBCコードでは、TMLは流動水分値(FMP:Flow Moisture Point)の90%と定めています。FMPは試験所による貨物サンプルの分析によってのみ確定します。TMLを超える水分を含む貨物については、(特殊装備のある船舶か専用船のほかには)、船積みを受入れるべきではありません。ニッケル鉱はIMSBCコード記載の物質一覧には記載がありませんが、種別A貨物として扱われるべきです。

(A) 船長の義務

船長又はその代理人は、船積みの開始から終了まで作業を監視するべきです。船長又は本船代理人が上記、貨物に関するすべての必要情報を書面で入手するまで、船積みを開始するべきではありません。SOLAS条約では、船長が貨物の状態が船舶の安全性に影響を及ぼす懸念を持つ場合には、船長は貨物の船積みを拒否あるいは中止するという大きな権限を持っています。

(B) 荷送人の義務 

(1) 貨物情報

荷送人は、貨物が船舶に安全に積載、運送及び荷揚される事を可能にするために、IMSBCコードで求めるすべての情報及び書類を、船長又はその代理人に対し、船積みより十分に前に書面で提供しなければなりません。

(第4.2.1節)

(2) 書類

書類には以下のものを含めなければなりません。

(a)

積載される貨物の水分値に関する証明書/申告書、および、荷送人の知り得る限りにおいて、その水分値が貨物積載場所全体の平均値であることを示す書面。貨物が複数の船艙に積載される場合は、水分値の証明書/申告書は各船艙に積載した貨物の種類毎に証明しなければなりません。ただし、適切なサンプリングと試験を行い、異なる種類の貨物でも輸送貨物全体が均等であることが明らかな場合を除きます。

(b)

適格な試験機関による貨物のTML及びFMPを証明する証明書。 IMSBC コードは、通常の貨物については生産工程に何らかの変更がない限り、FMP試験は船積みの6カ月以内とし、含有水分値の試験は7日を超えてはならないと規定しています。しかし、ニッケル鉱のように性質が不規則に変化する物質については、船積み毎にチェックすべきです。船長は、荷送人の試験所で作成された含有水分値の証明書や、TMLに近い含有水分率については、用心しなければなりません。もし貨物の水分値試験から積載までの間にかなりの雨が降った場合には、荷送人はその貨物の水分値がまだTMLを下回っている事を確認するための照合試験を実施しなければなりません。(IMSBCコード 第4.5.2節)

 

(3) 試験所

荷送人は、貨物サンプルについて試験を実施した試験所を明らかにしなければなりません。しかし、前述の通り、鉱山の試験所で実施した試験結果は疑わしいため、本船が雇ったサーベイヤーや専門家が独自に貨物のサンプル試験を実施するべきです。

(4) 備蓄される貨物

荷送人は、どの備蓄場所から貨物が積載されるかを明らかにし、サンプル試験が実施され、どの証明書が発行され、その備蓄場所から出荷された事を示す申告書について書面で明確にしなければなりません。

(5) バージ

貨物を本船に輸送するためにバージを使う場合には、船長/本船/サーベイヤーがそのバージを個々に認識出来るものでなければなりません。

推奨する注意事項

1. 積載は、船長が貨物に関するすべての必要情報及びIMSBCコードあるいは(同コードと矛盾しない)現地法により荷送人に提出の義務がある書類・証明書を入手し、その貨物が安全に積載し運送されると確認するまで、荷役を開始するべきではありません。
2. 前述の最近発生した事故を考慮すると、メンバーの皆様はいずれにしても、積載する前に、この貨物によるリスクを軽減するための方策を、船舶管理者と検討し直していただくようお願いします。もし船長が積載する貨物の状態に何らかの疑念を抱かれた場合には、船積み前に、船長を補佐するために本船側サーベイヤーを採用する事を真剣に検討いただくべきと考えます。しかし、関係当局(フィリピンでは鉱山局となる模様)や荷送人そして傭船者に対し、本船側がサーベイヤーを起用したのは、IMSBCコードあるいは現地法の下での荷送人の責任を軽減するものではないことを明確にしておくべきです。

サーベイヤー起用の条件は以下の事柄を含むべきです。

(a) IMSBCコード及び(同コードに矛盾しない)現地法による義務を遂行する船長を補佐すること。

(b) 荷送人と連携し、本船に積載する貨物が置かれている場所を確認すること、また貨物サンプルがIMSBCコード第4.4節及び第4.6節の規定に従い適切に採取されたかどうかを確認すること。

(c) 船主側の貨物サンプルとして採取したものを独立した権威ある試験所で試験をすること。これは国外での試験となります。

(d) 試験所がIMSBCコード附則2に従って試験を実施したかどうかを確認するために、独立した専門家と連携をとること。

(e) 荷送人の証明書と船主側のTML及び水分値の試験結果を比較すること。船長は、荷送人の試験所で作成された含有水分値の証明書や、TMLに近い含有水分率については、注意を怠らないようにしなければなりません。もし貨物の水分値試験から積載までの間にかなりの雨が降った場合には、荷送人はその貨物の水分値がまだTMLを下回っている事を確認するための照合試験を実施しなければなりません。

(f) 船積み開始から終了まで、作業を監視する。特に天候の状態やバージ/輸送艇に積みこまれた貨物に水分値の高い貨物がないかに注意すること。

(g) 必要に応じて、水分値試験あるいは缶テストを行う場合には、船積みを中止すること。(IMSBCコード 第4.5.2節及び第8.4節)

(h) 船済みされる貨物が、指定されたもので試験済みの備蓄場所及びバージから積みこまれたものである事を確認するため、備蓄場所及びバージを監視すること。これは、船積みのために提供されたバージ/輸送艇を注意深く数え、確認する事を含みます。

(i) 雨天の場合、船積みを確実に中止させること。

(j) バージや輸送艇から船積みされる貨物を良く観察する事。もし貨物の水分値に疑念を抱いた場合、特に降雨があった場合は缶テストを実施すること。缶テストはIMSBCコード第8節に、船長は貨物の状態が懸念される場合は、船長が抜き打ち検査を実施できると規定されており、これは荷送人の義務である試験所での試験に代わるものではありません。IMSBCコードの第8節には、貨物サンプルに液状化の兆候がある場合、つまり自由含水率が高く表面が平たくなった状態の場合は、積荷を容認せずに他の試験所で測定し直すことが規定されています。それでもなお、決して缶テストの結果のみで貨物を受け入れるべきではありません。なぜなら缶内部のサンプルの状態が把握できないため水分値を正確に読み取ることが難しいためです。このテストは貨物が輸送に不適切であるかどうかは示しますが、貨物が船積みに適しているかは判断できません。これを判断できるのは、試験所で行う試験だけです。

3. 船長あるいはサーベイヤーが、貨物を安全に輸送する事を確認する書類を渡された場合は、これにサインする事は避けるべきです。IMSBCコードでは、貨物が安全輸送に適する事を申告する義務は荷送人に課せられており、船長が上記のような書類にサインすることは、後に事故が発生した場合に、荷送人に対するメンバーの請求権を侵害する可能性があるからです。

4. 船長、サーベイヤーあるいは専門家に対して業務上のプレッシャーを強いたり、脅迫を行うことがあった場合には、国際グループが問題として取り上げ、インドネシア/フィリピン当局に交渉いたしますので、当クラブへご報告ください。

5. メンバーの皆様は、ニッケル鉱を輸送するにあたり、傭船契約書に適切な条項を記載するなど、契約の締結前に、契約書上の権利が保護されているかどうかを検討するべきです。同様に IMSBCコードの規定を完全に適用する権利、自由裁量で独自のサーベイヤーを起用する権利、貨物サンプルを採取し試験を実施する権利などを制限するような傭船契約を締結するべきではありません。

6. インドネシアあるいはフィリピンで船積みするニッケル鉱貨物について契約上あるいは安全輸送に関する問題をお持ちの場合は、当クラブにご相談下さい。

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