QCR Spring 2019-11: 船の差押えによる損害の担保約束(Cross-undertaking)

QCR Spring 2019-11: 船の差押えによる損害の担保約束(Cross-undertaking)

Stallion Eight Shipping Co SA v NatWest Markets plc (The “MV Alkyon”) [2018] EWCA 2760

事実

抵当権者である銀行は、ローン契約において不履行があったとして、ニューキャッスルにおいて、本船「Alkyon」号を差押えました。銀行は、船主に対し、本船の市場価格が対残債価格比率(Value to Loan Ratio)125%を下回るので、その不足分について、追加の担保を要求しました。船主は、価格評価を争い、追加の担保を提供しませんでした。銀行は、残債が直ちに期限を到来し支払われるべきことを宣言する期限の利益喪失通知(Notice of Accelaration)を送付した後に、対物訴訟の訴状を提出し、差押命令を取得しました。船主は、海事裁判所に対して、銀行からの損害担保約束がない場合には、船は差押から解放されるべきとの命令を求めました。

第1審裁判所は、仮差押(freezing injunction)を求める申立人とことなり、対物訴訟の原告としての銀行は、船の差押から生じる損害についてこれを担保する約束を提供することを要しない、と判示しました。船主は、控訴しました。

控訴審判決

適切な事案においては、裁判所は、議会や法制定委員会(Rules Committee)の関与なしに、十分な担保のない場合にも船を差押から解放することを命じないという通常の慣行から離脱することもできるが、裁判所は、「その通常の慣行から離脱しるためには、長く、また、厳しく、考慮しなければならないであろう。」と述べました。

控訴院は、英国法の現在の立場、つまり、差押をなした当事者に対しては、その者が悪意で、又は、悪意を示唆するような重過失がない限り、違法な差押について、損害賠償を請求できない(Evangelismos号事件判決((1858) 12 Moo PC 352, 14 ER 945))という立場を支持しました。Evangelismos号事件判決のルールに関し表明されてきた懸念、つまり、差押が不当なものでありながらも、船主には、その損失についての救済策がないということを知った船主にとり、厳しいものである(「Kommunar 号事件(No 3)([1997] 1 Lloyd’s Rep 22)」、という点を認識しながら、控訴院は、申立てを棄却し、爾後の請求に係る担保を得るという点での差押の利用可能性、及び、有益性について、以下の8つの根拠に基づき、海事裁判所の裁判官の判決を支持しました。

1.差押えを利用できることは、対物請求にユニークな特徴を与える。海事差押の利用を制限すること、又は、それを妨げることには、注意が必要である。

2.もし、本件の申立人が成功したならば、本件においては異常な点がないので、損害担保約束を要求することが慣行となることが極めて高い確率で予想される。差押のコストは増加するであろうし、これにより、明らかに差押の価値のある事例においても、差押えの権利の利用を妨げ、またはそれを脅かすことになる。

3.現状の変更に抵抗するのは、単に、伝統ということだけではない。強制的な他の形式の担保との関連で、差押えの効用については、現実の疑いはない。また、同様に、比較的、差押えが必要なことは少ない。

4.船の差押は、資産に特化したものである。資産凍結命令と異なり、船の差押えは、船主の事業すべてを凍結する、又は、無力化するものではない(1隻のみ所有する会社の場合は除き)。

5.海事差押へ中間的差止命令(interlocutory injunction)の規定を類推することは、正確ではなく、また、強制的なものではない。

6.1883年以降、差押は、海事の管轄を定立するための要件ではない。海事差押について法と慣行を再考察する適切な機会はあったものの、何もなされていない。

7.海事業界において、船主と海事請求権者との間になされた利益衡量を変更するべきであるとの要求は、一切、又は、重要なそれが認められないことが、強く推察される。それを変更することについて、国際的な合意もない、また、1999年アレスト条約が、英国により、又は、世界的に広く、批准されていないことは、注目すべき点である(訳者注:アレスト条約では、一般に、差押債権者側に担保の提供を要求している。)。

8.海事業界や英国民事手続法に関する限り、PIクラブや船体保険者が慣例的に、差押を回避するために、又は、差押からの解放を確保するために、責任の引受を提供している。このシステムは、軽々に、妨げられるべきではない。

本判決は、また、船主が、資金的に不足していること(impecuniosity)を主張するためには、その直接的、又は、間接的な株主からの資金も含め、船主が得ることのできる資金について、広範な証拠を提出しなければならないことも、明示しています。

コメント

本QCRの2018年春号において指摘しましたとおり、Evangelismos号事件判決におけるルールの公正さについては、コメントにおいて、疑問を提示いたしました。Aleka Sheppard博士は、International Working Groupの議長として、2018年11月9日の万国海法会(Comité Maritime International)の会議において、違法差押に関し、適用される法律及びテストについて、国際的な調査を行いました。問題は、船の差押が申し立てられた際に、又は、その後、違法差押の可能性が出てきた際に、差押をなす者により、担保(counter-security)の提供が必要かどうか、という点です。11か国においては、差押申立者により担保の提供が必要とされています。他方、オーストラリア、カナダ、香港、ニュージーランド、英国、及び、米国を含む13か国では、それが必要ではありません。13か国では、裁判所に対し、担保を提供することを命じる裁量権が与えられています。

民事手続は、変更されるべき時期にありますが、商事法の分野においては、確実性がとても重要です。英国裁判所は、長く続いた、確定したルールと、変更への要望との間で、適切なバランスを図ることを求めており、この意味で、実務的な公正さを図るべく、市場の見解と、国際的な意見に対して、厳密な注意を払っています。本Alkyn号事件判決は、上記の実務について、良い実例となります。控訴院は、裁判所は、担保約束に関する立場を再考する前に、業界の意見の明確な理解をなすことが必要である、と述べています。

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