QCR Spring 2019-4: 何が海難救助仲裁における重大な不正となるか―上訴仲裁人は、上訴の根拠にもなく、上訴における弁論にもなかった仮定のシナリオに依拠して、裁決額を増額した

QCR Spring 2019-4: 何が海難救助仲裁における重大な不正となるか―上訴仲裁人は、上訴の根拠にもなく、上訴における弁論にもなかった仮定のシナリオに依拠して、裁決額を増額した

Navigator Spirit SA v Five Oceans Salvage SA (The “Flag Mette”)

事実

2016年12月、「Flag Mette」号(バルク船)は、貨物を積載した航海として、ギニアのKamsarからドイツのStadeまで、航行しました。12月20日、本船がBiscay湾にいる際、エンジンが自然に停止し、救助者であるFive Oceans Salvage社に対し、LOF書式により、救助を依頼しました。

12月26日、本船は、自力で航行することが可能となったため、LOF契約に基づく救助作業は終了しました。

救助者は、救助報酬を請求し、この件は、仲裁に付託されました。救助者は、①本船は、一時的に、自力航行が不可能となり、職業的な救助者の補助が必要となったこと、及び、②本船は、補助なしに海峡を通過しようとしていたら、衝突の危険があったこと、という2つの危険を主張しました。

仲裁人は、本船は、補助なしには海峡の通過を考えていなかったであろうから、衝突の危険があったというべきである、とする補助者の主張を否定し、救助者に対し、825,000米ドルと、通過変動分として合意された3.76%の追加のみを認める裁決を下しました。

救助者は、上記の裁決に対し上訴し、第1審仲裁人は、衝突の危険を誤って否定している、と主張しました。同仲裁人が、上記の救助者以外の補助がなかったことを適切に考慮すれば、本船は、危険ではあるものの、海峡の通過を検討せざるを得なかったと判断したはずである、と主張しました。

上訴審仲裁人は、第1審仲裁人は、救助者の補助がなければ何が起こったか、を問うことをしなかったことを認めました。しかしながら、本船は英国海峡を通過する以外に選択肢がなかったとする救助者の主張を否定しました。その代わりに、上訴審仲裁人は、次の別のシナリオを、両当事者代理人に示しました。すなわち、当局は、補助なしに本船が湾内に進入することを禁じていたこと、本船は、海岸線を離れ、航行分離方式(Traffic Separation Scheme(「TSS」))の沖合に進行し、援助を待つこと、又は、機関士が乗船し、タグを待つ間、修理が行われること、というシナリオです。

上訴審仲裁人は、上記の事情を考慮した場合、本船が曝されていた危険は、第1審仲裁人が認めたそれよりも、若干、大きいものである、と判示しました。よって、上訴審仲裁人は、上訴を認めました。

船主は、補助がない場合、本船は錨泊地に向かい、エンジニアを乗船させたであろう、と主張しました。船主は、上訴審仲裁人には、1996年仲裁法第68条に基づき、重大な不正(serious irregularity)が認められる、として、高等法院(High Court)(訳者注:ロンドンの第1審裁判所)に上訴しました。主張された重大な不正とは、上訴審仲裁人は、救助者の上訴の根拠の一部ではなく、また、一度も言及も、また、主張もされていないことを根拠として、救助者の上訴を認めた点です。船主は、上訴審仲裁人は、1996年仲裁法第33条に定める、公平に行為するという義務を順守しなかった、と主張しました。

判決

高等法院は、以下の理由に基づき、船主の上訴を棄却しました。

1.Terna Bahrain Holding Company WLL v Al Shamsi事件判決([2013] 1 Lloyd’s Rep 86)では、裁判所は、一方当事者がそれを取り扱う公平な機会が提供されなった論点を根拠として、仲裁廷が事案を決定した場合には、1996年仲裁法第33条の違反がある、と判断した。第33条は、どのようにして、仲裁人が論点を認識したか、という観点から、判断されるべきである。

2.上訴仲裁人は、両当事者の代理人に対し、仮定的なシナリオを提示した。すなわち、本船は、海岸線を離れ、TSSに接近し、又は、これを離れようとする船舶の沖合へ移動していたであろう、というものである。上訴仲裁人は、代理人らに対し、上記のような位置では衝突の危険があったことを、明示的に示してはいない。しかしながら、上訴仲裁人が、そのような危険に船主代理人が気づいていたかどうかを確認しなかったことは、上訴仲裁人が不公平に行為したことを意味しない。上訴仲裁人には、代理人がそのような危険に気づいていたかどうかを確認する義務はない。

3.さらに、不正の証拠が十分ではない。重大な不正を示す証拠が必要である。また、第68条による救済は、仲裁廷がその仲裁における行為を極めて不当に行ったために、公正の観点からすれば、裁定が修正されるべきものといえる時に初めて、承認されるべきである。

4.結論として、重大な不正があったとしても、実質的な不公正は生じていない。

コメント

Terna Bahrain Holding Company WLL v Al Shamsi事件を引用しながら、裁判所は、論点や相手方の主張に対処する機会を持たなかった当事者と、論点を認識せず、又は、存在していた機会を利用しなかった当事者との間を、区別しました。後者は、第33条の違反とはならないでしょう。

以下の高等法院のコメントは、注目に値するでしょう。それは、裁判所は、上訴を考慮するにおいて、海難救助仲裁廷の知識と経験に留意していることを示しているからです。「LOF契約に基づく海難救助仲裁に関しては、裁判所は、LOF契約に基づく仲裁に係る仲裁人らの知識と経験を考慮に入れる。第1審仲裁人、又は、上訴仲裁人として行為すべきものとして、ロイズにより選任された人物は、数十年の間、海難弁護士協会のメンバーであり、海難救助に関する経験を有している。そのような仲裁は、常に、一定の内部ルールを有してきた。LOFに基づく仲裁のそのような性格を考慮した場合、上訴仲裁人の行為が仲裁手続において合理的に予想されるものとかけ離れており、従って、公正の観点からみてそれは正されるべきであるということは、不可能である。」

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