QCR Summer 2019-2: 不法行為と契約の区別 ‐ 保険にかかわる事項の管轄に関する規定‐保険金受取人はその居住国以外の地で訴えられることがあるか?

QCR Summer 2019-2: 不法行為と契約の区別 ‐ 保険にかかわる事項の管轄に関する規定‐保険金受取人はその居住国以外の地で訴えられることがあるか?

Aspen Underwriting v Credit Europe Bank [2018] EWCA Civ 2590

事実

本件は、2013年、アデン湾において、「Atlantik Confidence」号が沈没した事件から生じました。船体保険者は、本船の消失について、船主との間でその請求を和解により解決しました。その和解契約には、英国の管轄が規定されていました。船主の銀行は、本船の抵当権者であり、同時に、保険契約の譲受人であり、全損金の受領者でもありました。銀行は、船主から、保険者が保険金をブローカーに支払うことを認める書面を提供することを求められ、銀行は、そのような権限授与書(Letter of Authority)を発行しました。和解契約書には、抵当権者の同意の下、保険金がブローカーに支払われるべきことが規定されていました。

その後、商事裁判所により、本船は、船主の分身(alter ego)と認められる者からの要請により、船主、及び、機関長により、故意に沈没させられたものと判示されました。船体保険者は、その後、船主、及び、銀行に支払われた保険金の返還を求めて、英国において、裁判手続を提起しました。その根拠は、当該損失は、1906年海事保険法第55条第2項(a)における船主の故意の非行(wilful misconduct)により、又は、失策に基づく原状回復(restitution)により、生じたもの、と主張されました。

船体保険者は、英国高等法院は、次の3つの理由により、管轄を持つ、と主張しました。

1) 銀行は、英国裁判所に排他的管轄権を認めた和解契約書に拘束されること。

2) 銀行は、排他的管轄権を規定する船体保険約款に拘束されること。

3) 銀行に対する請求は、英国において生じた不法行為、詐欺、準詐欺、及び、加害事由であること。

船体保険者は、さらに、船主は、(自らのために、又は、その主張によれば銀行の代理として)保険約款に基づく請求を提起するにあたり、以下の事項を明示的に、又は、黙示的に、表明した、と主張しました。

(1) 本船は、保険約款に基づき付保される危険を原因として、消失したこと。

(2) 本船の消失は、偶然によるものであること。

(3) 船主は、本船の消失の原因を説明できないこと。

(4) 船主と銀行は、本船の損害、又は、消失について、保険約款に基づき求償を行う権限を有すること。

(5) 船主は、故意の非行の責任を負わず、また、その故意の非行により本船の消失を試みていないこと。

銀行は、オランダに居所を有し、ブラッセル条約(Regulation (EU) 1215/2012)に基づき、英国の裁判所は、銀行に対する請求を審理する管轄権を有しない、と主張しました。ブラッセル条約第25条によれば、銀行が和解契約の当事者であれば、英国の裁判所が管轄権を有することとなります。

第1審においては、Teare裁判官は、銀行は、和解契約の当事者ではない、と判示しました。同裁判官は、銀行により発行された権限授与書は、保険約款に基づく請求を解決することを意図して、銀行が権限を認めたものではない、と認定しました。

検討された争点は、銀行が、譲受人、及び、賠償金受領者として、保険約款上の「受取人(beneficiary)」であるか否か、ブラッセル条約第14条第1項にもかかわらず、銀行は英国において訴訟を提起されうるのか否か、という点でした。同条項は、「保険者は、被告に対して、被告が保険証券の保持者であろうと、被保険者であろうと、又は、受取人であろうと否とに関わらず、被告が居所を有する条約加盟国においてのみ、訴訟手続を開始することができる。」と規定しています。

Teare裁判官は、英国の裁判所は、不法行為としての不実表示に関し、銀行に対して管轄権を有するが、保険者の原状回復の請求については、管轄権を有しない、と判示しました。銀行と保険者が、控訴しました。

判決

控訴院は、控訴を棄却し、銀行が和解契約の当事者ではないとする第1審の判決に同意しました。控訴院は、銀行は、たとえ契約の他の部分に引用されていたとしても、契約の当事者ではない、また、銀行は、その代理として、船主に対し、和解契約を締結する権限を授与したものではない、と指摘しました。

控訴院は、また、銀行は、保険約款中の英国に管轄を与える排他的管轄条項に拘束されない、と決定しました。保険金の受取人として、銀行は、仮に、(a)その業務の通常の結果として、保険に関連する請求の商業的な、又は、職業的な解決に関与しているか、(b)その事業が保険の専門家のそれと類似している場合、ブラッセル条約第14条第1項に依拠することができます。

控訴院は、本件において銀行は、「保険業界における専門家」に該当する、と判示しました。

さらに、控訴院は、銀行に対する保険者の請求の不法行為としての側面は、英国の裁判所において手続を行うことができる、と判示しました。しかしながら、保険者の銀行に対する原状回復の請求は、「不法行為に関連する事項」ではないので、英国の裁判所は管轄権を有しない、とされました。保険者の請求の中心は、本船が付保される危険により消失したのではないから、船主に対して賠償する責任を負わない、というものでした。

保険者の1967年不実表示法に基づく過失ある不実表示による損害賠償請求は、ブラッセル条約第7条第2項における、不法行為に関連する事項です。それは、和解契約がロンドンにおいて署名されたこと(また、保険者は、船主から、銀行の権限授与書を得なければ、和解契約を結ばなかったであろうこと)を根拠とされました。控訴院は、必要な結論として、和解金がブローカーのロンドンにおける銀行口座に支払われたのであるから、有害な事象が英国において発生したものである、と結論付けました。

コメント

控訴院の決定は、賠償金受領者、及び、保険譲受人が、保険約款における管轄条項に拘束される範囲について、重大な発展を示しています。本決定は、開示されない本人も、以下の条件が満たされれば、契約に基づき訴訟を提起し、又は、提起されうる、という点の権威として、後の判決に引用されています。(i)契約書面の文言が、明示された当事者のみにその適用を限定していないこと、(ii)契約の締結時において、代理人が、その本人のために契約を締結する意図を有していたこと、及び、(iii)契約を締結することが、その代理人の実際の権限の範囲内であること、です。

本判決は、また、国際訴訟の重要なポイント、すなわち、ブラッセル条約に基づき管轄権を判断する場合に、英国の裁判所が、どのような証拠に係る原則を採用するか、という点を明確にしました。本判決は、保険者が充足するべき証明の原則は、「適切に提起しうる主張(good arguable case)」であり、それは、「一応確からしい証明(prima facie case)」以上の何かを有し、また、蓋然性の考量のテスト(balance of probabilities test)を満たす主張よりも少ない何かを有するものであることを確認しました。

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