QCR Summer 2020 - 3: 海難調査局(Marine Accident Investigation Branch)の報告書は、ロンドン海事仲裁における非安全港の請求に関して、利用することができるか?

海難調査局(Marine Accident Investigation Branch)の報告書は、ロンドン海事仲裁における非安全港の請求に関して、利用することができるか?

Ocean Prefect Shipping Ltd対Dampskibsselskabet Norden AS事件(「Ocean Prefect」号)(QBD (Comm Ct) (Teare J))([2019] EWHC 3368 (Comm))(6 December 2019)

事実

2017年6月10日と11日、英国籍船である本船「Ocean Prefect」号は、UAEのUmm Al Quwain港に入港する際に、2回、座礁しました。船主は、ロンドンの海事仲裁において、傭船者を相手取り、非安全港の請求をおこないました。運輸省(Department of Transport)内の独立した調査機関である海難調査局(MAIB)は、航行の安全を促進するためにどのような教訓をえることができるか、という観点から、座礁の状況を調査しました。

両当事者のエキスパートは、その各々の報告書の中で、MAIBの報告書を引用し、船主は、仲裁の中にその報告書を引用しようとしました。傭船者とMAIBは、2012年商船(事故調査・報告)規則(Merchant Shipping (Accident Reporting and Investigation) Regulations 2012)第14条第14項によれば、MAIB報告書は、裁判所の承認があって初めて、仲裁において利用することができる、と主張し、本件ではこれを否定しました。

従って、船主は、英国裁判所に対し、その報告書を仲裁で利用することの承認を申立てました。もっとも、船主は、規則第14条第14項において「仲裁廷(tribunal)」との文言が欠けているのは、仲裁手続が規則第14条第14項に服さないことを意味し、従って、裁判所の承認は不要である、と主張しました。

規則第14条第14項は、以下のとおり、規定しています。

「本項が適用される書類、又は、その中の分析の一部が、法第259条、及び、第267条第8項に基づく調査員の権限に基づき取得されたものである場合、それは、裁判所が、規則第13条第5項(b)又は(c)に規定された要素を考慮して、別異の判断を行わない限り、責任、又は、非難を認定し、又は、配分する目的の司法手続(judicial proceedings)においては、利用できない。」

判決

裁判所は、仲裁手続は、規則第14条第14項における司法手続であり、その目的は、非難と責任を認定することである、と結論づけました。仲裁廷は、当事者間で公平かつ中立な仲裁手続を行う義務を負い、各当事者に、その主張を提起し、また、相手方の主張に対応する合理的な機会を付与しなければならない、とされました。そのような義務は、司法手続に特有のものです。従って、MAIBの報告書を利用するためには、裁判所の承認が必要となります。

規則は、裁判所が、報告を承認する決定をなすにあたって考慮すべき要素を規定しています。裁判所は、主任調査員の見解を考慮して、司法上の利益が、以下の事項を阻害しうる危険性に勝るものか否か、を検討しなければなりません。 

  • 現行の事故調査
  • MAIBによる調査の将来における安全性
  • 英国と他の国家ないし機関との関係

裁判所は、仲裁手続が私的なものであっても、報告書の利用を許すか否かは公的な問題であり、また、報告書が利用されることにより、将来のMAIBによる事故調査が阻害される可能性がある、と判断しました。なぜならば、MAIBとの会話が秘密事項ではないことを知る証人は、海難事故において、証言を求められた場合に、それに消極的になるであろうといえるからです。

裁判所は、報告書の利用を否定することは、船主に仲裁において不利益を与えることになるかもしれないものの、本件での司法手続における利益は、将来の事故調査を阻害する可能性や、英国の他の国家や機関との関係を阻害する可能性に勝るものではない、と判断しました。海上の安全という利益の方が、当事者の商業上の利益に勝るものです。ともかくも、報告書に触れることなく、船主が証人に反対尋問を行うことが可能ですし、また、両当事者は、各々の専門家から支援を受けることも可能です。証人尋問において、反対尋問がなされることを前提に、MAIBに対していかなる証拠を提出したかを説明することにおいても制限はなく、また、希望すれば、MAIBに提出した陳述書の写しを仲裁に提出することもできます。 

従って、裁判所は、MAIBの報告書は、非安全港に関する仲裁において使用されるべきではない、と決定しました。

コメント

本件は、英国高等法院が、私的な、かつ、秘密の仲裁手続において、MAIBの報告書を使用できるか否かについて初めて、判定することを求められたケースです。しかしながら、裁判所の決定は、驚くべきものではありませんでした。MAIBとその調査員から質問を受ける事故の証人との関係は、高度の信頼関係に依存するものです。もし、この信頼関係が侵害されると、MAIBがその機能を完全に果たすための能力に大きく影響します。従って、裁判官は、海上の安全を促進するために、MAIBの報告書の目的の方を適切に優先させたものといえます。

しかしながら、興味深いことに、海事裁判所は、以前のKeynvor Morlift Ltd対The Vessel “Kuzma Minin”事件([2019] EWHC 3557 (Admlty))事件における判決において、その裁量権を行使し、MAIBの報告書の使用を認めています。もっとも、その件では、報告書は、広い意味での事実認定において用いられ、避難や責任の認定や配分のためには、用いられませんでした。

以上

Emergency Contacts


If you need to call our offices out of hours and at weekends, click After Office hours for a up to date list of the names of the Duty Executives and their mobile phone numbers. 

Ship Finder


This Ship Finder is updated on a daily basis. Members who need to advise the Club of updates to their recorded ships' details should advise their usual underwriting contact.

You are currently offline. Some pages or content may fail to load.