QCR Winter 2018-6: 過度の速度―発生した衝突自体、及び、その損害の酷さに寄与しうる主たる事例

QCR Winter 2018-6: 過度の速度―発生した衝突自体、及び、その損害の酷さに寄与しうる主たる事例

NAUTICAL CHALLENGE LTD v EVERGREEN MARINE (UK) LTD (THE "ALEXANDRA 1" AND "EVER SMART") [2018] EWCA Civ 2173

事実

本判決は、当クラブがQCRの2017年夏号においてご紹介した高等法院(注:第1審裁判所)の判決に対する控訴に関するものです。

事実を要約すると、2015年2月11日、Jebel Ali港へ船が進入し、また、そこから出るための浚渫された海峡の入口と出口である、パイロットの乗船する区域

において、船積みされた状態のVLCCである「Alexandra 1」号と、船積みされた状態のコンテナ船である「Ever Smart」号との間で、衝突が発生しました。Alexandra 1号は、パイロットの乗船を待っており、その時、Ever Smart号は、Alexandra 1号が乗船を待つそのパイロットが下船した後、狭い海峡を出ようとしていました。衝突は、夜間に、しかしながら、天候が良好の、視界の良い時点で、発生しました。衝突の際、Ever Smart号は、速度が12.4ノットで、Alexandra 1号は、速度が2.4ノットでした。両船の損害は甚大でした。

第1審において、裁判官は、一方の船が狭い海峡に沿って航行し、他方の船がその海峡に向かって、そこへの進入を意図して航行していた場合には、横切航法のルール(crossing rule)は適用が意図されていない、と判示しました。従って、Alexandra 1号が浚渫された海峡に接近していた場合には、Ever Smart号の進路を回避すべき義務を負わない、とされました。従って、Alexandra 1号の義務は、海峡に到達した場合、衝突規則(Collision Regulation)第9条(狭い海峡でのルール)に従い、海峡の右舷側に寄って航行することでした。ともかくも、Alexandra 1号は、横切航法が適用されるため十分に確定されたコースにいなかったもの、とされました。責任割合については、一部、Ever Smart号の過度の速度に基づき、裁判官の見解によれば、それが損害の多くの原因であるとされ、Ever Smart号に80%、Alexandra 1号に20%、各々、責任があるもの、とされました。

Ever Smart号は、控訴院に控訴し、以下の点で、第1審裁判官は誤っている、と主張しました。すなわち、(1) 横切航法のルールを適用しなかったこと、(2)横切航法のルールが適用されるためには、避航船は、十分に継続的なコースを取っていなければならないという、誤った要件を貸したこと、及び、(3)原因たる各船の過失を決定する際に、各々の船が被った損害の程度を考慮に入れたこと、という点です。

判決

控訴院は、以下の理由に基づき、控訴を棄却しました。

1.第1審裁判官は、横切航法のルールが本件で適用されないと結論づけた点において、過ちはない、とされました。各船のいずれも、十分に確定されたコースを取っていなかった、とされました。Alexandra 1号は、Ever Smart号が狭い海峡に沿って航行している際、パイロットを待っていたのであって、一定の航路を取っていたのではない、とされました。それにより、両船は横切ることなったが、横切航法のルールが適用されるためには、避航船を含む両船は、十分に確定されたコースを取っている必要がある、とされました。状況の評価においては、避航船のみに限定されるものではなく、保持船も、自己の状況を評価すべき位置にあることが必要であり、保持船も、衝突規則第17条(a)(ii)及び(b)に基づく行動をとることが求められる場合もありうる、とされました。総合的にみれば衝突の危険があった、という事実だけでは、横切航法のルールは、決定的なものではない、とされました。

2.Alexandra 1号がパイロットが乗船すべき区域で待っていたという事実によっても、それが航行能力に制限があることにはならない、とされました。

3.第1審裁判官が、Ever Smart号の過度な速度の持つ意義を、衝突それ自体の原因についてだけではなく、結果としての損害の程度に寄与するものと考えた点に、誤りはない、とされました。裁判官は、責任割合を決するにあたり、衝突による損害の酷さに対する各々の船の過失の持つ影響を検討することを妨げられない、とされました。控訴院の見解によれば、衝突のケースでの損害に対する責任は、1995年商船法(Merchant Shipping Act)第187条に基づき、各々の船の過失の程度に鑑みて、決定されなければならない、とされました。落ち度(culpability)と、証明された、過失の持つ結果を生ぜしめる可能性(causative potency)の双方が、過失割合の決定に関連する、とされました。結果を生ぜしめる可能性は、2つの側面を持ち、その1つは、発生した衝突にどの程度、過失が寄与したか、という側面と、2つ目は、衝突から生じた損害、又は、損失に対して、過失がどの程度、寄与したか、という側面である、とされました。過度な速度とは、発生した損害、又は、損失に寄与しうる過失の、主たる事例(example)である、とされました。

裁判官は、過失割合の決定に際して、損害を増加させるという、過度な速度の持つ性質を、広範に、検討する権限を有しています。衝突が発生したという事実、及び、その酷さの双方を考慮することは、同一の過失を2つの異なった(また、累積的な)側面の、独立した検討を行うことになります。

コメント

控訴院は、その判決において、狭い海峡への進入、及び、離脱が、パイロットの乗船すべき区域であったこと、及び、関連する時間全てにおいて、Alexandra 1号がそのような区域で操船されていたこと、という事実に限定して、判断がなされるべきことを明確にしました。同裁判所は、また、横切航法のルールと狭い海峡のルールにより、船舶が同時に、異なる行動を取ることを求める可能性を示しました。海峡に接近する船舶や、海峡内にある船舶は、衝突規則第9条が海峡の入口において適用されるためには、混乱と不明確さを避けるべく、一定の継続性がなければならないことを認識しなければなりません。横切航法のルールは、2つの狭い海峡の交差点を航行する船舶について、また、一方の船が狭い海峡を横切っており、他方の船が海峡を航行している状況においても、適用されるかもしれません。

控訴院は、「2つ、又は、それ以上の船舶の過失により、1つ、又は、それ以上の船舶、又は、その貨物や運賃、又は、その船上の財産に対して、損害、又は、損失が生じた場合、その損害、又は、損失を賠償する責任は、各船舶が過失を有していたその程度に比例して、案分される。」とする1995年商船法第187条、及び、「過失の程度、及び、それによる責任の案分においては、衝突、及び、損害に寄与する要素として、行為の避難可能性、又は、その落ち度、及び、その結果を生ぜしめる可能性の双方を考慮しなければならないことは、今や、確立されたものである。」とする民事手続(Civil Procedure)法(2018年第2巻2D-230)の簡単な解釈に、言及しました。

衝突それ自身だけでなく、請求する損害の程度に原因として寄与するものとして、Ever Smart号の過度の速度の持つ意義については、広範な原則が定立されました。さらにいえば、特定の過失が結果に寄与したか、しなかったかを検討する際、裁判所は、過失が衝突自体に寄与したかという点だけでなく、結果として生じた損害に寄与したかという点をも検討することが明らかになりました。

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