QLU Spring 2017 May-4:本事案及び次の事案は、補償状による貨物の引渡しに係るリスクをメンバーに喚起させる事案です。

Oldendorff GmbH & Co KG v Sea Powerful II Special Maritime Enterprises (Zagora号事件)  [2016] EWHC 3212

事実:

SCIT Trading社は、Xiamen C&D Minerals社に対して、鉄鉱石を、CFR約款に基づき、売却しました。Ximenは、その貨物をその関連会社に売り、さらに関連会社は、Shanxi Haixin International Iron and Steel社(Shanxi)に売却しました。従いまして、SCIT(売主)→Xiamen→Shanxi(買主)と、売買契約のチェーンがあったことになります。バック・トウ・バックの売買契約中には、荷揚港における代理人は、買主により、選任されるべきことが規定され、最終的には、Shanxiにより、選任されるべきものとされていました。

売主として、SCITは、CFRによる売買契約の下、運送を手配する責任がありました。SCITは、Oldendorff Carriers社(Oldendorff)との間で、鉄鉱石のオーストラリアから中国までの運送について、航海傭船契約を締結しました。Zagora号は、その船主との定期傭船契約に基づき、Oldendorffにより運航されていました。従って、船主→Oldendorff→SCITとの傭船契約のチェーンが存在していたことになります。

傭船契約は、(i)荷揚港における代理人は「傭船者の代理人」であること、(ii)傭船者は、代理人を選任し、その費用を支払うこと、(iii)船長は、船の使用と代理に関し、傭船者の命令と指示に従うこと、及び、(iv)船荷証券の原本が入手できない場合には、船主は、保証状(LOI)により、貨物を荷揚し、引渡すこと、が規定されていました。

Shanxiは、Lanshanを荷揚港とし、代理人をSea-Road Shipping Agency社(Sea-Road)とする旨、表明しました。この表明は、契約のチェーンに従い、伝達されていきました。

Oldendorffは、Sea-Roadに対して、本船の寄港中に本船に赴くよう、指示しました。Oldendorffの求めにより、船主は、船荷証券の提示なしに貨物を引渡すためのLOIのドラフトを提供しました。そのドラフトは、契約のチェーンに従い、SCITからXiamen、Shanxiへと伝わりました。Xiamenは、LOIのドラフトをShanxiへ渡す際、Sea-Roadが、貨物の引渡しを受ける者であると明示ました。Xiamenは、SCITに対してLOIを提供する際には、自己が、貨物の引渡しを受ける者である、と示しました。バック・トウ・バックの同様の書式によるLOIが、Oldendorffにより船主に対して、作成されました。

LOIの効果として、貨物は、Sea-Roadに引渡され、引渡の完了次第、本船は、出港しました。

その後、本船は、Lanshanに戻りました。そこで、本船は、バンク・オブ・チャイナにより、差押えられました。左の銀行は、船荷証券の所持人であるものの、貨物が、船荷証券の原本の呈示なしに引渡されたことを主張しました。船主は、LOIの約定に基づき、Oldendorffから求償を求めました。同様の請求がOldendorffからSCIT、Xiamen、Shanxiへと移転されました。

SCITは、自社はOldendorffに求償する責任はない、と主張しました。SCITは、(i) Sea-Roadへの貨物の引渡は、Xiamenへの引渡とはならないこと、及び、(ii) Sea-Roadは、船主、又は、Oldendorffの代理人として行為していたことを理由に、Sea-Roadへの貨物の引渡は、LOIと関係がないことを主張しました。Xiamenも、同様に、Sea-Roadを貨物の受取のための代理人に任命していないし、SCIT TradingやSCIT Servicesに対して、Sea-Roadに貨物を引渡すよう指示したこともない、として、LOIに基づく責任を否定しました。

商業裁判所は、その結論に至る過程において、荷揚、又は、引渡の概念について検討し、「荷揚とは、貨物が「本船のレールを超えて」陸上へと動くことをいう。引渡とは、陸上にいる者に対して貨物の占有を移転することをいう。荷揚と引渡は、同時に起こる場合もあるが、そうである必要もない。貨物が、陸上の倉庫に対して荷揚され、後日にのみ、引渡される場合もある。引渡は、貨物をその占有下に有する船主により、実行される。」と判示しました(Bremen Max号事件判決([2009] 1 Lloyd’s Rep. 81)、)、参照。)。

判決:

商業裁判所は、次のように判示しました。

  1. Xiamenは、LOIをShanxiに渡した際、Sea-Roadが、船荷証券の原本なしに貨物が引渡されるべき相手であることを明示していた。また、Xiamenは、SCITに対してLOIを提供する際には、自らが、貨物が引渡されるべき者であることを明示していた。
  2. Xiamenは、自己のために、Sea-Roadが貨物の引渡を受けることを意図していた。
  3. 船主(又はOldendorff)は、Sea-Roadに対して自己の代理人として貨物を荷揚げする利益はないから、Sea-Roadが船主(又はOldendorff)のために行動していたとは考えにくい。
  4. Xiamenがなぜ、自己への貨物の引渡を必要とするLOIをSCITに提供したかについては、説明がない。
  5. 従って、貨物は、Sea-Roadによる代理を通じて、Xiamenに対して引渡されたものである。船主は、Oldendorffが発行したLOIに基づき、Oldendorffから求償を請求することができ、また、Oldendorffも、SCITから求償を請求することができ、その後も、売買契約のチェーンに基づき、求償を請求することができる。

コメント:

本件は、商業上の契約において、LOIのチェーンが求められた場合に困難な問題が生じうることを表しています。LOIが一定の状況においては有効であることを船主に確保することとはなりますが、船主は、LOIを実行するために、商業裁判所における費用を支払わなければなりません。メンバー各位におかれましては、LOIと引き換えに貨物を引渡すことは、商業上の決断ですが、PIカバーが否定されるリスクがあることに、ご留意ください。ルール第2条第17項但書c(ii)(iii)、ご参照。

メンバーにおかれては、LOIによる貨物の引渡しを合意する前に、貨物の所有権に関する紛争に巻き込まれないためにも、念のため船荷証券の原本がどこにあるかを確認することが望まれます。 それは船荷証券の原本との引換えで貨物を引き渡した場合と違い、LOIによる貨物の引渡しは、船主の貨物引渡しミスの責任を軽減することにはならないからです。

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