QLU Summer 2018-4:控訴院は、本船が推定全損であるか否かを確認する際に、SCOPIC費用を含むことができると判示しました。

QLU Summer 2018-4:控訴院は、本船が推定全損であるか否かを確認する際に、SCOPIC費用を含むことができると判示しました。

Sveriges Angfartygs Assurans Forening (The Swedish Club) v. Connect Shipping Inc (MV Renos) [2018] EWCA Civ 230

事実

Renos号は、貨物を積載して、エジプトの沿岸を航行中、2012年8月23日、そのエンジンルームから火災が発生しました。船主は、LOF(ロイズ・オープン・フォーム)書式により、救助者を選任し、救助者は、SCOPIC(Special Compensation P&I Club)条項(特約条項)を求めました。船主、及び、その船体保険者の双方により、修理費用の算定のため、サーベイヤーが選任されました。9月3日までに船主に提示された暫定的な算定によれば、本船は推定全損(Constructive Total Loss。「CTL」)になりうることが示唆されていました。船主は、造船所から見積もりを得るため、詳細な修理明細書の作成を始めました。それはまた、保険者にも送付されました。保険者のサーベイヤーは、本船がCTLであることを示唆しない修理費の算定を作成しました。12月の末までに、多くの異なる見積もりが複数の造船所から送付され、そのいくつかは、本船がCTLである可能性の高いことを示唆し、他は、本船はCTLではないことを示唆していました。船主は、問題を解決することができなくなり、2013年2月1日、保険者に対し、所有権放棄の通知(notice of abandonment、「NOA」)を送付しました。保険者は、「遅すぎる」として、NOAを拒否しました。
主たる争点は次のとおりです。

  1. 船主は、2013年2月1日までに、NOAを発行する権利を失ったか?
  2. NOAが有効だとすると、NOAの日より前に発生した費用(救助者に支払われるべき救助費用やSCOPIC報酬を含む。)は、CTLの計算の中に含まれるか?

第1審の裁判官は、上記の争点について、船主側に有利な判断を行いましたので、保険者が控訴しました。控訴は棄却されました。

判決

  1. 第1審では、裁判官は、まず、1906年海上保険法の第62条(3)に規定された、NOAは、「損失に関する信頼できる情報を得たのち、合理的な注意をもって、送付されなければならない。しかしながら、情報が疑念のある性質のものであった場合には、被保険者は、調査をなすに合理的な時間が与えられる。」との条項を検討しました。保険者は、上記の条項によれば、船主は、損失に関する信頼しうる情報を得て、調査のための合理的時間を経たのち、合理的な期間内に送付しなければならないが、本件で船主はこれを怠った、と主張しました。
    裁判官は、本件は、修理費用に関し、矛盾する助言がなされるような、複雑で困難な事故であったことに基づけば、NOAは、1906年海上保険法にいう期間内に送付されたものといえる、と判断しました。船主には、調査をなす合理的な時間が付与されます。
    控訴院は、上記の裁判官の結論を支持し、「信頼しうる情報に関する保険者の主張の重要な側面は、船主に対して、保険者が正確であると強調する、当該時点のその専門家による修理の範囲に関する評価を無視するか、拒否することを要求する点である。」そして、「保険者は、保険者は、当該時点において、修理の明細や、見積もりを作成するために、詳細な調査を自ら、行うことを選択し、それに依拠して、本船がCTLではないことを証明しようとした。保険者は、そのような情報を船主と共有し、その正確さを強調したのであるから、損失に関する信頼しうる情報が存在したか否かを判断するためにそれを考慮に入れたとしても、非難することは難しいであろう。」と説示しました。
  2. 第2の争点について、保険者は、第60条(2)(ii)の修理費用は、本船を修理された状態に回復するための費用、例えば、救助費用は、含まれることを承認しました。しかしながら、NOAの後の回復、又は、修理の費用のみが、本船がCTLであるか否かに関して用いられる、と主張しました。1906年海上保険法の第60条(2)(ii)は、「将来の」救助作業、及び、将来の共同海損に関して生じた費用を考慮する、と規定しています。
    第1審も控訴院も共に、保険者の主張を否定しました。控訴院は、次のとおり、判示しました。被保険者は、事実により放棄が正当化されるか否かの判断を形成するための支援が与えられるべきであるから、通知をなす前に費用が生じたことで非難されるべきではない。放棄をなすか否かを決定する際には、被保険者は、既に発生した費用のみならず、修理費用の全体を考慮することが許されるべきである。第60条(2)(ii)にいう「将来の」の文言は、排斥のためではなく、包含のための文言であり、将来の費用も、既に生じた費用と同様に考慮されるべきことを明確にするためのもの、と理解することが最良の解釈である。

控訴院は、この結論を支持するものとして、Arnouldの論述、米国での見解、及び、1982年に清算人協会の議長として行われたDonaldson卿のコメントを引用しました。
保険者はまた、SCOPICに基づく責任は、事故の環境への影響を最小限にすることを救助者に推奨するために、PI保険者により支払われるべき追加的な賠償であるから、PI保険者を利するものである。船体保険者によっては支払われないものであり、「修理費用」として適切に理解できないものである、と主張しました。さらに、SCOPIC条項第15パラグラフは、船主は、(直接、間接、補償や請求その他のいかなる方法によっても)船体保険者に対して請求することを禁じています。保険者は、船体保険約款によっては求償されえない費用をCTLの計算の一部とすることを許容することは適切ではない、と主張しました。
第1審の裁判官は、上記の主張に同意せずに、SCOPIC条項第15パラグラフにかかわらず、SCOPIC条項に基づく費用はCTLの計算において考慮しうる、と判示しました。控訴院は、第1審の決定を支持し、SCOPIC条項に基づく報酬は、保険者が修理費用の一部として承認した、独立の項目であり、海難救助仲裁の合理的な法的費用である、と判示しました。
救助作業の費用は、第13条に基づく救助費としての120万米ドルと、救助費に追加して支払われた、SCOPIC条項に基づく報酬としての140万米ドルでした。保険者は、SCOPIC報酬は、PI保険者により支払われる第13条の費用とは概念上、異なるので、それは、1906年海上保険法の第60条(2)(ii)や、協会保険約款の第19.2条及び第9.2条の費用ではない、と主張しました。SCOPICは、船体保険約款に基づけば支払われないので、その約款に基づく修理費用としては、CTLの目的のためには採用されるべきではない、と主張されました。裁判所は、本船を回復させ(また、船主を、修理するのか、CTLを宣言するかの立場に置く)ためには、船主は、救助報酬の全体を支払わねばならない点において、上記の保険者の結論に困難な点を見出しました。SCOPICは、本船を回復させるための救助作業の不可避の一部(又は拡張)です。従いまして、控訴院は、SCOPICは、修理費用の独自の一部であるとして、第1審判決を承認しました。

コメント

本判決は、CTLの主張について、以下の2点を明確にしました。

  • NOAの発行の前の海難救助費用、及び、共同海損費用は、CTLの計算に含まれる。
  • 救助者に支払われるSCOPIC費用は、保険者が修理費用であると承認する、必要な救助作業のものである。

本判決は、上記の不明確さを明らかにしたものの、船体保険者にとって、SCOPIC条項付きのLOF書式を用いることは、CTLの請求がなされる可能性を増加させるという懸念を引き起こしました。従いまして、船体保険者が、NOA前の費用やSCOPIC費用をCTLの計算から除外することを明示するよう、マーケットの標準文言を改正することに向けて運動することは、予想できないことではありません。

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