ICAアップデート:英国裁判所における最近の判例

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ここで表現された意見と意見は、元の著者または投稿者のものです。これらの見解や意見は、必ずしもUK P&Iクラブのものではありません。

背景

ICA、つまりインタークラブ・ニューヨーク・プロデュース・エクスチェンジ・アグリーメントは、貨物クレームの責任を分担をするためP&I国際グループが承認した協約です。
これは船主と用船者の間で、費用のかかる、広範囲な訴訟を起こすことなく、クレームで発生した責任を双方で迅速に分担するためのメカニズムです。

ICAは1970年に初めて発表され、その後1984年、1996年、2011年に改訂されました。NYPE及びAsbatime用船契約書式への摂取を前提に作成されていますが、理論的にはどの用船契約にも摂取させることができます。

ICAがあるために、紛争があまり法廷訴訟となることはありませんが、2017年、2018年には、英国法廷で次のような判決がありました。

最近の展開

ばら積み船たるYangzte Xing Hau号の事件では、本船は、南アメリカからイランへ大豆を運送しました。イランの荷揚港に到着後、用船者は本船を4ヶ月待機させるよう指示しました。この貨物は自己発熱性の特性があるため、遅延には耐えられません。
船主は貨物クレームが発生したため、ICAの下で用船者に対し賠償請求を起こしました。本件クレームは、キャッチ・オール条項(注:包括的な適用を意図して規定される条項のこと。)としての第8条(d)に該当し、50/50の負担割合とすることとし、ただし、クレームが当事者の一方(その使用人や下請け業者を含む)の行為や怠慢より発生したことについて明白で反論できない証拠がある場合には、責任ある側が100%負担するという、ICA条項を主張しました。

船主は、用船者が大豆の積載と同時に4ヶ月間待機するという指示をした行為は、ICAの下で、用船者に100%の責任があると主張しました。用船者は、「行為(act)」は「過失ある行為(culpable act」を意味すると主張し、「行為または怠慢(act or neglect」とは、「過失(fault)」を意味する、と主張しました。

第一審においてTeare J.判事は用船者と意見を異にし、仲裁(LMAA)による裁定を支持しました。その後の控訴裁判所の判決は、第一審判決を支持し、「行為」という言葉は自然な意味が付与されるべきであり、「過失ある行為(culpable act)」を意味するものではない、としました。

Agile Holdings v Essar Shippingの判決では、本船は、チュニジアからインドの西海岸への用船(トリップチャーター)で、直接還元鉄(DRI)貨物を運送しました。荷積み中、コンベアベルトに火災が発生しましたが、スーパーカーゴは、ホールドを点検し、荷積みを継続するよう指示しました。荷揚港までの航海で貨物が燃焼し、熱による損害が生じました。

仲裁廷は、ICA第8条(b)が本件に関連する条項であり、「および責任」(and responsibility)という文言がNYPE第8条に追加されておらず、あるいは同様の修正が第8条に追記されずに、「ステベドアは、用船者・荷送人・荷受人あるいはその代理人により雇用され支払われている場合でも、適切な積込みと船舶の堪航性・安全性について責任を負う船長の指示に従う」という追加条項が加えらているに過ぎない場合には、貨物の積込み、積付け、固縛、荷揚げ等から生じたクレームは用船者に100%の責任がある、としました。

用船者は、ICAの目的に沿った「同様の修正」はあったとの抗弁を試みました。仲裁廷は、これには同意したものの、裁判所は、責任は一部についてのみが移転された(積付けについてだけであり、積込みは移転されていない。)のであるから、ICA第8条(b)の求める責任の移転には十分ではない、と判示しました。

これらの判決は、これまでのICAに関する判例から根本的に逸脱するものではなく、むしろ、裁判所は、ICAの文言を自然な意味で捉え、ICAの論理的根拠を明確にし、より機械的でシンプルなアプローチをする可能性が高いものであることを示唆しています。

リンク

Inter-Club Agreement (as amended 1 September 2011)

Transgrain Shipping v Yangtze Navigation [2017] EWCA Civ 2107("Yangzte Xing Hau")

Agile Holdings v Essar Shipping [2018] EWHC 1055 (Comm)

Amanda Hastings

Claims Executive

Date2018/09/06