08/13 - 2006年海事労働条約(MLC)の発効

Trulli

アウトライン

  • 海上労働条約(MLC2006)は、2013年8月20日に発効いたします。
  • 本回覧は、船主に求められる船員の送還、死亡又は長期障害に関する金銭的保証について説明しています。
  • 国際グループは、すべての条約締約国がMLC2006に基づく船員クレームに対する金銭的保証の証明として、クラブの加入証書を受理するかどうか確認しています。
  • 当クラブのMLC2006専門ページにて、情報を確認していただくことをお勧めします。

組合員各位

2006年海上労働条約(MLC)の発効 

背景

国際労働機関(ILO)は2006年2月23日に2006年海上労働条約(MLC2006)を採択しました。

(http://www.ilo.org/global/standards/maritime-labour-convention/WCMS_090250/lang--en/index.htm)

2012年8月20日に30か国目が批准したことにより、本条約は2013年8月20日をもって発効することになりました。2013年2月27日時点では、すでに35か国が批准しています。条約締約国一覧は、下記ウェブサイトで公開しています。

http://www.ilo.org/dyn/normlex/en/f?p=1000:11300:0::NO::P11300_INSTRUMENT_ID:312331

本条約は、船員の労働に関する包括的な権利と保護を規定しており、労働時間や、健康・安全、居住設備、福利や雇用契約など広範囲な事柄にわたる船上での労働環境について、最低基準を定めることを目的としています。本条約における新しい労働基準は、過去80年間に採択された海事関係の68以上の国際労働基準を統合、改訂したものです。

本条約は、船主が条約締約国である旗国に、海上労働遵守措置認定書(DMLC:a Declaration of Maritime Labour Compliance) を提出することを求めています。旗国はこれを受領後、海上労働証書(MLC Certificate)を、自国籍の船舶に発行します。この証書は、船員がわかるように船内の目立つ場所に据え置かなければなりません。

船員の送還及び死亡又は長期障害に関する金銭的保証

本条約は、締約国に対し、自国の船舶の船員(註1)が以下の権利を確保する事を義務付けています。

(a) 船主の支払不能(事実上の会社破綻)によるものを含む送還、及びこれに対する金銭的保証を手配すること

(b) 国内法、船員の雇用契約又は団体交渉協約に規定する職務上の負傷、疾病又は障害に起因する船員の死亡又は長期障害の場合における補償、及びそのための金銭上の保証を手配すること。

条約加盟国を旗国とする船舶は、上記(a)及び(b)を確実に遵守するための金銭的保証が手配されていることの証明が必要となります。 

本条約は、船員は船舶の滅失又は沈没による失業の場合でも、失業する日数に応じた失業補償を受ける権利を有すると規定しています。しかし、これに対する金銭的保証は求められておりません。船員に支払うべき補償金の総額は、賃金の2か月分を超えることはありません。

傷病による送還費用や上記(b)のクレームは、船主が支払不能となった場合の送還費用を除いて、基本的に従来のP&I保険の標準的てん補対象となっています。船主がこれら金銭的保証の要求事項を遵守できるように、国際グループに加盟する全13クラブは、船主が支払不能の場合及びその他本条約に規定の状況(本条約の規範(Guideline) B2.5.1)の下で船員の権利である送還の費用をカバーするため標準P&I保険てん補の範囲拡大について合意しました。

クラブのてん補範囲の変更は、本条約が発効する2013年8月20日までに実施されます。

金銭的保証の証明

本条約は「金銭的保証」の定義を規定していません。

本条約では、1992年CLC条約や2001 年バンカー条約で求めている「ブルーカード」を規定していませんし、金銭的保証の提供者に対する直接請求権も規定していません。しかし、各国が本条約を実施するための国内法で、金銭的保証の形式を定められるため、上記(a)及び(b)のクレームに対する金銭的保証要件を満たすための証書(例えば、十分な保険契約がなされている証明)を要求することもあり得ます。

国際グループは、メンバーの船員に関するリスク付保を前提に、本条約の金銭的保証規定を遵守していることの証明として、国際グループ・クラブが2013保険年度の保険更改で発行した加入証明書を受理するかどうかを条約加盟国に確認しています。

これまで確認した国々は、国際グループが発行した加入証書で、メンバーの船員リスクが付保されている場合には、本条約を遵守している充分な証明となることを表明しています。

国際グループは、引続き本条約の加盟国と連絡をとり、条約発効が間近となりましたら、さらに情報をお届けします。

国際グループのすべてのクラブは、同様の回覧を発行しています。

註1 条約上の「船員」の定義は非常に広範囲で、「能力のいかんを問わず、本条約が適用される船舶において雇用され、もしくは従事し、又は労働する者」と規定されています。

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Staff Author

PI Club

Date2013/03/07