QLU Spring 2018 May-6:クルーズ船のHop on Hop off サービスにかかわるキャリアの責任

Lawrence v NCL (Bahamas) Ltd (The "Norwegian Jade") [2017] EWCA Civ 2222事実

原告は、被告であるNCLが所有し運航していたクルーズライナー"Norwegian Jade"に乗船した旅客でした。原告は、フライトアンドパッケージズ社を通して乗船ツアーを予約しました。ツアーには、帰国便、ヴェネツィアでの3泊の宿泊とヴェネツィア発着のクルーズ乗船が含まれていました。 サントリーニ島への寄港時には、陸地のショートトリップを予約しました。島には着桟施設がなかったので、本船は沖に停泊し、乗客は下船して地元企業が運営するテンダーボートに乗り換えました。被告は、そのテンダーボートの船上で転倒し、負傷しました。

原告は、1974年の旅客及びその手荷物の海上運送に関するアテネ条約の2002年議定書による修正版(以下「

アテネ条約

」という。)の下で、NCLに対して人身損害に基づく賠償請求を提起しました。

NCLは、(1)書類上、原告とNCLとの間で契約上の関係が示されていないこと、 (2)NCLは乗客のサントリーニ島での下船を許す目的でテンダーボートを提供していないため、条約第1.8条は適用されないこと、(3)本件事故は、NCL、または、委託された範囲内で行為する従業員または代理人による過失によって発生したものではないこと、を主張しました。

第1審では、(1)被告はアテネ条約に基づく契約運送人であった、 (2)事故は運送(carriage)中において発生し、また、被告は、テンダーボートを提供するために手配した、「実行運送人」としての独立した企業の作為または不作為について責任を負う、 (3)テンダーボートのステップは、船舶に必要かつ不可欠であるが、潜在的に危険であり、ハザードテープで印を付けること以上の措置が必要があった、と判示しました。

被告は控訴院に上訴しましたが、棄却されました。

判決

裁判所は、被告がアテネ条約の下で契約運送人であったことを認めました。このツアーを宣伝して申立人の予約を受けたのはフライトアンドパッケージズ社である事実は契約書類上の法的効果に影響を与えることはありませんでした。 また、ショートトリップがアテネ条約第1条(8)で定義されている「運送の途中」で発生したと裁判官が認めのは、正しい判断です。

被告は、アテネ条約の文言は、(運送人が旅客「及び/又は」その手荷物に対して責任を負う)港における下船と、船客が本船から港へ船で移動する場合とは違う、と主張しました。後者の場合、運送人は、船客「及び」その手荷物が陸上に移動した場合についてのみ責任があるとして、これはクルーズの発着とは一致するが、本件で発生した現地業者による "ホップオン、ホップオフ"(乗り降り自由)の運送とは一致しないと主張しました。

しかし被告の主張は却下されました。責任は、乗客が客室内の手荷物と一緒に移動するか、あるいは別々に移動するかに依るものではないということです。

裁判官はまた、被告は テンダーボートのステップに適切なマークを置くか、警告を行うことを怠るという過失について、責任があると明示しました。

コメント

これは、アテネ条約の下での「運送」の定義について明確化した判断であり、比較的短期間に下された3番目の判決です。この判決では、運送人が本船と陸上間を移動するテンダーボートを提供するために契約した企業による過失行為に対して、運送人に責任があるとし、クルーズの開始時および終了時だけでなく、運送の途中で船客が上陸を希望する場合にテンダーボート提供する際であっても、責任があると明示しました。本件はJennings v TUI UK LimitedとCollins v Lawrence [2017] EWCA Civ 2268と併せてお読みください。

これらケースについてのクラブの記事については、以下のリンクをご覧ください。

"Legal Update: key ruling on the definition of "carriage" under the Athens Convention":

https://www.ukpandi.com/knowledge-publications/article/legal-update-key-ruling-on-the-definition-of-carriage-under-the-athens-convention-142326/

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PI Club

Date2018/06/18