回覧1/19:北朝鮮 - 国連、米国及びEUによる制裁措置

Trulli

アウトライン

  • 本回覧は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対する包括的な国際制裁体制からの逸脱行為に係る重大なリスクについてお知らせするものです。
  • メンバーは、2017年に北朝鮮に対する国連の制裁範囲が増大されたことに留意する必要があります。
  • 制裁違反があった場合、保険てん補が撤回され、関連企業や関係者に船舶没収や他に重大な罰金が科せられる危険性があります。
  • したがって、すべてのメンバーは、瀬取り(STS)を含む北朝鮮との取引に係るリスクを見直すことを厳格に求められており、結果として北朝鮮の企業と禁止行為を行うことにならないよう最大限の注意を払うべきです。
  • 国際グループのすべてのクラブは、同様の回覧を発行しています。
     

メンバー各位、

朝鮮民主主義人民共和国 - 国連、米国およびEUの制裁措置

本回覧は、2017年に国連安全保障委員会(国連安保理)が導入した朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対する包括的国際制裁措置からの逸脱行為に係る重大なリスクについてお知らせします。

2017年以降、制裁措置は一般的に、特に海運業界に対し強化されました。本回覧では、各国政府が実施しているいくつかの制裁措置に注目し、北朝鮮及び北朝鮮関係者と取引を行った場合の重大な結果について、警告いたします。

制裁措置の実施

2017年以降、国連安保理は、一部有力加盟国とともに制裁逃れの疑いのある海事活動の監視を強化し、北朝鮮およびその関連活動に対するさらなる禁止措置を実施しています。黄海、東シナ海および日本海での海運活動の監視が強化された結果、監視機関は、北朝鮮との取引に従事している船舶、及び世界の港で入港禁止や資産凍結という制裁対象となっている北朝鮮関連の外国籍船とその船主を摘発し、身元を特定することを継続しています。それらに関連する外国船舶及び人物の監視写真は、国連安保理決議1718号による資産凍結や渡航禁止の対象となる指定団体および個人としてリストアップされています。 写真によって、国連の北朝鮮への制裁に対する逸脱行為やこれに関係する多国籍犯罪組織の両方に関与する船主が、本来のIMO番号や船名を覆い隠したり、AISシステム・トラッカーから姿を隠すためAIS送信機をオフにしようとするなど、そのやり方が明らかになっています。

そのような船舶は、国連が過去の違反により指定した北朝鮮船舶や外国籍船あるいは無国籍船舶と瀬取りによって、石炭や液体貨物を違法に移送したことを隠すため、常に身元をわからない様にしています。北朝鮮制裁の国連専門家委員会は、これら船舶の活動や関連の人物について文書化しています。国連の報告書は一般に公開されており 1、海事当局にも開示されています。あるケースでは、そのような活動に従事する船舶が船籍抹消となったり、世界中の港で入港禁止となっていることから、次の寄港地でこれら船舶が拘束されたりもしています。

米国財務省はこれまで、北朝鮮の制裁措置回避に関与したとして28隻の船舶と併せて、個人および団体を指定しています。これらの活動に関与する船主、用船者または管理会社は、米国の指定により資産が凍結され、米ドルでの取引が除外されるため、そのような船舶の取引または資金調達を行うことは非常に困難となっています。国連または国家機関によって、このような活動に係わったとされる船舶は、必然的に、銀行に精査され、口座の凍結または取消しまたは取引の凍結を招く可能性があります。

各国政府による措置

多くの国は個別に、または欧州連合のような超国家的組織の傘下で、国連安保理決議を、法制化し実施するための措置を導入しています。これらの対策には、次のものが含まれますが、これらに限定されません。

  • 航空機やロケット燃料の販売及び供給の禁止
  • 北朝鮮へ供給禁止となる贅沢品の広範なリストアップ
  • 船舶リースや用船、船員の提供をすべて禁止。
  • 北朝鮮籍船舶の所有、運航またはそれら船舶への船級あるいは類似サービス提供の禁止。
  • 広範な武器の輸出禁止
  • 北朝鮮により所有、運航または配乗されている船舶のEU内への入港禁止。
  • 北朝鮮の鉱山開発や精錬、化学産業への投資の禁止。

2017年の国連安保理決議

メンバーは、2017年に北朝鮮に対する国連の制裁範囲が、下記の決議に基づき、増大されたことに留意する必要があります。

2017年8月5日付の国連安保理決議 第2371号

  • 北朝鮮からの石炭、鉄、鉄鉱石、鉛および鉛鉱石の輸出をすべて禁止し、国連加盟国の船舶による当該北朝鮮産物品の輸送禁止。
  • 北朝鮮からの水産物の輸出をすべて禁止し、国連加盟国船籍の船舶による北朝鮮産の水産物の輸送禁止。
  • 北朝鮮に関して様々な国連決議によって禁止されている活動に従事している船舶を指定するため、北朝鮮に対する制裁を監視する国連委員会に権限を与え、国連加盟国にこれらの船舶の入港禁止を求める。
  • 北朝鮮の団体または個人と新たな合弁事業または共同事業を禁止。

2017年9月11日付の国連安保理決議 第2375号

  • 北朝鮮へのすべてのコンデンセートまたは天然液化ガスの供給、販売、輸送の禁止。
  • 北朝鮮に輸入されるすべての石油精製品に、年間200万バレルの上限を課し(その後50万バレルまで引下げ)、これら取引に対して厳格に管理し、国連加盟国は30日ごとに安保理に、取引額及び取引先について報告する義務を課す。
  • 決議案可決後2ヶ月間の北朝鮮への原油の供給、販売または輸送を、決議案可決前12ヶ月間に国連加盟国が北朝鮮に供給、販売または輸送した数量に制限する。
  • 北朝鮮からの繊維製品の輸出禁止。
  • 決議の採決日以降、国連加盟国に北朝鮮国民への就労許可の付与を禁止
  • 北朝鮮の団体または個人とのすべての新たな合弁事業または現行の合弁事業の拡大を禁止。
  • 供給、販売または輸出が、国連安保理の様々な決議の下で禁止されている貨物を輸送していると見做される合理的な根拠がある場合、旗国の同意を得て船舶の検査を加盟国に要請。

2017年12月22日付の国連安全保障理事会 決議第2397号

  • 国連加盟国の国民および個人、ならびにその国またはその管轄地域に設立された団体が、国連安保理の様々な決議により禁止されている活動または物品の輸送に関与したと信じる合理的な根拠を有する船舶への保険または再保険を提供することを禁止。 
  • 旗国に、国連安保理決議により禁止されている活動または物品の輸送に関与していると信じるに足る合理的な根拠を有するすべての船舶の船籍抹消を要求し、国連委員会の承認なしに再登記を禁止。
  • 国連委員会が事前に個別に承認しない限り、そのような船舶への船級サービスの提供を禁止。

これら決議は、各国および超国家組織により、関連する違反に対する行政上または刑事上の罰則を適用する規定を含む、各国国内法または制裁プログラムの中で実施されています。

自動船舶識別装置 (AIS)

船舶が不可解に針路変更をしたり、AIS信号が途絶えたら、制裁逃れの行動を起こしている可能性が疑われます。
AIS信号の喪失が船長または他の乗組員が、船の航海パターンや航行活動を隠すために、意図的に送信機の信号をオフにした結果であると判断される場合、監視機関の関心は増します。

そのような行動は、船舶の安全性またはセキュリティを維持するために必要な場合を除き、海上人命安全条約(SOLAS)の重大な違反であり、旗国の要件への違反、衝突、他船に対する損害、汚染損害および海上における船員の人命喪失のリスクを高めます。

船舶が旗国の要件を満たしていない場合、P&I保険のルールに基づく保険カバーに差障りが生じます。また、AISデータの自動送信を停止、あるいはAISを不正操作し本船位置を偽装し、船主が制裁に違反する航海をさせた場合、不法または不正な取引を理由にP&Iカバーが拒否されることもあります。

細心の注意が必要です
国連安保理が合意した制裁措置は、これまで一国を対象とした制裁で最も包括的な制裁措置のひとつであり、北朝鮮との制裁取引を阻むために、国際的レベルで十分な資金が投入され、海運業界に焦点を当て、確固たる決意で取り組まれています。

したがって、北朝鮮とのいかなる取引も監視および精査の対象となっていることに疑いの余地はありません。関係当局は衛星やその他の設備を用いて船舶の動きを監視しており、疑わしい活動が検知された場合には、その船舶は捜査対象となり、港で拘留されることもあります。 制裁に違反していると判断される活動は、保険てん補の撤回や、関連企業や関係者に船舶没収や他に重大な罰金が課される危険性があります。そのため、その後の船舶運航に影響が出るかも知れませんし、最悪の場合、将来にわたってメンバーの企業全体の活動に致命的影響が出ることもあり得ます。

たとえ北朝鮮との合法的な取引を行うことが可能であったとしても、メンバーにおかれては、保険金やフィーの支払および担保提供が大幅に遅れるか、完全に禁止されることもあるため、北朝鮮と取引を行う船舶のサポートはできかねることもあります。このような取引を行っている船舶は、自動的にその後180日間は米国の海域に入ることが禁止されています。

したがって、すべてのメンバーは、瀬取り(STS)を含む北朝鮮との取引に係るリスクを見直すことを厳格に求められており、結果として北朝鮮の企業との禁止行為を行うことにならないよう相当な注意を払うべきです。

国際グループのすべてのクラブは、同様の回覧を発行しています。

以上


UK P&Iクラブ 日本支店

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PI Club

Date2019/01/16

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