回覧18/15 - 包括的共同行動計画(JCPOA)に基づくイラン制裁の解除

Trulli

アウトライン

  • 本回覧は、包括的共同行動計画(JCPOA)の履行に基づくイラン制裁の一部解除に伴う保険てん補に関してメンバーにお知らせするものです。
  • EU及び米国はイランがJCPOAの下での合意の履行が確認されなかった場合には、経済制裁はスナップバック条項により即座に復活させることを明確にしています。
  • イラン航路あるいはイラン企業との取引に係る契約を締結しようとするメンバーは、制裁が復活した際に即座に契約解除する文言を、契約文書に挿入するようお勧めします。
  • 国際グループのすべてのクラブは同様の回覧を発行しています。

組合員各位

包括的共同行動計画(JCPOA)に基づくイラン制裁の解除 

本回覧は、包括的共同行動計画(JCPOA: Joint Comprehensive Plan of Action)に基づくイラン制裁の一部解除に伴う保険てん補に関する現状についてメンバーにお知らせするものです。

EU及び米国の二次的制裁の解除

イランの核開発縮小に関するJCPOAに基づく「履行の日」(Implementation Day)は、2016年1月16日(土曜)に発表されました。これにより、イランとの海運取引やその取引に従事する船舶への保険、およびイランの船舶や企業に対する保険・再保険の提供を対象としたEUによる制裁は、特定物資に関して事前承認が必要なものを除き、大筋解除されることとなりました。

また同時に、米国の二次的制裁措置、つまり米国以外の人及び企業に対する制裁措置が一部解除されました。しかし、SDNリストに掲載されているイラン人あるいはイラン関係者と、例えば、知っていながら多額の金融取引を行ったり、物資あるいは特定の支援を行ったりすることを禁止する二次的制裁措置は引き続き継続されます。 

米国の一次的制裁

しかしながら、米国政府は、米国企業のイラン関連取引を禁止する一次的制裁は、解除も緩和もしていません。 米国の金融機関に対する禁止措置や米ドル取引や米国保険者・再保険者による保険提供の禁止措置は引き続き継続されます。「履行の日」に発表された制裁措置の解除にも関わらず、米国人は、引き続き米国財務省外国資産管理局(OFAC: Office of Foreign Asset Control)により免除あるいは認可を受けた特例取引を除き、イラン関連の保険てん補または保険金支払いを含み、直接間接を問わずイランに対する物資、サービスあるいは技術の輸出は禁止されます。

米国の一次的制裁の継続による影響は広範囲に及びます。例えば、メンバーはイランとの取引あるいはイラン企業との米ドル取引に従事できず、米国に関係する多くの銀行や金融機関はイラン関連の取引を全くできないか、あるいは限定的にしかできません。特に米国のイランに対する一次的制裁措置の継続によって、米国の保険者及び再保険者によるイラン企業への保険提供や、イラン企業あるいはイランとの取引に係るクレームの支払いは、引き続きできないこととなります。Tidewater社は、 IRGC (Islamic Revolutionary Guard Corps)の所有であることから SDNリストに掲載されているイランの港湾運営会社ですが、SDNリスト(及びEUの制裁対象団体リスト)には「履行の日」以降も掲載されており、米国人であれ米国以外の者であれ同社との取引は依然として制裁対象となっています。 従って、メンバーの皆様には、イラン関係者との取引につきましては、米国OFACのウェブサイトにてSDNリストを、またEUの Consolidated List を確認し、引き続き相当の注意を払っていただく必要があります。 

国際グループのプール及び再保険に係る米国の一次的制裁の潜在的な影響

国際グループの再保険プログラムには少なからぬ数の米国再保険会社が関与していることから、一次的制裁措置による米国保険者及び再保険者への影響について国際グループが重大な懸念を抱いていることを、2010年以降、米国当局(米国財務省及び国務省)との協議において繰り返し明確にしてきており、最近もOFACに対し、この懸念を再度表明したところです。国際グループの経済制裁小委員会では、米国の一次的制裁の継続により派生する問題や国際グループのプールや再保険に対する影響について検討してきました。

現在、国際グループに加盟するすべてのクラブ・ルールでは、プールあるいはグループ再保険からの回収に不足がある場合のリスクは、メンバーに帰属することとなると規定されており、小委員会はこのメンバーのリスクを回避あるいは軽減するための選択肢を積極的に模索しています。

スナップバック(snap-back)条項

EU・米国ともに、イランがJCPOAの下での合意の履行が確認されなかった場合には、経済制裁はスナップバック条項により即座に復活させることを明確にしています。従って、イラン航路あるいはイラン企業との取引に係る契約を締結しようとするメンバーは、制裁が復活した場合に即座に契約解除する文言を、契約文書に挿入するようお勧めします。

国際P&Iグループの全てのクラブが同様の内容の回覧を発行しています。 

Staff Author

PI Club

Date2016/01/21