事故の教訓: バルク・キャリア - ライフボート退船操練中の死亡事故

船種: バルク・キャリア

事故の経緯:

本船は積荷役の沖待ち中に、予定されていた退船操練を実施しました。操練には右舷のライフボートを着水させ、離脱装置の点検も含まれており、二等航海士の指示の下、甲板長、操機手、甲板員や電気技師が参加して実施されました。ライフボートを水面から引き上げる際、巻上げウィンチの電源が作動しなかったため、甲板長はウィンチを手動で操作しようとハンドルを握りました。しかし電気技師がウィンチの電源を入れた途端、モーターが動き出し、急回転したハンドルが甲板長の頭を直撃し即死状態となりました。

分析

甲板長がウィンチ・ハンドルをつかんだ時、電源コントローラーは巻上げの位置にあったため、電源を入れるとすぐに回転を始めました。調査の結果、手動時に電源が切れる装置が機能していなかったことも判明しました。事故原因は、責任者の監督不行き届きや船員間のコミュニケーション不足など、安全装置機能の不備や保守上の不備があげられます。後者については電源カット装置は通常の保守点検リストにも記載されておらず、検査及び保守の指示書も明記されていませんでした。

事故の教訓

実際の操練の前に、リスク・アセスメントを行い、潜在的な危険性と安全上の注意を伝えるミーティングを開くべきであった。

責任航海士が、乗組員に積極的に指示を出すことをせず、適切に操作を監督できていなかった。

船員間のコミュニケーションが不足していた。

電動で操作しない場合には電源コントローラーはニュートラル・オフ状態に戻るような設計であるべきだった。

安全装置のメンテナンスが不適切で、日常的な点検が不十分だった。

船員が、安全な操作方法や必要なメンテナンスについての十分な知識を持っていなかった。

Staff Author

PI Club

Date2013/05/11