事故の教訓:油圧オイルの流出

Bulk carrier top down drone shot
船種: バルクキャリア 

事故の概要

本船が積荷の穀物を荷揚げしていたとき、激しい雨が降り始めたため、水濡れに弱い貨物取り扱いの慣例に従い、貨物艙のハッチカバーを閉めることとなった。ハッチカバーは油圧作動のフォールディングタイプ(ヒンジパネル)であったが、カバーを閉める作業中に主油圧供給ラインが破裂して油が上甲板に吹き付けられた。その後上甲板の側面に沿って雨水と共に油が後方に流れた。 甲板のスカッパーは塞がれており、流れた油は当初は留まっていた。しかし、舷梯に隣接してせり上がったデッキエッジプレートのレベルまで水が溜まってしまい、船側から港内に油がこぼれ落ちた。 乗組員は迅速かつ効率的に油の流出に対処し、事件を港湾当局に報告することで対応した。

分析

油漏れは、防錆テープで保護された油圧パイプの小さなピンホールから発生していることが判明した。メンテナンスが不適当であるという兆候はなく、この油の漏れは製造上の欠陥か、もしくは何らかの形でテープ内に水分が閉じ込められ、密かに局部腐食を起こしていた可能性があると考えられた。港に船舶が停泊している間、甲板上のスカッパーを閉めておくのは基本事項といえる。しかし、降雨の状態では、乗務員は定期的に上甲板に溜まったいかなる水も取り除くことが重要であり、排水するか、指定のスロップタンクに移すことが好ましい。このケースでは、本船にはこの目的のためにデッキ排水バルブが取り付けられていた。

上甲板の後端に水が溜まり過ぎたことで、油がこぼれた時に、甲板上の水溜り部が有効に機能しなくなってしまったのである。今回流出した油はわずか数リットルの作動油に過ぎないが、そのような油濁汚染事故でも船主や乗組員に重い罰金と起訴される危険性をもたらす可能性がある。

事故の教訓
  • 貨物艙のハッチカバー、クレーン、ポンプおよびその他の甲板機械に関連する油圧システムからの漏油は、油流出事故においてはよくある原因である。
  • 港内において、甲板スカッパーにプラグをしておくことは基本事項だが、甲板上に過剰な水を蓄積するべきでは無い。
  • 甲板上の水密性を維持する手順、及び排水バルブや移送装置の適切な使用については、乗組員の海洋汚染防止訓練に含めるべきである。
  • 乗組員の迅速で効果的な対応は、汚染被害の緩和に役立つであろう。
  • 一滴の油でさえも、海へ流出するには多すぎる、ということを忘れずに!

Captain David Nichol

Senior Loss Prevention Executive (Greece)

Date2018/02/22