事故の教訓:タンククリーニング中のコンタミネーション

Oil tanker in seaport with containerships
船種 :タンカー事故の概要

本船には、3種類のケミカルカーゴが積載されており、それぞれ異なる港で荷主に引き渡されることになっていた。積荷及び航海中も順調であり、また最初の港のカーゴについても、特に問題なく揚げ荷された。 2番目の港に到着した時、本船はターミナルの混雑により錨泊を指示された。この機会に乗組員は、前の港で揚げ荷された5つの空のタンクについて、清水での洗浄を実施することとし、甲板上の清水パイプと各タンクの洗浄マシンを指定されたホースで接続した。

タンククリ-ニング開始後、当直航海士は、ホースの1本が3番目の港で揚げ荷する積載タンクに、間違って接続されていることに気付いた。その結果、バルブが閉鎖される前に、大量の清水がタンク内に投入されることとなった。

分析

タンク内の高額なケミカルカーゴは、スペックの許容値を大きく超える量の水によってコンタミが発生したため、荷受人に受取りを拒否された。このコンタミカーゴの取り扱いについては、分離保管、他港での精製及び他船による輸送など非常に高額なプロセスが求められた。本件は、ホース接続が正しくなされていたかどうか、そしてそのシステムにふさわしいバルブが、タンククリーニング開始前に適切にセットされていたかどうかを、乗組員が十分に確認し、またダブルチェックしていたならば発生しなかったであろう。複数貨物を積載した状態の船舶でタンククリーニグが実施される場合、こういった注意というのは特に重要である。非常に高額となりうるコンタミ損害による財政的影響を除いても、予定していないタンクに清水やタンククリーニング用洗剤を間違って投入すると、危険な化学反応を引き起こす可能性がある。

事故の教訓
  • タンククリーニング作業は、常に、文書化された船上手順書やガイドラインに厳重に従って、実施しなければならず、担当オフィサーはそれらを熟知しているべきである。
  • カーゴ、バラスト、タンククリーニング、あるいは、他のあらゆる移送作業を実施するにあたり、パイプライン、バルブ、及び盲板の正しい配置は、作業計画に明確に記載し、かつ、全ての関係する職員及び乗組員の事前ミーテイングにおいて、見直し・確認されなければならない。
  • タンククリーニングのチェックリストは、作業開始前に確実に実施・終了しなければならない。
  • ラインとバルブのセッティングは、責任ある職員によりダブルチェックされなければならない。

Captain David Nichol

Senior Loss Prevention Executive (Greece)

Date2018/02/08