QLU Summer 2018-2:インタークラブ・アグリーメント第8条(b)における「類似の修正」の解釈

Agile Holdings Corporation v Essar Shipping Ltd (The "Maria") [2018] EWHC 1055 (Comm)

事実

本件の船は、原告である管理船主(disponent owner)(「船主」)から、被告である傭船者(「傭船者」)に対して、チュニジアから、トリニダード経由で、インドに向かう、一航海のため、定期傭船に出されました。積み荷は、直接還元製鉄(direct reduced iron。「DRT」)で、熱、又は、水分のある場所においては、高度に活性化し、燃焼する性質を有することで知られていました。

トリニダードのLisas港にて、ベルト・コンベヤーを用いての船積作業中、ベルトに火がついているのが発見されました。しかしながら、選任された船積監督者(supercargo)は船倉を調査し、船積作業を継続できる、と助言しました。実際には、DRTは航海中、及び、荷揚作業中も、燃え続けていました。船主は、傭船者に対して、貨物関係者に対し負うであろう責任について補償することを求め、仲裁を申し立てました。

傭船契約は、ニューヨーク・プロデュース46年版書式によりました。関係する条文は、次のとおりです。

「第8条 傭船者は、その費用において、船長の監督の下、貨物の船積、積付、荷均し、検数、及び、荷揚を行う。
 第49条 ステベは、傭船者/荷送人/荷受人、又は、それらの代理人により選任され、報酬を支払われるが、船長の指示の下におかれ、船長は、適切な積付と船の堪航性、及び、安全性について、責任を負う。」

傭船契約は、NYPEインタークラブ・アグリーメント(「ICA」)を摂取し、その第8条(b)は、次のとおり、規定していました。

「第8条(b) 船積、積付、固縛、荷揚、管理その他の荷役作業から生じた請求:100%傭船者が負担する。但し、「及び、責任」との文言が(ニューヨーク・プロデュース書式の)第8条に挿入されているか、荷役作業について船長に責任を負わせるような類似の修正(similar amendment)がなされている場合には、50%傭船者、50%船主の各負担。」
判決

仲裁廷の判断

仲裁廷人は、傭船契約第49条の「船長は、適切な積付と船の堪航性、及び、安全性について、責任を負う」との文言は、ICAの第8条(b)の但書の最初の文言に該当すると判示し、責任を50%50%に分けるべきである、と判示しました。

高等法院(第一審)の判断

高等法院は、仲裁廷の判断を覆しました。

傭船契約中の条項が、「荷役作業について船長に責任を負わせるような類似の修正」を構成し、ICAの第8条(b)の但書を発効させるためには、当該条項が、一部ではなく、全ての荷役作業に関する責任を船主、又は、船長に移転させていなくてはならない、と判示しました。

「類似の」とは、「及び、責任」との文言の追加と同じ種類の、また、同じ効果を持つ条項であることを意味し、修正が「類似の」ものである必要がある、としました。

そのことにより、単なる繰り返しとしての「及び、責任」との文言と区別される、とも判示されました。

上記に基づき、修正は、単なる一部ではなく、全ての荷役作業に関する責任を船主に戻すような効果をもたなければならない、とされました。それが、傭船契約第8条に「及び、責任」との文言を追加する効果だからです。

裁判所は、本件の第49条は、全ての荷役作業に係る責任を船主に移転していない、と判示しました。第49条は、特に、荷役作業の1つの側面、つまり、積付にのみ、関係するものであり、おそらく、「Imvros」号事件判決の効果を覆すことを意図し、不堪航につながる不適切な積付について、船主に責任を負わせるものである、とされました。当該条項が積付一般について、船主に責任を負わせるものであったとしても、積付に関する責任の移転は、他の荷役作業に関する責任を移転しません。従って、第49条は、ICAの第8条(b)但書にいう「類似の修正」ではない、と判示されました。

コメント

本判決は、第8条の解釈について、有益な明確化を図ってくれました。裁判所が、ICAの規範に干渉することを控えることも、再度、強調されたといえます。

Staff Author

PI Club

Date2018/07/31