事故の教訓:タグロープ係止時の乗組員の怪我

Bulk carrier in port - cropped

船種:バルカー

事故の概要

積荷が完了し、水先人が乗船した後、本船の船首と船尾のデッキチームは係船索のシングルアップを始めるよう命じられた。船尾係留チームは、担当のセカンドオフィサー、甲板手とフィッター(操機長)で構成されていた。
船外のスターンラインが放されて引き込まれると、センターリードを通してタグボートを係止するよう指示が出された。甲板手はタグボートの乗組員にヒービングラインを渡し、その乗組員はそれとメッセンジャーラインの終端部を結び、メッセンジャーラインとタグワイヤーを巻き入れ始めるように本船に合図した。たるみを手でとった後、甲板手はメッセンジャーラインを2組のボラードの周囲とそしてウィンチワーピングドラムに導いた。この時、セカンドオフィサーは船尾楼甲板の右舷船尾角に配置し、フィッターはウインチコントロールを操作していた。ワーピングドラムを4巻きした後、乗組員はウインチ動力でメッセンジャーラインを引っ張り続け、まさに牽引タグワイヤーのアイ部分がフェアリーダに入ったとき、突然メッセンジャーラインの片方の端が切れ、激しくスナップバックして甲板手の頭部を直撃した。甲板手は眼に重大な損傷を受け、すぐに陸上の病院に運ばれた。

分析

当クラブは、タグボートの係止時または解纜時に起こる数多くの事故を確認しています。 別のケースでは、ワーピングドラムから外れたメッセンジャーラインが首に当たってひとりの大工が犠牲になりました。 今回の事件では、メッセンジャーラインそれ自身は、タグの装備が良好な状態に維持されていることをどうしてもタグボート側に頼らざるを得ない本船の乗組員に対し、明らかな不具合があったわけではありません。むしろ、ワイヤ自身のたるみ不足とアイがフェアリーダを通過する際に生じる追加の摩擦との組み合わせによって、メッセンジャーラインに張力がかかりすぎた可能性があります。 しかし、乗組員は警告がなくても、ラインがピンと張ってしまう可能性に警戒すべきでした。甲板手は、ワーピングドラムにおいては誰からもサポートされず、そこでは、ドラムから繰り出されるロープを扱うことと、たるみをコイルダウンすることの両方を任されていました。パナマックス型のバルクキャリアで、3人の乗組員にこの種の操作を安全に管理することを期待することは、多くを求めすぎていたといえるでしょう。

事故の教訓

  • すべての係留および曳航作業を、適切にリスク評価し、計画をたて、関係するすべての乗組員にその作業がどのように行われるべきかについて、また潜在的な危険や安全上の予防措置について確実に認識させるべきです。
  • 係留作業員は、適切に認定を受け、訓練され、経験を積み、十分な人員配置でなければなりません。
  • 担当オフィサーは、ラインの張力を注意深く監視し、ラインが緊張状態になることに危険性がある場合は警告を発しなければなりません。
  • ワーピングドラムにロープを過度に巻きつけることは避けるべきです。

Captain David Nichol

Senior Loss Prevention Executive (Greece)

Date2019/04/17