事故の教訓: ヨットとの衝突事故

タンカー
事故の概要本件は、視界良好、風力BF 6-7の外洋上で、暗い時間帯に発生した。 当直航海士(OOW)とは別に、甲板手(AB)がブリッジに見張員としており、自動操舵で航行していた。 当直中、OOWはABに居住区の清掃等を行うことを許可し、一人で見張りをすることとなった。
コンパス誤差を確認するため方位角を測定した直後に、OOWはほぼ正面に明らかに非常に近い距離で白い光を発見した。OOWが効果的な回避行動をとる前に、帆走中のヨットが本船左舷側を通りすぎようとしているのが見えたため、その時点で船長を呼んだ。ヨットの乗組員は、VHF通信で、他船と衝突して深刻な被害を受け浸水しているとの遭難通報を送った。 タンカーは、ヨットに対し風下をつくり、乗組員を無事救助した。
分析夜間にABがブリッジを離れ他の業務の実施を許したOOWの判断は、COLREGS条約第5条や安全な航海当直の維持のためのSTCW条約の要求事項に対する重大な違反であった。 OOWには他の航行業務も求められており、ABの不在は、適切な見張りが実施されていないということを意味している。日中のような好環境であれば、単独見張りでも許されるかもしれないが、OOWは暗い時間帯に一人で見張りをするべきではなかった。
その後の証言やVDR記録の調査により、ヨットはレーダー画面で、タンカーから約3マイルの範囲で常に現れていたことが判明した。タンカー側で目視やその他利用可能な手段で適切な見張りが行われていたら、OOWは状況を判断し、必要な回避行動をとるのに十分な時間があったものと思われる。
事故の教訓- OOWは、暗い時間帯に単独見張りをするべきではない。
- 船長は、COLREGSやSTCWの要件に厳密に従った適切な見張りを維持することが最も重要であるということを、スタンディングオーダーや夜間命令簿において、明確にすべきである。
- 船舶は、外洋、あるいは明らかに航行量の少ない状況で航行している場合でも、慎重な見張りを維持する必要がある。
- OOWは、小型船が目視のみ、あるいはレーダー上に、比較的近い距離でしか探知できない可能性があることを常に警戒すべきである。
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