事故の教訓 : ハッチカバー作業中の手の負傷

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船種:バルカー

事故の概要

夜間、水濡れに弱い貨物の荷揚げ中、雨が降り始めた。貨物の荷揚げは一時中断となり、当直航海士は乗組員にカーゴホールドのハッチカバーを閉じるよう指示した。しばらくして雨が止み、ステベドアは荷揚げ作業を再開すべく、ハッチカバーを再び開けるよう要求した。当直航海士は、右舷側の油圧制御装置を操作する前に、ハッチ・コーミング付近に人がいない事を確認したとの報告を受けた。航海士はハッチカバーが開く途中に左舷側ハッチ・コーミングから悲鳴が上がるのを聞いた。すぐに操作を止め左舷側に駆け寄ったところ、右手から多量の出血をしている当直の甲板手を見つけた。ハッチ・コーミングのレールに手をおいていたため、ハッチカバーパネルの車輪に轢かれたことは明らかだった。2本の指が車輪で切断され、もう1本の指も負傷し病院で切断手術が行われた。

分析

本船には、開閉の際はコーミングレールに沿って移動する、標準的な油圧で作動する車輪つき鉄製の折り畳み式ハッチカバーが装備されていた。ハッチカバーを操作した航海士は、左舷側コーミングにいた甲板手の存在に気付いていなかった。コントロールボックスの死角にいたためである。近年UKクラブでは同様のケースを多数扱っており、その多くは過信と安全な操作手順を守らなかったことが原因であった。本件でも、当直航海士が、反対側のハッチ・コーミングにも人がいないことを確かめるために別の乗組員を配置すべきであったといえる。

事故の教訓
  • 当直航海士およびその他すべての乗組員は、メーカー作製の操作マニュアルのガイダンスを含め、ハッチカバーの安全な操作手順を完全に熟知していなければならない。
  • ハッチカバーを操作しようとする場合、デッキ上の当直乗組員および港湾作業員に、明確な警告を伝達しなければならない。
  • ハッチカバーを開閉する前に、レールに障害物がないことを確認し、操作中にコーミングの近くに人が立っていたり乗っていたりしないことを徹底的に確認する必要がある。
  • 操作中に確実にハッチコーミングをクリアに保ち、また直ちにオペレーターに停止警告を伝える手段を確立するよう、乗組員に確実に指示する必要がある。

Captain David Nichol

Senior Loss Prevention Executive (Greece)

Date2017/11/14