事故の教訓: パイロットの怪我

積荷のための入港に備えて、パイロットの指示に従い左舷のパイロットコンビネーションラダーを用意した。船長はパイロットボートが風下に来るように本船を操船したため、パイロットは問題なくボートからラダーに乗り移った。パイロットボートの乗組員は気付かなかったが、ラダーの端の引き綱がパイロットボートの舷側にあるクリートに絡まっており、ボートが離れたとき、ラダーは伸び本船から引っ張られた状態となった。その時、パイロットはラダーを上っている途中であったが、引っ張られたラダーが切れて海に振り落とされた。ラダーは一部が千切れてパイロットボートのプロペラに絡んだため、ボートは動力を失い、パイロットを救助することが困難となった。パイロットを救助したときには、頭部に重傷を負っていたことが判明した。
分析パイロットは航海の最も重要な場面で、船舶の安全航行を支援するという重要な役割を担っている。乾舷の高い船舶への乗下船は、常に大変な作業であり、荒天のときはなおさらである。したがって、パイロットの乗船準備とその手順は、確実にパイロットや索具を扱う者の安全を確保するために、SOLASの要件に厳密に従うことが最も重要である。本件に関連しては、パイロットボートに絡まったり、パイロットの安全な乗下船を妨げたりするような、引き綱やループ、その他ロープなどはパイロットラダーに取り付けるべきではない。パイロットには欠陥ラダーのある船舶への乗船を拒否する権利がある。この場合には深刻な遅延を生じることとなる。
事故の教訓- パイロットラダーおよび索具は、SOLAS要件に準拠して設置され、維持管理しなければならない。
- 引き綱やその他の障害物の使用は禁止する必要がある。
- パイロットラダーの設置は、責任あるオフィサーの監督下で行わなければならない。
- 乗組員は、事故発生時に迅速な警告と支援ができるように、パイロットボート及びパイロットの乗下船作業に関し、注意深く監視しなければならい。
- パイロットやパイロットボートの乗組員は、索具の不備や不適切な取り付けに関し注意を払わなければならない。
You may also be interested in:
本回覧は、P&Iの国際グループがTradeGoの電子商取引システムを承認したことをお知らせするものです。
はしごからの落下事故
2022/01/27
昨年、9月にAMSA(Australia Maritime Safety Agent)より、また、10月に香港Marine Departmentよりあいついで、はしごからの落下事故に関する通達が発行されました。
国際P&Iグループ ‐ 2023年度プールおよび再保険契約
2023/01/17
2023保険年度の国際グループのプーリングおよび超過額再保険契約等が最終決定されました。メンバーの皆様は国際グループのウェブサイトでも内容を確認いただけます。
Crew Health Advice: ハンセン病
2023/01/24
ある乗組員は皮膚炎の疑いで下船し、その1ヶ月後ハンセン病と診断されました。乗組員はこの診断後保菌者として扱われ、治療と経過観察についての指導を受けました。診断および治療についての推奨事項等についてまとめました。