事故の教訓:カーゴホース破損による油濁事故

本船(タンカー)は、石油製品貨物を2船間移送(STS)によって積載するために、沖合いに錨泊した。 貯蔵船に係留後、カーゴタンクの検査が行われ、また、最大貨物移送レートに関する合意を含む事前積み荷チェックリストを完成させた。フレキシブルカーゴホースがSTS作業会社から供給され、両船のマニホールド間に接続された。 移送作業中、カーゴホースが受け入れ側船舶のマニホールドの近くで破裂し、デッキ上や船外に油が噴霧された。 乗組員は直ちに警報を発し、貯蔵船に移送を停止するように指示し、デッキに流出した油を閉じ込めて回収するための迅速な行動をとった。清掃作業およびその後の調査が完了した後、ホースが交換され、作業が再開された。
分析海上へのごく少量の油流出に留まったのは、主に本船乗組員の迅速かつ効果的な対応によるものであった。今回の事故の調査では、事前に合意されたポンピングレートやシステム内の圧力が超えたという証拠がなかったので、ホースの破裂はホース自身の状態によるものであると結論付けられた。 このホースのマーキングには、事故の2年以上前に最後の圧力試験が行われたことが示されており、必要とされる検査と試験の有効な証明書は、発行されていなかった。 本件では、ホースが当該作業に適合していることと、正しく認証されていることを確認する責任は、STS作業会社にあった。 ただし、乗組員は、安全にアクセスできる限り、移送ホースを慎重に検査しなければならず、またホースに関連する文書の閲覧や、識別マークが一致しているかどうかの確認、そして不具合や異常がある場合については抗議する必要がある。 業界のガイドラインでは、ホースの定期的な試験は、12ヶ月を超えない間隔で実施することを要求している。
事故の教訓- 2船間移送(STS)のオペレーションは、船舶のSTS作業計画、海上での油移送時の油濁防止のためのMARPOL規則、STSガイド、及び船舶安全管理システムの各要求事項を考慮しなければならない。
- カーゴ移送ホースは、その目的のために適合したものを選び、試験及び検査の有効な記録があるものを使用しなければならない。
- 移送ホースに何らかの不備または不適合が明らかになった場合は、抗議し、その後、責任者によって調査/修正されなければならない。
- この事故では、乗組員が移送作業中に絶えず警戒してデッキ当直を維持し、訓練手順に従って、流出を留めるよう迅速に対応することの重要性を示している。
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