事故の教訓:過大速力による航走波損害

事故の概要
本船(タンカー、半積)は、パイロット乗船の上、早朝の上げ潮時、河川内の狭い水路を上流に向かい航行中であった。しばらくして、水路内の河川にそって設置されている岸壁を通過しようとする時、パイロットは本船速力を全速から半速に減じるよう指示した。岸壁通過後、再び速力を全速とした。
後日、本船船長は、過大速力で航行したため、岸壁に着岸していたバルカーに対し航走波損害を与えたとする申立書を受領した。
本船が通過した際に生じた損害とは、舷梯の破損、及び船首から船尾にいたる複数の係船索切断である。
分析港湾規則によると、当該河川を航行する場合、制限速力は7ノットと規定されているが、本船タンカーが岸壁を通過する際の速力は、約9.5ノットであったと結論付けられた。タンカーは、川の中央部を航行したが、岸壁に停泊している船舶は、過大速力で通過する他船の航走波によって影響を受ける可能性があり、それは相対的に川幅が狭くなるということを示している。
定められている速力制限とするためには、エンジン回転数は、早めに減じることは可能であり、そうすることより本船の船体運動により発生する航走波は抑えることができる。
パイロットは、低速の場合反対に、船体沈下(squat)により船首トリムとなり、操船影響がでるのではと、懸念を表明するが、水底に対する相互作用の影響は、船速を減じることにより低下するのである。
事故の教訓- 制限海域において航海計画を策定する場合は、安全な速力とともに、法定速力の遵守を考慮しなければならない。本船速力は、常に監視し、必要な場合調整すること。
- 速力制限が重要となる海域においては、それを特定し、船長/パイロットの情報交換時に確認しなければならない。
- 良好なBRM(ブリッジ・リソース・マネジメント)には、速力制限を遵守しないということについて、船長及び/またはパイロットへ注意を喚起することが求められる。
- 減速が必要とされる場合、状況が許す限り、徐々に、かつ早めに実施すること。
- 船長、航海士、及びパイロットは、制限水域における喫水、操縦性能、及び造波の相互作用による影響を十分考慮しなければならない。
- 河川や水路に沿って設置されている岸壁に停泊中の船舶においては、係留索は常に張力を持たせ、緩まないようにしなければならない。