QCR Spring 2019-5: 探索の方法に関するいかなる情報が開示されるべきか?

Taylor v Van Dutch Marine - [2019] EWHC 324 (Ch)

事実

本件は、被告らの内の数名による情報開示に関して、原告が申し立てた判決に関するものです。左の数名は、本来の請求に被告として追加された者です。本来の請求は、原告から被告らに付与された2つの融資から生じたものです。

被告らは、CPR(訳者注:英国民事手続法)第31条に基づき、標準的な情報開示を求められました。原告は、N265号書式(書類のリスト)が適切に完了されていないので、裁判所に対し、さらなる命令を求めました。

原告が提起した主たる論点は、被告は、用いた探索のためのパラメーターや、適用した方法論(書類の日付、所在場所、類型など)を説明していない、というものです。例えば、E-mailをどのようにして採取したのか、また、その重要性をどのように評価したのか、が説明されていませんでした。電子開示質問票(Electronic Disclosure Questionnaire(「EDQ」))は提出されていませんでした。

被告らは、開示陳述書において、合理的、適切な探索を行ったと記述し、開示義務を順守している、と反論しました。

判決

被告らの主張は、クラーク裁判官により、退けられました。

クラーク裁判官は、原告の主張を認め、「開示リストは、裁判所と相手方当事者が、行われた探索の適切さを評価することが可能となるものでなければならない。情報開示は、透明性のあるものでなければならず、不透明なものであってはならない。このことは、当事者は、その開示陳述書の中で、開示が求められる書類の所在場所を探すためにどのように探索を行ったかを説明することを求めているCPR第31条第6項(a)の規定からも、明らかである。」と判示しました。

同裁判官は、EDQ(これは強制的な書面ではないのですが)を完成しなかったことについても、批判的でした。「本件において情報開示につき要した時間と費用の多くは、追加された被告らが早い段階でEDQを完成させていれば回避できたものである。」と判示しました。裁判官は、様々な事項が開示リストに含まれるべきだとしました。例えば、書類の所在場所、開示する当事者のコントロール下にありその書類を保有する第三者の情報、管理人、日付の範囲、探索する際のキーワードなどです。

裁判官はまた、被告がなしたような、「クラウド」「クラウド機関」という引用の仕方は十分でない、と判示しました。全てのクラウド・システムによる保管については、その保管を行う者、アカウント・ホルダーの氏名(ユーザーID)が示されなければならず、また、その「クラウド」により保管されていた書類のタイプが明示されなければならない、とされました。

裁判官はまた、書類が、損失又は損傷により、復元できないか否か、また、その程度の説明については、見逃しられがちであるが、重要である、と判示しました。従って、N265書式において、開示する当事者のコントロールにない書類に関する記述として、ボックスを単に空欄とするだけでは、不十分といえます。

コメント

本判決は、開示手続が、透明性のあるもので、かつ、協力的なものでなければならないことを再認識させてくれます。それは、訴訟において有利な立場を得ようとして用いられる手続ではありません。しかしながら、近時の、Disclosure Pilot Schemeにおける強制的なDisclosure Review Documentの導入により、本件において行われた申立の必要性は減少するものと思われます。

以上

和訳: 田中庸介 (弁護士法人 田中法律事務所 代表社員弁護士)

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Date2019/05/21