06/08 - バンカー条約の発効(1) - 証書要件とブルーカード及び批准国が発行するBC証書について
バンカー条約の発効 − 証書要件とブルーカード及び批准国が発行するBC証書について バンカー条約* は批准国数及び必要保有船腹量がすでに発効要件を満たしたため、2008年11月21日に批准国において発効される予定です* バンカー条約: International Convention on Civil Liability for Bunker Oil Pollution Damage, 2001「燃料油による汚染搊害についての民事責任に関する国際条約《(100万総トン以上の船腹を有する5カ国を含む18カ国の批准が発行要件で、要件を満たしてから12ヵ月後に条約は発効する。)
BC証書の要件
バンカー条約は、燃料油の流出による油濁搊害の被害者に対する責任・補償体制及び強制保険システムを構築するものです。 同条約の下で、船主は批准国の領海及び排他的経済水域、あるいはその同等領域を含む領土内で生じた汚染搊害の補償(油濁防止措置費用を含む)を支払う責任当事者となっています。
本条約の批准国に船籍を有する、あるいは批准国に入出港する 1,000総トン以上の(海上を航行する船舶 及び水上クラフト等あらゆる船型の)船舶の登録船主は、本条約の要件を満たす保険契約を締結し、その有効性を証明する批准国発給の保障契約証明書(BC証書)を取得しなければなりません。またこのBC証書は常に本船上に備え置くよう義務付けられています。
本条約の制度は、CLC条約の下で既に確立されている油タンカーに適用される責任・強制保険制度にならったものです。
BC証書の発行と、証書上の責任のプーリング
国際グループの各クラブ理事会で検討の結果、2008年8月より批准国がBC証書を発給するために必要とされる、バンカー条約用の付保証明書「ブルーカード《を全クラブが発行することに合意しました。国際グループの各クラブは、現在基本的に船舶戦争保険が特別約款で担保している船主責任リスクを担保していませんが、BC証書を発行することにより生じた証書上の責任は、通常てん補しない上記リスクを含め、その責任限度額までをクラブ間でプールすることにも合意しました。このBC証書の下以外で生じた責任については、従来どおり除外規定が適用されます。条約の規定では、BC証書上の責任は、1976年LLMC(海事債権条約)及びその改正議定書で定める責任限度額を超えないものとし、戦争行為*(戦争の定義にテロ行為を含まない)及び第三者の意図的行為から生じた責任は除外されています。
* バンカー条約では戦争行為の定義にテロ行為を含まないので、テロ行為による搊害は免責とならない。
* クラブが提供しているP&I戦争危険特約では、テロ行為を含む戦争危険を起因とするクレームは
特別てん補の対象となっている。 (2008年1月31日付理事会決議文ご参照)
国際グループの各クラブはブルーカードを発行するにあたり、「BC証書上、(テロ行為を含む)戦争リスクについてクラブが支払ういかなる責任についても、メンバーが付保する船舶戦争保険の船主責任特約から回収できる金額、或いは標準的な船舶戦争保険船主責任特約を付保していれば回収されたであろう金額についてクラブに補償し、かつメンバーが当該船主責任特約の約款上有する権利及び第三者に対する求償権をクラブへ譲渡することにつき、メンバーの同意をいただくこと《を条件とします。これはメンバーがブルーカードの申請をすることで、同意したものとみなします。
(* ルール第5条E項ただし書c ご参照)
従いまして、ブルーカードを必要とされるメンバーはすべて、船舶戦争保険の標準的な船主責任リスクについて別途必要な限度額まで付保していただくことが必要となります。
* 必要な限度額とは、当該船舶の適正価額(最高1億米ドル)です。
ルール第5条D項(船舶保険証券の保険金額の免責)の備考ご参照
BC証書の取得
本年2月に国際グループは、批准国は、膨大な数のBC証書の発給に備え、行政手続きを整備する必要があることを指摘するため、IOPC Fundの執行委員会に意見書を提出しました。
批准国に船籍を有する船舶は、条約の要件を満たす保険契約の有効性を証する批准国発給のBC証書を当該批准国から取得する必要があります。このBC証書は、批准国の港やターミナルに寄港した際、保険契約が有効であることの証しとして扱われます。
批准国以外の国に船籍を有する船舶は、いづれかの批准国からBC証書を取得しなければなりません。船舶が批准国の港やターミナルにに寄港するのであれば、その国でBC証書の所管庁から発給を受けることが理想的です。それが上可能な場合は、他の批准国の所管庁からBC証書を取得することになります。国際グループ事務局は、批准国の政府機関と接触し、自国籍以外の船舶に対するBC証書発給の用意があるか確認をしています。情報が入り次第追ってご案内いたします。
国際グループ・クラブではブルーカードを電子的に発行するようになったことを批准国に通知しております。メンバーはブルーカードを電子的に、BC証書を発行する批准国の関係当局へ転送できるかと思われます。もし、BC証書を発行する国の当局が電子版を受け付けず、従来どおりの印刷書式を要求する場合には、印刷したブルーカードを発行いたします。
ブルーカードの申請
何時どのようにクラブにブルーカードを申請していただくかについては、批准国の対応とBC証書発給のための行政手続き等の状況がはっきりしてから改めてクラブ回覧にてお知らせいたします。
バンカー条約批准国(2008年4月現在)
バハマ、ブルガリア、クロアチア、キプロス、エストニア、ドイツ、ギリシア、ジャマイカ、ラトビア、リトアニア、ハンガリー、ルクセンブルク、ノルウェー、ポーランド、サモア、シエラ・レオネ、シンガポール、スロベニア、スペイン、トンガ、英国
国際グループ・クラブより同様の回覧が発行されています。