回覧05/16 - イラン航海とP&Iカバーについて - 更新情報

Trulli

アウトライン

  • 本回覧は、包括的共同作業計画(JCPOA)に基づくイラン制裁の一部解除を受け、保険てん補に関するメンバー向けの更新情報です
  • 2016年1月に履行されたJCPOAでは、米国の一時的制裁措置は解除されておらず、引続き在米再保険者による国際グループへの再保険提供に影響しています。
  • 国際グループは効果的な長期的解決策を図るため米国当局との交渉を続けています。
  • グループ・クラブは、暫定措置として米国外の再保険者と制限付きの代替再保険を契約しました。また(当該再保険を限度額まで回収するような場合には再検討することを条件として)経済制裁により回収不足となるリスクを追加プール協定の下でシェアすることを合意しました。

組合員各位

イラン航海とP&Iカバーについて - 更新情報

はじめに

対イラン経済制裁に関するクラブ回覧03/16をご参照ください。本回覧は、国際グループの超過再保険及びハイドラ再保険において回収不足となるショートフォール・リスクについて再保険回収を確実にするための暫定的・長期的解決策に関し、更新情報をお伝えするものです。

  1. 米国当局との協議
    英米独仏中露(通称P5+1)とイランが合意した包括的共同行動計画 (JCPOA:Joint Comprehensive Plan of Action)が2016年1月16日に正式に履行されたため、国際グループは、米国当局(米国国務省及び米国財務省外国資産管理室(OFAC))と、JCPOAの履行によりP&I保険に派生する影響について、継続して協議してまいりました。
    2016年1月にJCPOAが履行された結果、以下の制裁が解除されました。
    (a) イラン関連取引とその取引に関する保険提供に影響を与えた核開発制限に関するEUの経済制裁(ただし、禁止が継続している取引及びSDNが関与する取引禁止は除く)また、
    (b) 米国以外の保険・再保険者に影響を与えた、核開発制限に関する米国の二次的制裁措置
    しかし、米国当局はJCPOAの下で在米再保険者による保険・再保険の提供を禁止する一次的制裁措置は解除しておりません。
  2. 保険の手配による解決策
    米国当局との協議において、国際グループは、グループ及びハイドラの再保険の仕組みに参加する在米再保険者への特例認可は、米国政府の政策上の利益であると一貫して主張してまいりました。今後数か月にわたり、国際グループは引続き上記仕組みへの参加に正式認可を確保することを目指し、米国当局と本件につき協議を続けてまいります。この正式認可こそが、船主のための完全で世界的なP&I保険カバーの実効性を確保するという課題に対する最も有効な長期的解決策となります。しかし、提案した認可による解決案は、米国当局に基本政策上の問題を呈したため、結果としてイラン関連の責任がどこでどのように発生した場合でもメンバーに適切で持続性と実効性のある保険カバーを提供できる迅速な解決策となりそうにありません。この協議の進展によっては、国際グループは来保険年度についても、グループ及びハイドラ再保険における在米再保険者について再検討することとなります。
    前回メンバーにお伝えした通り、それまでの間、国際グループはイランとの合法的取引を再開させるための暫定措置を模索しており、ブローカーの助けを得て、代替再保険の手当てが可能かどうかを調査してまいりました。この再保険は、国際グループ及びハイドラ再保険の仕組みの中で、これに参加している在米再保険者が、引続き米国一次的制裁措置の対象となっているために支払不可能であることから生じる回収不足の部分(shortfalls)に対応するためのものです。この再保険を提供するのは、米国外の再保険者に限定する必要があります。交渉した再保険者の主な懸念は、再保険プログラムへの参加が米国当局に不法な便宜供与又は一次制裁措置の意図的な迂回行為とみられるのではないか、あるいは風評問題が生じるのではないかということでした。
    OFACと多岐にわたり協議した末に、国際グループは、米国外の再保険者が参加しても問題ないとの確認と安心を取り付けることができました。さらに国際グループのブローカーの交渉により、この代替再保険(fall-back insurance)を契約するに至りました。
  3. 代替保険カバー 主な特徴
    本契約は、補償制度上の証書または保証状の下で生じたものであろうとなかろうと、P&I責任に関するカバーが対象で一年契約です。グループ超過再保険の第1、第2層において、米国一次的制裁措置の継続により、在米再保険者より回収不可能な部分をカバーするものです。
    重要なことは、一出来事について年間総額で7000万ユーロの限度額があり、一回の契約復元条項が付帯しているということです。この限度額は、現在の為替レートで換算すると、超過再保険の第1層、在米再保険者及びハイドラ再保険で構成される部分で、一出来事の責任総額である5億ドル相当額となります。また(CLC条約、船骸撤去条約及びTOPIA協定)で保障証明した一出来事のエクスポージャーに対応するに十分な額となると考えられます。一船舶が引き起こした事故により再保険金の回収が限度額まで到らない場合は、複数の少額クレームの集積にも総額7000万ユーロまで対応することができます。イラン関連のクレームで超過再保険・ハイドラ再保険に達するような過去最大級のロスについては、(ハイドラの年間累積免責額(AAD)をすでに全額適用した最悪のケースを想定した場合でも)この代替再保険でカバーされる対象額は、およそ2000万ユーロまでと見込んでいます。グループのブローカーは、てん補限度額や復元条項の上限増加の可能性を求め、今後も調査してまいります。
    代替再保険の主な特徴は、現在国際グループの追加プール協定の下で再保険回収できない場合にクラブ間でプールすべき「認定責任」(補償制度上の証書、つまりブルーカードや保証状に基づき生じた責任)に関する回収不足を補てんするための再保険を提供するだけでなく、現在メンバーの負担となっているその他「非認定責任」(衝突や財物損傷等)についても再保険を提供するということです。この責任については、この代替解決策の一部として、クラブてん補範囲内である限り、代替再保険からの回収が可能なことを条件にグループ内でプールすることが合意されました。
    しかし、この代替再保険のてん補限度額及び一度の復元条項(超過再保険契約では無制限復元条項)のため、複数のイラン関連の巨額クレームにより再保険金の限度度まで回収してしまうリスクや複数の少額クレームが保険契約限度額である1億4千万ユーロ(2 x 7000万ユーロ)まで集積するリスクがあります。それ故、この保険てん補は国際グループの超過再保険及びハイドラ再保険の仕組みによって現行可能な保険てん補と同等の代替策とはなりません。
    再保険を限度まで回収してしまう、又は、例えば新たな制裁や禁止事項が課せられるなど何等かの理由で回収不能になることが明らかになった場合には、各クラブはこの保険を再検討することに合意しています。この代替再保険には、署名した再保険者に将来、制裁や禁止事項が課せられた場合に適用する制裁条項が含まれています。
    国際グループはメンバーを最大限保護できるよう限度額や復元条項を増加させる可能性を引続き探ってまいります。しかし原則的にてん補と復元条項に限度があるため、もしこれが拡大されたとしても、この代替の解決策は一時的措置に過ぎません。米国当局との交渉は、遅くとも2017年には確実に最重要である長期的解決を図るべく努力してまいります。
    国際グループの全てのクラブが同様の内容のクラブ回覧を発行しています。 

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Staff Author

PI Club

Date2016/03/18