回覧02/22: P&I戦争危険特別担保、生化学兵器等追加担保及び 2019年再承認法により改正された2002年米国テロリズム危険保険法

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アウトライン

  • P&I戦争危険担保の限度額は2022年度も引き続き5億米ドルとなっています。
  • 生化学兵器等リスクは引き続き除外条項ですが、乗組員に関する船主責任及び訴訟関係費用については、3,000万米ドルを限度額として引続き追加の特別担保が可能です。
  • これら担保のある部分は、2015年再承認法(TRIPRA)および2019年再承認法(Public Law 116-94, 133 Stat. 2534)により改正された2002年米国テロリズム危険保険法の要件に従っています。

メンバー各位、

P&I戦争危険特別担保、生化学兵器等追加担保及び2019年再承認法により改正された2002年米国テロリズム危険保険法

P&I戦争危険特別担保

2022年2月7 日の理事会において、保険約款第5条E項ただし書に従いメンバーに提供しているP&I戦争危険特別担保の枠組みにつき検討が行なわれ、2022 年2月7日付理事会決議文“A”に従い、2022保険年度もメンバーに同担保を提供することを決議しました。

2022保険年度におけるP&I戦争危険特別担保の条件は、5億米ドルの担保限度額と、一船舶一事故につき免責金額を5万米ドルをとすることを含め、前保険年度と変更ありません。

これまでの保険年度と同様、P&I戦争危険特別担保の対象となるのは、保険約款第5条D項に規定した加入船舶の適正価額(上限を5億米ドルとみなす金額)、あるいは船舶戦争保険者から回収可能な金額のいずれか高い金額を超過するクレームのみとしています。

特別担保条件の全文は次の通りです。「本保険契約では、船舶戦争保険あるいは乗組員に関する船主責任特約の下で回収可能な金額を、超過する部分のクレーム金額を支払うものとする。ただし、当該船舶の適正価額を超える(当該クラブの加入条件により適用される)担保限度額、あるいは5億米ドルのいずれか低い金額(用船者加入船舶ではなく船主加入船舶に適用)までを限度額とし、さらに一出来事につき5万ドルを免責額とする。」

戦争リスクに関する保証状あるいは保険証券に基づきクラブが支払った場合、メンバーは標準的な船舶戦争保険の船主責任特約の下で回収された、もしくは回収が可能な金額となる範囲で当クラブに補償することになります。

生化学兵器等クレームに対する担保

理事会はまた、「生化学兵器等除外条項」によってP&I戦争危険特別担保から除外されているすべてのP&I責任に関して、乗組員のリスク及び訴訟関係費用について、3,000万米ドルの担保限度額とすることを含め、前保険年度と同様に生化学兵器等クレームを担保すると決議しました。

本担保に関するクレームで、2022保険年度のクラブのリテンション限度額である1,000万ドルを超えるクレームについては、引き続き国際グループ・クラブでプールされます。

本特別担保の条件は2022年2月7日付理事会決議文“B”に記載されています。主な条件は以下の通りです。

  1. 担保範囲は、グラウンド・アップ(つまりメンバー個々の免責額を超える金額)とし、一船舶一事故につき(あるいは一事故から発生する一連の出来事につき)3,000万米ドルまでを限度とします。
  2. 3,000万米ドルの担保限度額は、当該船舶の全利害関係者に対し、一船舶あたりの総額として適用されます。これは事故の利害関係者の数にかかわらず、また(例えば船主、用船者、再用船者等が)異なるP&Iクラブに加入しているか否かに関係ありません。
  3. この担保には、リスク総額が過大にならないよう、解除条項(24時間通告)を設けています。 
  4. 特定情勢不安定地域については、理事会の裁量により除外することができます。
  5. 本特別付保に対する追加保険料はありません。

担保に関する通知 - 2015年再承認法(TRIPRA)および2019年同再承認法(Public Law116-94, 133 Stat. 2534)により改正された2002年米国テロリズム危険保険法(TRIA)

米国テロリズム危険保険法(TRIA)を2027年12月31日まで7年間、再延長するための2019年テロリズム危険保険再承認法(Public Law116-94, 133 Stat. 2534) ("TRIPRA")が2019年12月20日に法制化されました。

理事会の決議に従い、メンバーに提供されるP&I戦争危険特別担保及び生化学兵器等追加担保のある部分は、2015年及び2019年の再承認法(TRIPRA)により改正された2002年米国テロリズム危険保険法(以下同法)の要件に従って作成されており、同法第102条1項において定義され、同法第103条c項の要件を満たす「テロ行為」により生じた損失を担保します。

「テロ行為」と認められた事柄から生じた損失のてん補金は、連邦法で定めるプログラムに基づき合衆国政府から一部回収できます。本プログラムでは、合衆国の支払う割合は、西暦2021年には、保険者がその免責金額を差引いて支払ったテロリズム損失てん補金の80%、西暦2022年にも80%となっています。

改正された同法も従来同様、政府の損害補償についてのトリガー(補償の適用条件)を規定しています。つまり、「テロ行為」と認められた事柄から生じた損害について、保険業界全体の総損失額が一定の金額、あるいはトリガー金額を超えなければ、保険会社は政府の損害補償を受けられません。西暦2020年から西暦2027年までのトリガー規定は2億米ドルです。 また、この規定は、同再承認法の年間プログラム期間内に総保険損失額が1,000億米ドルを超えた場合、政府はこの超過額の支払い義務はなく、いかなる保険会社も、免責適用後のてん補額が1,000億米ドルを超える部分については責任を負わないとしています。

この「テロ行為」担保のために追加保険料はかかりませんが、1加入トン当り0.25セントの保険料が同法に従ったこの合衆国リスクに割り当てられていると見なされています。

以上

UKP&Iクラブ 日本支店

詳細情報につきましてはNigel Carden (nigel.carden@thomasmiller.com) あるいは日本支店の担当者までお問合せください。

 

2022年度 理事会決議文“A”

保険約款第5条E項ただし書に基づくP&I戦争危険特別担保に係る2022年2月7日付理事会決議

保険約款第5条E項に従い、テロ行為を含む特定の戦争および同様の危険に対する担保が一般相互補償保険引受より除外されているにもかかわらず、これら特定の危険に対する特別担保が保険約款第5条E項ただし書の下で各船主の加入条件に従い提供されているが故に、また

2007年テロリズム危険保険プログラム再承認法および2015年テロリズム危険保険プログラム再承認法(TRIPRA)および2019年テロリズム危険保険プログラム再承認法(Public Law116-94号, 133 Stat. 2534) により更に改正された2002年米国テロリズム危険保険法(TRIA)(Public Law107-297号)が2027年12月31日までの間に起きる特定のテロ行為を起因とする保険損害について、参加保険会社に対し連邦政府が比例分配保証する時限立法を定めているが故に、また

TRIAにおいて定義されている「保険者」に該当する当クラブは、TRIAで定義されている「テロ行為」に対する担保を提供するよう義務付けられており、TRIAプログラムのもとでテロ行為と認定された行為により発生した損害について、西暦2020年から西暦2027年までは保険者控除額を超える部分の80%が、財務長官により補償されているが故に、また 

上記補償は、西暦2020年から西暦2027年までは、すべての保険者によるテロ行為に関連する損害総額が2億ドルを超えた場合にのみ適用されるが故に、また

当クラブのメンバーを代表して理事会がTRIAの定義するテロ行為に対する担保を特別担保より外し、一般相互補償保険引受け扱いとする事ができるか否かを検討したが、テロ行為は特別担保の対象とされる他の危険と同様、一般相互補償保険引受け業務には適さないと結論したが故に、また

TRIAで定義するテロ行為に対する担保の提供につき、特別担保のための相互補償保険または再保険担保なしに、TRIAで定める控除額と保有額に充当すべき追加保険料率に基づいて当クラブの最初の申し出に対し肯定的に応じたメンバーは皆無であったが故に、また

理事会は、テロ行為の危険を含むP&I戦争危険保険特別担保を本保険年度と同様に提供し、TRIAで定義する保険担保コストを引続き一加入トン当り米貨0.25セントと見積もる事を確認したが故に、

2022年2月20日グリニッジ標準時正午開始の年度について、保険約款第5条E項ただし書に従い、TRIAで定義するテロ行為の危険を含み、保険約款第5条E項の規定により担保から全く除外されている危険に対し、特別担保を当クラブのメンバーに提供する事を決議する。 書面による別段の合意がない限り、この担保は船主のその他すべての加入条件、並びに以下の諸条件に従うものとする。

  1. 担保する危険は当該加入証書および追約書に定める各船主の加入条件に従い、保険約款第2条に定めるところのものとする。ただし、テロ行為から生じた損害、損失または費用で、船主が招いたもの、あるいはTOPIA加盟者として責任のあるものは除く。
  2. 本特別担保は以下のいずれか高い金額を越えた場合に限られる。
    (a) 保険約款第5条D項で定める加入船舶の「適正価額」(本決議に限り5億米ドルを超えないものとする)あるいは
    (b) 戦争危険か否かにかかわらず、その他の保険証券の下で、当該クレームに関し回収可能な金額
    ただし、理事会はかかる超過額の範囲に該当するクレームの、全額または一部の支払いについて、船主がクラブから回収すべきと判断した理由を、その裁量により、開示することなく認める事ができる。
  3. この特別担保に適用される限度額は、下記のいずれか低い金額をもってその限度額とする。
    (a) 一船舶一事故、あるいは一事件から生じる一連の出来事につき5億米ドル、あるいは
    (b) 各メンバーの加入条件の下で当該クレームに適用される限度額、
    ただし、いずれかの人物あるいはその代理人により当クラブに加入する船舶が、その同一人物名義、あるいはその代理人あるいは他人の名義で、本決議文あるいは、かかるその他保険者による同様の保険提供によりてん補される損失、責任、あるいはそれに付随する出費および費用について、当クラブまたはプール協定に参加するその他の保険者により別々に付保されている場合は、かかるすべての損失、責任またはそれに付随する出費および費用に関する回収総額は、一船舶一事故あたり5億米ドルあるいは、各加入条件の下で当該クレームに適用される限度額を超えないものとし、当クラブが担保する各当事者に対する当クラブの責任は、5億米ドルあるいは各加入条件の下で当該クレームに適用される限度額のうち、当クラブおよびかかるすべての保険者から本来回収可能な保険金額の総額に対して、当クラブからかかる人物が本来回収できる最高額が占める割合、あるいはかかる人物個別の加入条件の下での保険金限度額のいずれか低い金額をもって限度額とする。
  4. この特別担保に含まれる危険は次の「化学兵器、生化学兵器、電磁兵器およびコンピュータ・ウィルス条項」に従う。
    「本条項は至上約款であり、本保険契約中他の約款でこれと矛盾するもののすべてに優先する。
    1. いかなる場合においても、また直接・間接を問わず、本保険は以下の事柄を原因とするか、誘引とするか、それらより発生した滅失、損傷、責任、費用を担保しない。
    1.1 いかなる化学兵器、生化学兵器または電磁兵器
    1.2 危害を加える手段としてのコンピュータ・ウィルスの使用あるいは操作
    1.3 上記第1.2項は、兵器またはミサイルの発射装置、誘導装置または点火装置のコンピュータ、コンピュータ・システムあるいは、コンピュータ・ソフトウェア・プログラムまたはその他いかなる電子システムの使用から生じた損失(ただし本契約の条件の下で担保される損失)の除外には適用しない」
  5. クラブの保険年度の開始前、開始時、または保険年度のいかなる時点においても、理事会はその裁量により、いかなる港湾、場所、国、地帯、地域(陸上、海上を問わず)をも、この特別担保により提供される保険から除外すると決定する事ができる。ただし、理事会が別途の決定をしない限り、当クラブの保険約款第41条に従い、メンバーにかかる決議を通知してから7日目の夜12時をもって、当該港湾、場所、国、地帯、地域についてこの特別担保は停止するものとする。理事会がその裁量により別途決定しない限り、かかる日以後は上記地域内での事件、事故、出来事から生じたいかなるクレームに関しても、それがどのようにして生じたかにかかわりなく、この特別約款に基づき、クラブから回収することはできない。
  6. 本特別約款は上記第5項に従い、通知がなされたか否かにかかわらず、下記の事柄により自動的に終了する。 
    (a) 以下の国家間において戦争(宣戦布告の有無にかかわらず)が勃発し、かつ本保険が戦争勃発から生じる滅失、損傷、責任または費用を除外する場合:連合王国、アメリカ合衆国、フランス、ロシア連邦、中華人民共和国
    (b) 現下において付保が認められている船舶につき、かかる船舶がその所有または使用において徴用される場合であって、本保険がかかる徴用から生じる滅失、損傷、責任または費用を除外する場合、
  7. 本保険の他のいかなる条件にもかかわらず、理事会はその裁量によりメンバー宛の7日前の通知をもってこの特別担保を解除する事ができる。 (このような担保の解除は、クラブが解除通知を発送した日の夜12時より7日が経過して発効する。) また、理事会はそのような解除通知の発送後いつでも、保険約款第5条E項ただし書に従い、理事会がその裁量で決定する条件と担保限度額をもって、特別担保の復活を決定することができる。

理事会決議文“B”

保険約款第5条E項ただし書に基づくP&I戦争危険特別担保に係る2022年2月7日付理事会追加決議

保険約款第5条E項に従いテロ行為を含む戦争および同様の危険に対する担保は、一般相互補償保険引受より除外されているにもかかわらず、同様の危険に対する特別担保が保険約款第5条E項ただし書、および、2022年2月7日付理事会決議文の下で各船主の加入条件に従い提供されているが故に、また

2022年2月7日付理事会決議により、メンバーに提供されているP&I戦争危険特別担保がその第4項に化学兵器、生化学兵器、電磁兵器およびコンピュータ・ウィルス除外条項を含むが故に; また

理事会はクラブがこの条項およびその他戦争保険船主責任特約等の同様の条項により除外された特定の責任、費用、および出費について、メンバーに追加担保を提供するべきであると決議したが故に、

2022年2月20日グリニッジ標準時正午に開始する年度につき、追加担保をメンバーに提供する事を決議する。書面による別段の合意がない限り、この担保は船主のその他すべての加入条件、ならびに以下の諸条件に従うものとし、以下に記載する条件および除外条項の下で、追加保険料を徴収することなく提供するものとする。

  1. 本追加決議の下で担保される危険は以下のメンバーの責任を対象とする。
    (a) 当クラブ保険約款第2条 第2、3、4、5、6、7項に規定する船員の傷害、疾病及び死亡の結果から生じる損害賠償または補償、費用および出費の支払い。(但し、送還及び代人派遣費用、難破失業補償および離路費用を含む)
    (b) 保険約款第2条第24項に基づき理事会の裁量により回収可能な責任、費用、出費および危険を除き、当クラブにより担保される責任あるいは危険を回避あるいは減少させる事を唯一の目的として生じる保険約款第2条第25条B項により規定される訴訟関係費用。ただし、下記のいずれかに直接的あるいは間接的に起因する責任、費用、損失および出費が除外されていることを唯一の理由としてそれら責任、損害、補償、費用および出費がP&I戦争危険特別担保あるいは同様の危険を担保する一般戦争保険証券の下で回収されない場合に限る。
    (a) いかなる化学兵器、生物学兵器、生化学兵器あるいは電磁兵器
    (b) いかなるコンピュータ、コンピュータ・システム、コンピュータ・ソフトウェア・プログラム、悪質な信号、コンピュータ・ウィルスあるいはプロセスあるいはその他いかなる電子システム等が危害を及す手段として使用、操作されること。ただし、下記の事柄から生じる責任、費用、損失、および出費を除く
    (i) 爆発物、または爆発を引き起こす方法またはその装置
    (ii) 積荷が化学兵器または生化学兵器の場合は別として、加入船舶またはその積荷が危害を加えるために使用されること。
    (iii) いかなるコンピュータ、コンピュータ・システムまたはコンピュータ・ソフトウェア・プログラムあるいはその他いかなる電子システムが、いかなる兵器またはミサイルの発射装置、誘導装置、点火装置等に使用されること。
  2. 除外地域
    (a) 理事会の裁量による別段の決定がある場合を除き、下記に特定する港湾、場所、地帯あるいは地域で、あるいは特定の期間中に発生した事故、事件あるいは出来事を、直接的あるいは間接的な起因、誘発または原因として生じた責任、費用、損失または出費は回収できない。
    (b) 保険年度の開始前、開始時、または保険年度のいかなる時点においても、理事会はその裁量により、上記2項aで特定したいかなる港湾、場所、国、地域、期間をもメンバーに通知する事により、理事会の指定する日時以降に変更、改定、延長、追加する事ができる。 ただし、これは通知日の夜12時から24時間以上経過した後とする。
  3. 解除
    本担保は、メンバーに通知する事により、理事会の指定する日時以降に、理事会により解除することができる。ただし、これは通知日の夜12時から24時間以上経過した後とする。
  4. 責任限度額
    (a) 本条項4(b)を条件として本追加担保に基づくクラブの責任限度額は一船舶一事故、あるいは一つの出来事から発生した一連の事故について総額で3,000万米ドルとする。
    (b) 一船舶について、本条項で提供する生化学兵器等追加担保を当クラブ、あるいはプール協定に参加するその他保険者に一以上の加入契約がある場合、当該加入契約におけるすべての責任、費用、損失および出費についての回収総額は、本条項4(a)に規定する金額を超えない。 また、当該加入契約に対するクラブの責任は、当クラブおよびその他保険者から回収可能なすべてのクレームにかかわる保険金総額に対する、当該加入契約に基づく保険金額の割合を限度とする。
  5. 免責金額
    2022年2月7日付の理事会決議文第2項の規定にかかわらず、本追加担保に適用される免責金額は、保険約款および個々のメンバーの加入証明書または追約書において規定する当該リスクに適用される免責額とする。
  6. 準拠法
    本担保は英国法を準拠法とする。

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Staff Author

PI Club

Date2022/02/28