回覧13/22: EU の対ロシア制裁-石炭・肥料を含む特定のロシア貨物輸送についてのFAQ更新

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2022年9月19日、EUはFAQを改訂し、石炭や一部の種類の肥料(およびそれらに関連する保険)を含むロシアからの特定の貨物の輸送がEU域外に向けたものである場合は、その輸送は、理事会規則(EU)833/2014の下で禁止されないことを明確にしました。2022年10月7日付、EUによるFAQ更新は下記のとおりです。

2022年10月7日付、EUによるFAQ更新

2. EU企業による、理事会規則833/2014の附属書XVII、XXI及びXXIIにて記載された物品の移送は、物品が第三国向けであり、EU域内を通過しない場合は許可されますか? 最終更新日:2022年10月7日

いいえ。理事会規則833/2014の第3g条、第3i条および第3j条は、附属書XVII、XXIおよびXXII記載の物品がロシアを原産地とする、またはロシアから輸出される場合、物品の購入、輸入および移送を直接・間接問わず禁止しています。移送は物品の最終目的地を問わず禁止されていますが、輸入の禁止は、EU域内へ持ち込まれる場合に適用されます。移送については、理事会規則833/2014の第13条の範囲内である限り、物品がEU域内に向けたものであるかどうかは問われません。これは、ロシアの経済基盤を弱体化し、ロシア製品を主要マーケットから駆逐し、戦争に向けるロシアの資力を著しく弱める、という制裁の目的に沿うものです。それ以外の解釈が行われた場合は、制裁目的から大きく逸脱し、重大な法の抜け穴を作ることにつながります。

しかしEUは、対ロシア制裁が第三国(とりわけ発展途上国)の食糧およびエネルギー確保に影響を及ぼす場合は、制裁を回避することを認めています。理事会規則2022/1269の詳説11および12に明記された方針に従い、附属書XXIおよびXXII記載の特定の物品の第三国への移送は、「世界の食糧・エネルギー不足を防ぐこと」および第三国において「食料・エネルギー不足によって引き起こされ得るマイナス効果を防ぐこと」を目的として許可されるべきものです。

エネルギー確保の目的でEUの事業者が行う、特定のエネルギー関連物品の第三国への移送および、その移送に関連した融資・金融支援は、認められるべきです。貨物のサプライチェーンと利用可能な輸送手段を考慮し、エネルギー確保を目的とする物品の移送は、EU域内を経由せずに出発地から到着地(例えば、ロシアから第三国)へ運ばれる場合に限って許可されるべきです。関連する物品は以下のとおりです。

  • 附属書XXI記載のCNコード4401(燃料用木材)および4402(木炭)に該当するエネルギー物品
  • 附属書XXII記載のすべての物品(石炭およびその関連製品)

理事会規則2022/1269の詳説12は、EUによる対ロシア制裁が「第三国とロシアの間の、小麦や肥料を含む農産物や食品の貿易をいかなる形であっても制裁対象としない」ことを明らかにしています。よって、EUの事業者が行う、またはEU域内を経由(通過を含む)する第三国への以下の物品の移送、およびその移送に関連する融資・金融支援は、いかなる形であっても妨げられるべきではないとしています。

  • 附属書XXIに記載のCNコード310420、310520、310560、ex31059020およびex31059080に該当する肥料
  • 附属書XXIに記載のCNコード2303に該当する動物用飼料

上記は、カリーニングラードへの/からの貨物の通過に関するガイダンスに影響を与えるものではなく、また加盟国が自国の国家安全保障上の利益を守るために必要な措置を講じる能力を損なうものではありません。

4. 理事会規則833/2014の第3g条、第3i条および第3j条にて禁止された、附属書XVII、XXIまたはXXIIに記載の物品・製品の第三国への輸送または移送に関連するサービス(例:仲介または保険を含む金融支援)の範囲を教えてください。最終更新日:2022年10月7日

附属書XVII、XXIおよびXXIIに記載の物品または製品の第三国への輸送または移送に対し、EU事業者が保険、仲介サービス、その他の融資・金融支援を提供することは禁止されています。これらの物品または製品の移送を行うのがEU事業者、非EU事業者、どちらの場合であっても、EU事業者が当該輸送に対する支援を提供した場合、支援提供者は引き続きこの禁止措置に拘束されます。

しかしEUは、対ロシア制裁が第三国(とりわけ発展途上国)の食糧およびエネルギー確保に影響を及ぼす場合は、制裁を回避することを認めています。理事会規則2022/1269の詳説11および12に明記された方針に従い、附属書XXIおよびXXII記載の特定の物品の第三国への移送は、「世界の食糧・エネルギー不足を防ぐこと」および第三国における「食料・エネルギー不足によって引き起こされ得るマイナス効果を防ぐこと」を目的として許可されるべきものです。

エネルギー確保の目的でEUの事業者が行う、特定のエネルギー関連物品の第三国への移送および、その移送に関連した融資・金融支援は、認められるべきです。貨物のサプライチェーンと利用可能な輸送手段を考慮し、エネルギー確保を目的とする物品の移送は、EU域内を経由せずに出発地から到着地(例えば、ロシアから第三国)へ運ばれる場合に限って許可されるべきです。関連する物品は以下のとおりです。

  • 附属書XXIに記載のCNコード4401(燃料用木材)および4402(木炭)に該当するエネルギー物品
  • 附属書XXIIに記載のすべての物品(石炭およびその関連製品)

理事会規則2022/1269の詳説12は、EUによる対ロシア制裁が「第三国とロシアの間の、小麦や肥料を含む農産物や食品の貿易をいかなる形であっても制裁対象としない」ことを明らかにしています。よって、EUの事業者が行う、またはEU域内を経由(通過を含む)する第三国への以下の物品の移送、およびその移送に関連する融資・金融支援は、いかなる形であっても妨げられるべきではないとしています。

  • 附属書XXIに記載のCNコード310420、310520、310560、ex31059020およびex31059080に該当する肥料
  • 附属書XXIに記載のCNコード2303に該当する動物用飼料

上記は、カリーニングラードへの/からの貨物の通過に関するガイダンスに影響を与えるものではなく、また加盟国が自国の国家安全保障上の利益を守るために必要な措置を講じる能力を損なうものではありません。

メンバーの皆様にご留意いただきたい点は下記のとおりです。

  • 今回更新されたFAQでは、ロシア原産の木材・木炭および石炭製品のEU域外への輸送(およびその輸送に関連する保険)は、EU域内を通過しない場合にのみ許可されるのに対し、肥料および動物用飼料のEU域外への輸送(およびその輸送に関連する保険)は、EU域内の通過を伴う場合であっても許可されるとしています。
  • 許可される木材製品の範囲が狭められ、CNコード44の全製品から、CNコード4401(燃料用木材)と4402(木炭)のみが許可されています。
  • CNコードex2901および2902に該当する炭化水素、CNコード2523および6810に該当するセメント製品は、許可製品のリストから除外されました。

2022年9月19日付、EUによって更新されたFAQは下記のとおりです。

2022年9月19日、EUは「よくある質問(FAQ)」をさらに改訂し、ロシアから輸出される石炭やその他固形化石燃料、特定種類の肥料を含む特定の貨物の運送に関する規定の適用について明確化が図られました。

EUが8月に発表した内容と異なり、今回のFAQは、石炭および理事会規則833/2014の附属書XXIに記載された特定の物品は、第三国向けである場合、その輸送(および関連する保険の提供)は実際には禁止されていないことを明確にしています。改訂されたFAQの該当箇所は以下のとおりです。

2. 物品が第三国向けで、かつEU領域を通過しない場合、EU事業者が理事会規則833/2014の附属書XVII、XXI及びXXIIに記載された物品を移送することは許可されますか?最終更新日:2022年9月19日

いいえ。理事会規則833/2014の第3g条、第3i条、第3jで条は、附属書XVII、XXI、XXIIに記載された物品がロシアを原産地とする場合、またはロシアから輸出される場合に、当該物品の直接的または間接的な購入、輸入、移送は禁止されます。移送の禁止は物品の最終目的地に関係なく適用されますが、輸入の禁止は本来、「EU内に」移動するものに適用されます。移送が理事会規則833/2014第13条の適用範囲内であれば、物品がEU向けであるかどうかは関係ありません。これは、ロシアの経済基盤を著しく弱体化させ、ロシア製品の重要な市場を奪い、戦争遂行能力を大幅に削減するという制裁の目的をサポートしています。それ以外の解釈では、禁止の目的を大きく損ない、重大な法の抜け穴を作ることになります。

しかし、EUはその制裁が世界中の第三国、特に後発開発途上国の食糧やエネルギーの安全保障に影響を与えないようにすることを約束しています。理事会規則2022/1269の詳説11および12に明記されているこのコミットメントに照らし、附属書XXIおよびXXIIに記載された特定の物品の第三国への移送は、「世界の食糧・エネルギー不安に立ち向かうため」および第三国において「そのために起こりうる悪影響を回避するため」に許可されるべきです。これは、EUの事業者が行う、あるいは(積み替えを含み)EU域内を経由して行う、下記の物品の第三国への移送およびその移送に関連した資金調達や金融支援に適用されます。

  • 附属書XXIに記載された、CNコード310420、310520、310560、ex31059020およびex31059080に該当する肥料
  • 附属書XXIに記載された、CNコード2303に該当する動物用飼料
  • 附属書XXIに記載された、CNコードex2901および2902に該当する特定の炭化水素
  • 附属書XXIに記載された、CNコード44(木材)、2523および6810(セメント製品)に該当する必需品
  • 附属書XXIIに記載されたすべての品目(石炭および関連製品)

4. 理事会規則833/2014の第3g条、第3i条および第3j条における、附属書XVII、XXIまたはXXIIに記載された物品あるいは製品の、第三国への輸送または移送に関連するサービス(例えば、仲介または保険を含む金融支援)の禁止範囲はどのようなものですか?最終更新日:2022年9月19日

附属書XVII、XXI、XXIIに記載された物品または製品の第三国への輸送または移送に対して、EU事業者が保険、仲介サービス、その他の融資または金融支援を提供することは禁止されています。これらの物品または製品の移送が、EUあるいはEU以外の事業者によって行われるかにかかわらず、当該移送に関する支援の提供者がEU事業者である場合は、引き続き禁止措置が適用されます。

しかし、EUはその制裁が世界中の第三国、特に後発開発途上国の食糧やエネルギーの安全保障に影響を与えないようにすることを約束しています。理事会規則2022/1269の詳説11および12に明記されているこのコミットメントに照らし、附属書XXIおよびXXIIに記載された特定の物品の第三国への移送は、「世界の食糧・エネルギー不安に立ち向かうため」および第三国において「そのために起こりうる悪影響を回避するため」に許可されるべきです。これは、EUの事業者が行う、あるいは(積み替えを含み)EU域内を経由して行う下記の物品の第三国への移送、およびそれに関連した資金調達や金融支援に適用されます。

  • 附属書XXIに記載された、CNコード310420、310520、310560、ex31059020およびex31059080に該当する肥料
  • 附属書XXIに記載された、CNコード2303に該当する動物用飼料
  • 附属書XXIに記載された、CNコードex2901および2902に該当する特定の炭化水素
  • 附属書XXIに記載された、CNコード44(木材)、2523および6810(セメント製品)に該当する必需品
  • 附属書XXIIに記載されたすべての品目(石炭および関連製品) 

8月12日発行、対ロシア制裁について初めて述べたクラブ回覧の内容は以下のとおりです。

2022年8月10日、欧州連合(EU)は、ロシアから輸出される石炭やその他固形化石燃料、特定種類の肥料を含む特定の貨物の運送に関する規定について明確化するため、「よくある質問(FAQ)」を更新しました。本回覧でご案内するとおり、今回の明確化は、当該貨物の運送を行うEU内の事業者だけではなく、EU内外にかかわらず、当該貨物運送を行うあらゆる事業者に対する保険の提供に大きな影響を与えますのでご注意ください。

2022年4月8日、EUは理事会規則 833/2014を改正する規則 2022/576を公表しました。これには、下記の条項が含まれています。 

第3i条

1. 附属書XXIに記載のEU向け物品で、ロシアに多大な利益をもたらし、ウクライナ情勢を不安定にする行為を可能にするものについて、ロシア原産、またはロシアから輸出される場合、直接的または間接的に購入、輸入または移送することを禁止する。

2. 以下の行為を禁止する。

(a) 第1項の禁止事項に関連して、第1項が対象とする商品および技術ならびに、これら商品・技術の提供、製造、保守、使用に関する技術支援、仲介サービスまたはその他役務を、直接または間接的に提供すること。

(b) 第1項の禁止事項に関連して、第1項が対象とする商品および技術の購入、輸入、移送または関連する技術支援、仲介サービスもしくはその他役務の提供のために、直接的または間接的に融資または金融支援を行うこと。

3. 第1項および第2項の禁止事項は、2022年4月9日以前に締結された契約、または当該契約の履行に必要な付随契約の2022年7月10日までの履行には適用されない。

4. 2022年7月10日現在、第1項および第2項の禁止事項は、以下の物品の輸入、購入もしくは輸送またはEUへの輸入に必要な、関連の技術支援もしくは金融支援には適用されない。

(a) CN 3104 20の塩化カリウムを、7月10日から翌年7月9日までの間に837,570トン。

(b) 附属書 XXIに記載されたその他製品 (CN 3105 20、3105 60および3105 90)を、7月10日から翌年7月9日までの間に1,577,807トン。

5. 第4項に定める輸入数量の割当は、欧州委員会施行規則(EU)2015/2447(*)の第49条から第54条に規定する関税率割当の管理システムに従って、欧州委員会と加盟国によって管理される。

第3j条

1. 附属書XXIIに掲げる石炭およびその他固形化石燃料(ロシア原産またはロシアから輸出されるもの)を、EUへ向けて直接的または間接的に購入、輸入または移送することを禁止する。

2. 以下の行為を禁止する。

(a) 第1項の禁止事項に関連して、第1項が対象とする商品および技術ならびにこれら商品・技術の提供、製造、保守、使用に関する技術支援、仲介サービスまたはその他役務を、直接的または間接的に提供すること。

(b) 第1項の禁止事項に関連して、第1項が対象とする商品および技術の購入、輸入、移送または関連する技術支援、仲介サービスもしくはその他役務の提供のために、融資または金融支援を、直接的または間接的に行うこと。

3. 第1項および第2項の禁止事項は、2022年4月9日以前に締結された契約または当該契約の履行に必要な付随契約の2022年8月10日までの履行には適用されない。

上記の附属書XXIと附属書XXIIは、理事会規則 2022/576に記載されています。

(ロシアが主要生産国である)特定の種類の肥料は、ロシアに大きな収入をもたらす商品として附属書XXIのリストに記載されており、第3i条の禁止事項の対象となることに留意する必要があります。

各クラブとそのアドバイザーは、第3i条と第3j条を普通に読めば、ロシアの肥料、石炭、その他固形化石燃料の輸送に関する禁止事項は、EUへの輸入にのみ関係し、EU以外の目的地への輸送には関係しないことは明らかだと考えていました。これら規定は、4月9日以前に締結された売買契約については、いかなる場合でも、それぞれ2022年7月10日までと2022年8月10日までの段階的縮小期間(Wind-down period)が認められていました。

EUは4月17日と6月14日にFAQを公表しましたが、EU事業者によるこれらのロシア貨物の購入はEUの域内向けか域外向けかを問わず禁止されたものの、輸送については触れていませんでした。

しかし、8月10日、つまり石炭とその他固形化石燃料貨物に関する段階的縮小期間が終了したその日に、追加のFAQが公表され、第3i条・第3j条の文言について、これまでの業界の解釈に大きな疑問が投げかけられました。最新のFAQ全文は、こちらからご覧いただけます。このFAQでは、これら条項の禁止事項が、実際には当該貨物のEU域内への輸送だけでなく、ロシアから他国への輸送にも影響し得ることを示唆しています。

そのため、国際P&Iグループ(IG)は、この最新のFAQの意味、EUの禁止事項の範囲、メンバーの皆様と各クラブへの潜在的影響について、欧州委員会に直ちに説明を求めました。

EU は IG に対し、条文における「輸入」は 確かにEU域内への輸入に限定されているが、直接的または間接的な移送に関するその他の制限は、EU域外向けの移送にも同様に適用されることを意図していると明らかにしました。従いまして、EU域内、域外を問わず、EUの事業者が、ロシアの肥料、石炭、その他固形化石燃料の輸送に関与することは、EU制裁に違反することになると考えられます。

さらに、欧州委員会はIGに対し、第3i条と第3j条の(2)(b)に記載された「金融支援」の提供の禁止には、保険・再保険サービスが含まれるため、EUの管轄下にあるいかなる事業者も、仕向地にかかわらず、ロシアの肥料、石炭およびその他固形化石燃料の輸送に対し保険・再保険を提供できないことを明確にしました。

IGを構成する各クラブの大半はEUの管轄下にあります。EU域外に拠点を置くクラブを含む、すべてのIGクラブは、EU域内に拠点を置く再保険者に大きく依存した再保険プログラムを利用しています。IG加盟クラブのいずれかが、これらの制裁措置により、プールクレームの分担金の拠出を禁止された場合、各クラブの制裁関連規定に従い、この不足分はメンバーにご負担いただくことになります。この原則は、1億米ドル以上のクレームについて、IG再保険プログラムに参加しているEUの再保険者が制裁措置により支払いを禁止された場合にも適用されます。

EUは、この最新の FAQに対応できるよう、業界に対しさらなる段階的縮小期間を認める意向を示していないため、禁止規定は、これらの貨物の輸送に従事するメンバーの皆様へ即座に影響を及ぼすこととなります。ご質問等がある場合は、当クラブ担当者へお問合せください。

また、EUの制裁措置は、EU管轄外には適用されないこともご承知おきください。EU規則の第13条では、適用範囲を以下のように規定しています。

  1. EU領域内
  2. EU加盟国の管轄下にある航空機または船舶上
  3. EU領域の内外を問わず、EU加盟国の国民であるあらゆる個人
  4. EU領域の内外を問わず、EU加盟国の法律に基づいて設立された法人、事業体または団体
  5. EU域内で事業の全部または一部業を営む法人、事業体または団体 

国際グループのすべてのクラブは同様の回覧を発行しています。

Staff Author

PI Club

Date2022/11/07