QCR Autumn 2021: Sameco S.A. v Shandong Chenxi Cereals and Oils Co., Ltd (The M/V "Adelante") (2020) Lu Min Zhong No.1573
大豆の損害賠償請求-中国控訴院は、船舶の所有者と荷受人の間で責任を配分
2017年4月11日、ブラジル産大豆を積載したばら積み貨物船M / V Adelanteがブラジルを出港し、中国に向かいました。 4月7日から10日までの積荷作業は、雨のため4回中断されました。船長は、荷送人の要請により、大豆が外観上良好な状態で本船に積載されたことを示す6つのクリーンBL(船荷証券)を発行しました。船は5月25日に揚荷港である中国の日照市に到着し、直ちにN/R(荷役準備完了通知)を出しました。荷送人の事情により、荷受人は遅れること6月16日に新しい信用状を開かなければならず、銀行によりBL受け入れ後、7月6日に6つのオリジナルBLを取得しました。貨物検査の申請は、7月13日に輸入動植物の検疫許可を受け取った後、7月17日に提出されました。船は、錨地で3か月待機後、8月22日に着岸することができました。
輸入手続きの完了が遅れ着岸が遅れた結果、貨物の揚荷役が遅れました。 揚荷役中、貨物は固まり、カビが生え、さまざま程度に黒ずんでいるのが見つかりました。 その結果、荷受人は、運送人である船主に対して約1,800万米ドルの損害賠償を求めて中国で訴訟を開始しました。
第一審裁判所の判決
当初、裁判所は、貨物の損傷の原因は複数であり、船主と荷受人の両者に起因すると判断しました。 原因には、雨天における不適切な積み込み作業、航海中および錨泊時に実施された不適切な換気対策、および損害軽減策の失敗が含まれていました。 船主は、貨物の損傷に対して70%の責任を負うことになりました。 船主の主張、すなわち、貨物の積込み、取り扱い、積み付け、運送、保管、および管理を「適切かつ慎重に」行う義務を果たしたこと、および運送品の固有の瑕疵から生じた損害であるという主張は、第一審裁判所には受入られませんでした。 これにより船主は山東省高等人民法院(「控訴院」)に控訴しました。
控訴院の判決
中国海事法第48条は、「運送人は、運送品を適切かつ慎重に積込み、移動、積み付け、運送、保管、管理、および揚荷しなければならない。」 と規定しています。したがって、控訴院は、船主が貨物の損害について責任を負うかどうかの問題を次の3つの側面から再検討しました。
- 貨物が運送人によって「適切かつ注意深く」積み込まれたかどうか。
- 船主が航海中に貨物の管理をする義務を果たしたかどうか。
- 貨物損傷の他の原因、すなわち、高温での錨地における長時間待機及び揚荷の遅延。
裁判所は、船主が貨物を適切かつ慎重に積載しなかったという荷受人の主張を却下し、代わりに、船主が貨物の積載に十分な注意を尽くし、積載中の雨/濡損を回避するための適切な措置を講じたと認定しました。 これらの調査結果は、船主が新しい証拠として提出した船舶の航海日誌からの抜粋に基づいています。
しかしながら、裁判所は、海運業界で標準として受け入れられる適切な換気作業を実施していなかったため、船主が貨物の適切な管理をしなかったと認定しました。 船主は船倉内の温度テストを1日1回しか実施しておらず、不十分でした。 さらに、「荷役日誌-貨物倉の温度と換気」は、本船の航海日誌の換気記録と矛盾していることが判明しました。
それにもかかわらず、裁判所は、遅延が損害の主な原因であると認定しました。本船は妥当な期日内に揚荷港に到着しましたが、到着後、荷受人が輸入と税関の手続きを適時に完了できなかったため、暑い季節に錨地で100日近く待たなければなりませんでした。裁判所は、船主の専門家の意見に基づいて、ハッチカバーを開くことによる自然換気に関係なく、船倉の中央部と底部での熱による損傷は避けられないと認めました。したがって、裁判所は、貨物の損傷は、船主側の貨物の取り扱いに関する不作為の結果ではないと判断しました。それは、輸入手続きを適時に完了することに関し、荷受人が行ったこと、またはむしろ失敗したことの結果でした。裁判所はまた、船主が錨地で待機している間、損失を軽減するために船内の貨物を処分する能力がないことを認めました。したがって、控訴院は第一審裁判所の判決を覆し、船主の責任を請求額の30%に引き下げました。
コメント
本件における船主と荷受人の間の貨物損害に対する控訴院の責任の配分は、特に荷受人の過失または怠慢に起因する貨物の揚荷役の遅れを伴う場合、今後同様の結果を期待させます。
錨地における貨物の自然換気は、貨物損傷を防ぐには限界があり、したがって貨物損傷は船主側の貨物管理の怠慢または失敗の結果ではなかったという裁判所による見解は、 船主にとって重要なものです。
同様に重要なのは、船舶が錨泊している間、損失を軽減する目的のために、船主には貨物を処分する手段がなかったという裁判所の見解です。
しかし、荷受人は、中国の最高裁判所に再審の申立てをしました。 UK P&Iクラブは、追ってその裁判の結果について報告します。