QCR Summer 2020-1: Sanchez対Smart Fabricators LLC事件

米国第5巡回区控訴院は、ジョーンズ法上の船員の地位について分析した。

米国第5巡回区控訴院は、近時のSanchez対Smart Fabricators of Texas LLC事件判決(5th Cir. March 11, 2020)において、テキサス南部地区裁判所の決定を検討し、ジョーンズ法上の船員の地位の適用範囲について、判示しました。地区裁判所は、ジャッキ・アップされた掘削船(offshore drilling rig)の船上のパイプに躓いて傷害を負った溶接工は、最高裁判所の判示した、船員の地位に関する2種類のテストに基づき、ジョーンズ法上の船員ではない、と判示しました。

被用者であるSanchez氏は、その使用者を相手取り、州裁判所に対し、ジョーンズ法に基づいて、過失に基づく損害賠償請求訴訟を提起しました。使用者は、Sanchez氏は、最高裁判所が定立した船員の地位の要件に該当しないことを根拠として、本件を連邦裁判所に移送することを求めました。元来、州裁判所に提起されたジョーンズ法に基づく請求は、その傷害を負った被用者が船員とみなされる場合には、連邦裁判所に移送されません。そこで、Sanchez氏は、本件を州裁判所に留めることを求める申立てを行いましたが、上記の地区裁判所は、Sanchez氏は船員の要件を満たしていないとする使用者の意見を支持し、本件を同裁判所に留めることを拒否しました。その後、地区裁判所はまた、同様の根拠に基づき、使用者を勝訴させる略式判決を下しました。

最高裁が示した船員の地位に関するテストの重要な点は、被用者が「定期的に海上の危険に接しているか否か」という点です。この点は、以下の2種類のテストに基づき判断されます。1)被用者の職務が「船舶の機能に貢献しているか、又は、その任務の完成に貢献しているか否か」、及び、2)被用者が船舶、又は、船舶のグループとの間において、「その性質、及び、期間の双方の点において、実質的な」関係を有していたか否か、というテストです。後者、第2のテストは、「被用者の職務によりその者が海に赴くことになるか否か」という点に着目するものです。

第5巡回区裁判所は、Sanchez氏の溶接工としての職務は、ドリル・リグに付与された任務に貢献したから、第1のテストに合致するとする地区裁判所の判断に合意しました。第5巡回区裁判所は、次に、地区裁判所が、Sanchez氏の船舶との関係は、性質、又は、期間の点において実質的なものではないとした、第2のテストを検討しました。地区裁判所は、前の第5巡回区裁判所による判決(Naquin対Elevating Boats, LLC事件(744 F.3d 927 (5th Cir. 2014)))と本件とを区別しました。Naquin事件では、負傷した被用者は、船舶の修理監督者であり、その時間の約70%を、係船され、ドックに入り、また、上船されたリフト・ボートにおいて費やしました。その職務は、船舶のクレーンやジャッキを操作することを含むものでした。これらの事実に基づき、Naquin事件では、地区裁判所は、原告はジョーンズ法上の船員であるとして、2百万ドルの請求権を認めました。控訴審において、使用者は、原告はめったに夜を船上で過ごしていないこと、また、原告が船上にいる際も、本船はドックに入っており、ほとんど海上に出ていなかったことを根拠として、船員としての地位を認めることができない、と主張しました。第5巡回区裁判所は、これらの主張を否定し、陸の近くで職務を遂行したとしても、ない、原告は、「海上の作業環境の危険」に晒されているといえる、と判示しました。

Sanchez事件において、地区裁判所は、同事件では、原告が作業を行っていた掘削船は、その作業全体の67日中の65日、海面からジャッキ・アップされ、「リグの本体が海水から取り上げられ、波、潮その他の海水の動きに左右されない状態」にあったから、Naquin事件とは区別されるべきである、と判示しました。また、この下級審裁判所は、Sanchez氏が船上にあって本船が海上にあったのは、本船が曳船されていた4日間のみであり、その際、同氏は、船員ではなく、旅客として扱われていたことは重要である、と判示しました。第5巡回区裁判所は、これらの事実認定を肯定し、Sanchez氏がジョーンズ法上の船員でないとするその判決も肯定しました。

コメント

Sanchez事件判決は、裁判所は、ジョーンズ法に基づく請求においては、船員の地位を決定するために、ケース・バイ・ケースで、事実を厳密に検討するものであること、また、その決定には明確なルールがないことを示しています。

以上

和訳: 田中庸介 (弁護士法人 田中法律事務所 代表社員弁護士)

 

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PI Club

Date2020/09/23