QLU Spring 2017 May-2:英国商事裁判所は、ヘーグ・ルール上のパッケージ・リミテーションは、ばら積み貨物には適用されないことを明示しました。

The "Aqasia" [2016] EWHC 2514 (Comm)事実:

「2,000トンのばら積みの魚油。5%の増減は傭船者の選択」と記述された貨物が、タンカーAqasia号の船上で損傷を受けました。ディスポーネント・オーナー(「船主」)は、第4条第5項の責任制限条項により、その責任を、54,730.90ポンド(すなわち、損傷貨物の1トン当たり100ポンド)に制限することを求めました。

これは、制限されない場合の責任、367,836米ドルに対応します。

船主は、当事者は、ばら積み貨物が唯一、意図されたタイプの貨物である傭船契約にヘーグ・ルールを摂取させており、その第4条をばら積み貨物に適用することを明らかに意図していたといえるから、魚油の各トンが責任を制限する「単位」である、と主張しました。

裁判所は、船主は、第4条に規定されている責任制限以上のものに依拠することはできず、従って、解釈の問題として、第4条で用いられている「単位」がばら積み貨物に適用されないものと認められる場合には、運送契約がばら積み貨物に関するものであるからといって、その意義を変更することはできない、と判示して、船主の主張を否定しました。

裁判所は、さらに、ヘーグ・ルールにおける「単位」は、船積みのための物理的な単位(例えば、箱やパッケージ)のみを意味し、計測のための単位(キログラムやトン)や、慣例的な運賃単位を意味しえない、と判示しました。

重量制の責任制限は、ヴィスビー・プロトコールにより導入されました。ヘーグ・ヴィスビー・ルール第4条第5項(a)は、「.運送人、又は、船舶は、貨物に対する、又は、貨物に関連する損傷について、1包又は1単位当たり666.67計算単位、若しくは、損傷した貨物の総量について1キログラム当たり2計算単位のいずれか大きい方を超えて、責任を負わない。」と規定しています。

商事裁判所は、ヘーグ・ルールにおける「単位」は、物理的単位(例えば、箱やパッケージ)のみを意味し、計測のための単位(キログラムやトン)、又は、慣例上の運賃単位を意味しない、と判示しました。

ヘーグ・ルールの体系におけるパッケージ・リミテーションは、ばら積み貨物にには適用されません。ばら積み貨物が、(ヘーグ・ヴィスビー・ルールを採用する国ではなく)ヘーグ・ルールを採用する国から運ばれた場合には、船主は、パッケージ・リミテーションによることはできないことに、注意すべきです。船主は、トン制責任制限条約(IMOの海事債権に対する責任制限に関する条約(1976年))により、責任を制限することができますが、契約の問題として、船荷証券にヘーグ・ヴィスビー・ルールが摂取されていることを確保すべきでしょう。船荷証券の表面に、貨物のトン数が、ヘーグ・ルール第4条第5項にいう単位となる、という条項を挿入することは、意図する効果を発生させないでしょう。英国法上、船荷証券上の記述に注目するだけでは、十分ではありません。ヘーグ・ルールのパッケージ・リミテーションが適用されるためには、貨物が分別され、又は、実際のパッケージ又は単位に詰められていることが必要です。

実務上はまれでしょうが、荷送人は、貨物の性質や価値を明示して、それを船荷証券に記載すること(第4条第5項(a))により、パッケージ・リミテーションを回避することもあるでしょう。但し、左の価値は、貨物の真の価値でなければなりません。(h)号の下では、もし、貨物の価値が意図的に誤った申告がなされた場合には、運送人は、貨物に関する責任を負いません。このことは、意図的な過大評価や過小評価についても、同様に、適用されます。

コメント:

多くの事例においては、ヴィスビー・プロトコールは、より高額の責任を規定するでしょう。しかしながら、同時に、船主の抗弁を広げ、また、不法行為に基づく責任についての制限や、運送人の従業員や代理人に対する責任制限も、提供するでしょう。Aqasia号判決の効果として、船主が、船荷証券の表面に、明確な文言で、ヘーグ・ヴィスビー・ルールを摂取することに固執することとなるかどうか、今後の状況に注意すべきでしょう。

Staff Author

PI Club

Date2017/05/23