QLU Spring 2018 May-3:"Aqasia"号事件‐控訴裁判所は、ヘーグルールのパッケージ・リミテーションは、ばら積み貨物には適用されないことを確認しました。
本判決は、2017年春に報告した高等法院(第一審)の判決に対する控訴に関するものです。左の第一審判決の詳細は
こちらをご覧ください。この紛争は、「2,000トンのばら積みの魚油。5%の増減は傭船者の選択」と記述された貨物が、タンカーAqasia号の船上で損傷を受けたことから生じたものでした。
ディスポーネント・オーナー(「船主」)は、傭船契約に摂取されたヘーグ・ルール第4条第5項の責任制限条項に依拠しようとしました。これによれば、その責任を、367,836米ドル相当のクレーム金額に対して、54,730.90ポンド(すなわち、損傷貨物の1トン当たり100ポンド)に制限することができます。
船主は、当事者が、ばら積み貨物が唯一の意図された種類の貨物である傭船契約に、ヘーグ・ルールを摂取させており、その第4条をばら積み貨物に適用することを明らかに意図していたといえるため、魚油の各トンが責任を制限する「単位」である、と主張しました。
裁判所は、運送契約がばら積み貨物のみに関するか否かを問わず、第4条で用いられている「単位」はばら積み貨物には適用されないとして、船主の主張を否定しました。
そこで船主は控訴しました。控訴院で争点となったのは、ヘーグ・ルール第4条第5項における「単位」の意味でした。
判決控訴院は、申し立てを棄却しました。 「単位」の明確な意味は、貨物の物理的単位または積載単位であり、計測単位や運賃単位ではないため、第4条第5項は、ばら積み貨物には適用されないとしました。これは本条約の制定作業(travaux preparatoires)においても、多くの先例においても、教科書、学者等の見解によっても確認されていることであるとしました。
仮に計測単位と解釈する控訴人の主張が正しいとしても、その計測された重量について、貨物の傭船契約に何ら記述がなく、船主の責任制限の試みは、これらの事実に基づき棄却されたでしょう。
コメント船主には歓迎されないことですが、この判決により、ヘーグ・ルールの下でのパッケージ・リミテーションは、ばら積み貨物に適用されないことが確認されました。しかし、船主は、代わりにヘーグ・ヴィスビー・ルールを傭船契約や船荷証券に摂取することができますし、あるいは「単位」の定義を計測単位や運賃単位とした上で、あるいは責任制限条項の範囲を拡大した上で、ヘーグ・ルール第4条第5項を傭船契約に摂取することもできます。
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