回覧17/22: ロシア産原油等の上限価格措置(プライスキャップ制度)

要旨
- EU、G7、オーストラリア(「プライスキャップ同志国」)は、2022年12月5日発効の法規およびガイダンスを導入しました。(プライスキャップ制度) これは世界市場へのロシア産原油の供給を維持しつつ、ロシアが原油等の輸出から得る収益を削減することを目的としています。
- これにより、国際P&Iグループ(IG)加盟の各クラブは、プライスキャップ制度の下で、ロシア産原油のプライスキャップ同志国以外の国への輸送に対するP&Iカバーを提供できることとなりました。ただし、これは船積みから仕向港での通関まで、ロシア産原油貨物の価格が1バレルあたり60米ドル(「プライスキャップ」)以下である場合に限ります。
- ロシア産石油製品については、2023年2月5日に別途プライスキャップが導入される予定です。
- 12月5日の発行日の時点で、すでにロシア産原油を積載していた船舶は、2023年1月19日までに航海を終えて貨物を荷揚げするのであれば、たとえ貨物がプライスキャップを超える価格で販売されていたとしても、航海を合法的に継続することができます。
- 各クラブ、船主、用船者は、所有、用船、保険を提供する船舶に積載されたロシア産原油等貨物の価格を確認することが求められることになりました。このチェックは、当該期間において価格がプライスキャップを超えないことを示す、契約相手方が提供する契約上の宣誓書(attestation)の形で行われます。
- 12月5日以降、ロシア産原油貨物を輸送しようとする船主または用船者は、保険期間中、本船に積載されて期間にプライスキャップを超える価格で販売されたロシア産原油貨物を輸送しないという宣誓書をP&Iクラブに提出する必要があります。クラブが求めている宣誓書の様式は、本回覧の別紙IIをご参照ください。
- また、2022年12月5日以前に開始され、2023年1月19日までに完了するロシア産原油の輸送に関わる取引に従事している船主・用船者は、別途宣誓書を提出していただく必要があります。クラブの求める宣誓書の様式は、本回覧の別紙1をご参照ください。
- 2022年12月5日以降に船積みされるロシア産原油と2023年2月5日以降に船積みされる石油製品の輸送に対するクラブの保険カバーについては、メンバーの皆様に適切な宣誓書の提供をしていただくなど、プライスキャップ制度の要件を完全に遵守していただくことが条件となります。クラブは、輸送される貨物がプライスキャップの上限を超えた価格で購入されたと疑うに足る合理的な根拠がある場合には、保険てん補を停止することが求められています。
はじめに
2014年のロシアによるクリミア併合以来、対ロシア経済制裁が実施されてきました。
現在の危機に先立つ数か月間、EUやG7およびその他の国々は、ロシアが侵略を行った場合、これまでにない制裁を実施することを警告していました。2022年2月24日の侵攻後、EU、英国、米国およびその他の同志国は、ロシアの金融、航空、海運業界および防衛、航空宇宙・エネルギーなどの経済戦略部門、そしてロシアのウクライナ侵攻を手助けする個人を標的とする、重要な協調制裁プログラムで対応しました。これらの制裁プログラムは、継続的な見直しの対象とされ、ロシア軍が国際的に認められたウクライナの領土内に留まっている限り、このまま継続されることが予想されます。これらの措置が海運とP&I保険に与える影響については、これまでに発行されたIGクラブ回覧03/22, 07/22, 09/22, 11/22 & 13/22をご参照ください。
ロシア産原油及び石油製品のプライスキャップ制度
ロシアは世界第 3 位の原油輸出国であり、その経済はこれらの輸出から得られる収益から大きな利益を得ています。 そのような収入は、ロシアのウクライナでの戦争の資金源となっているため、EUと G7は、石油販売によるロシアの収入を減少させる制裁の導入を集中して検討してまいりました。
こうした努力により、2022 年 9 月 2 日にドイツのエルマウで開催された G7と EU の会議において、G7 の財務大臣は、ロシアの石油貨物がある設定価格を超えて販売された場合に、ロシア産石油の海上輸送サービスを禁止するプライスキャップ制度について合意しました。 このプライス キャップの目的は 3 つあります。
- ロシア産石油の世界市場への供給を維持すること。
- 世界の石油価格の上昇圧力を抑制すること。
- 原油および石油/石油製品の輸出によるロシアの収益を減少させること。
プライス キャップ制度では、EU、G7およびオーストラリアなど同志国の管轄下にある者は、プライスキャップ価格以下で販売されていない限り、ロシア産原油および石油製品の輸送、あるいは輸送を可能にする (P&I保険を含む)サービスの提供は禁止されることになりました。EU、G7、またはその他同志国の管轄区域に拠点を置くサービス提供者により提供されるサービスの禁止は、EU、 G7同志国の一部ではない第三国からの、または第三国への輸送にまで及び、その範囲において特別な効果があります。 プライスキャップ制度は、原油貨物 (CN2709-00) (以下「原油」という) に関しては 2022 年 12 月 5 日に、石油・石油製品 (CN2710) (以下、「石油製品」という)に関しては2023年2月5日より開始されます。
2022 年 12 月 2 日、EU/G7同志国は、2022 年 12 月 5 日以降のロシア原油の上限価格を、まず 1 バレルあたり 60米ドルに設定すると発表しました。
プライスキャップ制度を有効にする法律およびガイダンスが、最近、EU、英国、および米国により発行されました。本回覧では、この制度が船主、用船者、および 国際P&Iグループやその再保険者によるそのような取引への保険カバーに与える影響についてご説明しています。
米国
P&Iクラブ、再保険会社、銀行を含む多くのサービス提供者は、米国領土内にあるか、米国法の対象となる金融取引や契約があるため、米国の法律が関連しています。
2022 年 11 月 21 日、米国財務省は大統領令 14071 に従い、ロシア産原油の海上輸送に関する以下のカテゴリーのサービスを禁止する決定書を発行しました。(i) 貿易/商品仲介、 (ii) 融資、 (iii) 海運、 (iv) 再保険とP&Iを含む保険、 (v) 旗国、 (vi) 通関。 これらのサービスの提供の禁止は、2022年12月5日に発効します。
https://home.treasury.gov/system/files/126/20221205_Price_cap_determination.pdf
2022年11月22日、米国財務省は「ロシア産原油のプライスキャップの実施についてのOFACガイダンス」https://home.treasury.gov/policy-issues/financial-sanctions/recent-actions/20221122と題する文書を公表した。本ガイダンスは原油貨物にのみ適用されます。2023年2月5日発効の石油製品に対するプライスキャップに関しては、別途ガイダンスが発行されます。
同日、財務省およびOFACは 「船舶の緊急時に関連する特定サービスを許可するGeneral Licence No.57」を発表しました。
https://home.treasury.gov/system/files/126/russia_gl57.pdf
プライスキャップ制度に係る輸送を検討されているメンバーの皆様は、これらの文書をご参照いただくようお勧めします。
米国プライスキャップ制度の下では、米国人がロシア産原油をEU/G7等同志国以外の国へ輸送し、サービスを提供することは、ロシア法人が海上輸送のために原油を販売した時点からロシア連邦以外の管轄区域で通関後最初の陸上販売までの間、原油の価格がプライスキャップ価格以下であれば合法となります。
船主およびサービス提供者は、この期間の原油価格を確認するために、一定の措置を講じる必要があります。その内容は、売買契約の当事者との関係性によって異なり、価格情報を入手できる者はより厳しい義務を負うことになります。 このため、EU/G7同志国は、石油輸送に携わる関係者を3つの「Tier」のいずれかに分類しています。Tier 1に該当する者は、Tier 2やTier 3 の該当者よりも広範なチェックが要求されます。 Tier 3 該当者は、貨物の価格に関する情報に直接アクセスできない者で、P&I クラブや船主を含みます。用船者もTier 3とみなされることはできますが、売買契約への関係性や認識の程度によって、Tier 2あるいはTier 1該当者となる可能性もあり得ます。
プライスキャップ制度に関与する当事者は、貨物に支払われた価格がプライスキャップを遵守しているという契約相手から取得した書面または証拠(宣誓書:Attestation)を含む取引の記録を保管する義務があります。この記録は、その後5年間保管しなければなりません。
上記の OFAC ガイダンスは、適用される記録保持及び証明プロセスを誠実に遵守する米国のサービス提供者に対し、OFAC の取締りからのいわゆる「セーフハーバー」(一定の要件を満たしている限り、法令違反とならない取り扱い)について記載しています。
米国人は、EO 14701 の決定に違反する取引や規定を回避しようとする取引をしてはならず、そのような活動については OFAC に報告をしなければなりません。
英国
P&Iクラブを含む多くの海事関連サービス提供者は、英国領土内にあるか、英国法の適用を受ける金融取引や契約を有しているため、英国の法律は関連性があります。
2022年11月1日、英国政府はロシア(制裁)(EU離脱)(修正第16号)規則2022を発表し、2022年6月4日に発表されたEU第6次制裁パッケージと英国の法律との整合を行いました。修正第16号により、以下の提供が禁止されました。
- ロシア産原油および石油製品の第三国への海上輸送、および
- そのような輸送に伴う海事関連および金融サービス。
2022年12月4日、英国財務省は「英国海事サービスの禁止と石油プライスキャップ・ガイダンス - GOV.UK (www.gov.uk)」と題する文書を公表しました。
同日、英国はまた、プライスキャップ制度https://www.gov.uk/government/publications/russian-oil-services-banを施行するためのGeneral Licenceを発表しました。また2022年12月4日付で、プライスキャップ制度の開始時に既にロシア産原油を積載している船舶に対する経過措置に関するGeneral Licence - Winddown(段階的縮小期間)を発表しました。
英国のプライスキャップ制度は、米国の制度をほぼ反映していますが、いくつかの重要な相違点があります。General Licenceの適用範囲内に入るためには「船上での貨物を受領した時から、貨物が引き渡され、第三国の税関を通過する時点、または非特恵原産地規則に沿って実質的に異なる商品に変換される時点までの間」関連貨物の価格をプライスキャップ価格以下に維持しなければなりません。
米国ガイダンスと同様、英国はプライスキャップ制度に係る当事者に対し、貨物がプライスキャップに適合しているという証拠を入手することを求めており、この点に関する当事者の義務の程度は、売買契約との関係性によって異なります。Tier構造が採用され、各Tierの説明は米国とほぼ同様となっています。また、制度に参加する企業はプライスキャップ制度の取引記録を4年間保存することが義務付けられています。
米国ガイダンスにある「セーフハーバー」の概念の記述は、英国ガイダンスにはありませんが、その代わり、英国の管轄下にある当事者(居住地に関係なく英国人を含む)は、プライスキャップ制度が遵守されていない場合、強制措置を回避するためには、「...証明プロセスの要件を...タイムリーに、OFSIが満足するように完全に満たし、適切なデューディリジェンスを実施したこと...」をOFSIに証明する必要があります。
現在、英国企業または市民が、ロシア産原油または石油製品をロシアから第三国へ、または第三国から別の第三国へ船舶で輸送している世界中の者に対して金融サービス、資金、仲介サービスを提供することは、原油または石油製品が制度開始日(原油に関しては2022年12月5日、石油製品に関しては2023年2月5日)後に価格上限を超えて購入されていた場合、犯罪行為とされています。OFSI が取ることのできる強制措置の範囲には、厳格な責任に基づき課される民事罰も含まれ、その額は価格上限制度の違反額の 50%に及ぶこともあります。
英国では、プライスキャップ制度に参加する当事者に重大な報告義務も導入されています。例えば、英国のサービス提供者は、プライスキャップ制度の禁止事項に違反した場合、OFSIに報告し、「英国の制裁措置に違反した疑いがある場合、合理的に実行可能な限り速やかにそのサービスを停止しなければならない」ことが義務付けられています。
欧州連合
英国同様、EUは金融や技術的な海事関連サービス産業の多くを擁しています。
2022年6月4日に発表されたEUの第6次制裁パッケージとEU規則833/2014に含まれる内容は、ロシア産石油を第三国へ運ぶ船舶に対するサービス提供を、原油に関しては2022年12月5日以降、石油製品に関しては2023年2月5日以降、禁止するというものでした。この規則833/2014と、ともに発表されたFAQ(よくある質問)は、9月にEU/G7同志国が発表したプライスキャップ制度の基礎となるものとなりました。
2022年10月6日、EUは第8次制裁パッケージを発表し、上限価格以下で販売された貨物の輸送と関連の海事サービスに対する例外措置を盛り込みました。https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=OJ:L:2022:259I:FULL&from=EN
2022年12月3日、EU理事会は石油のプライスキャップ制度を実施するための上限価格を決定しました。 https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2022/2367
また、2022年12月3日、EU委員会は、プライスキャップ制度の解釈ついてFAQ(よくある質問)を発表しました。Questions and Answers: G7 agrees oil price cap (europa.eu)
EUのプライスキャップ制度は、米国や英国の制度とほぼ同様ですが、EUの現行法を反映し、いくつか重要な違いがあります。
EUのプライスキャップ制度の適用期間は、英米の法律よりも長くなっています。EUの制度では、石油が第三国の目的地で通関した後、「...非特恵原産地規則に沿って実質的に別の商品に変換されることなく、(すなわち、精製されることなく)再び海上輸送されるようになった場合」であっても、このプライスキャップ制度は適用されます。
ここでも、当事者は貨物価格について適切な宣誓書(Attestation)を取得することが求められており、その内容はどのTierに該当するかによって異なります。各Tierの定義は、英国や米国で採用されているものと同様、船主とP&IクラブはTier3に該当すると認識されています。FAQには、次のような記載があります。「価格情報に直接アクセスできないEUの事業者は、適切なデューディリジェンスを行った上で、合理的に宣誓書を信頼した場合、その宣誓書が偽造されたり、違法な者によって提供された場合、EU事業者は、誠実に行動していれば、プライスキャップ規制に違反しているとはみなされないだろう」。
プライスキャップ取引の当事者は、その記録を5年間保存することが義務付けられています。
EU規則833/2014の第3n条7項では、プライスキャップを超える価格で石油を輸送していることが判明した船舶への金融・技術サービスの提供を、永続的に禁止するように見えたため、どのように解釈されるか懸念されていました。この条項の解釈については、FAQ 32~34に記載されており、EU域外の船舶に関しては、そのような禁止はプライスキャップ制度を意図的に破った場合に限られ、その後の航海に対する海上・技術サービスの提供の禁止は、ロシアの貨物にのみ適用され、90日の期間適用されると説明されています。第3n条7項に違反したEUの船舶は、関連する加盟国の法律に従って対処されることになります。
経過措置
英・米・EUの3議会とも、プライスキャップ制度開始時にロシア産原油を輸送している船舶に対し、2023年1月19日までの45日間の段階的縮小期間(Winddown period)を設けることを規定しています。この事業縮小期間の開始と終了の正確なタイミングは、3つの司法管轄区で若干の違いがあります。
英国の法律では、P&Iクラブは、2022年12月5日12時1分(GMT)以前にロシア産原油を積み込んだ船主や用船者が、2022年12月5日05時1分以前に貨物を完全に積み込み、2023年1月19日05時1分以前に荷揚げされることを確認する日付証明書(Date Attestation)をクラブに提供する場合のみ、カバーを提供することができます。
クラブが引続き保険カバーを提供できるように、現在ロシア産原油を輸送している船主および用船者は、本回覧の附属書 I に記載された宣誓書(Attestation)のフォームに記入し、早急にクラブに送付していただき、この要件に準拠する必要があります。
必要な宣誓書(Attestation)の書式
船主は、英・米・EUの3管轄区域のすべてにおいて Tier3 に該当するとみなされています。船主は、契約上の相手方(通常、用船者)から、相手方が上限価格を超える原油又は石油製品を購入しないことを約束する契約上の確約を得なければなりません。そのような誓約書は、単独の文書である場合もあれば、広範な契約書に含まれている場合があります。
これら3管轄区域とも、個別契約に導入できる宣誓書の文案を提供しています。
用船者は、売買契約における役割に応じて、Tier 3またはTier 2に該当する可能性があります。例外的に、特に売買契約の当事者である場合や、売買契約から直接利益を得るような場合には、Tier1に該当する可能性もあり、その場合には、宣誓書の義務はより厳しくなります。Tier 2該当者としては、契約上の価格の詳細を入手し、要求に応じて他の当事者が利用できるようにすることが求められます。その情報が入手できない場合には、プライスキャップを超える石油を購入しないことを確約する必要があります。Tier 1の取引先が、英国の管轄下にある場合などには、追加の報告義務などが適用されることもあります。
記録の保管
3つ管轄区域は、いずれもプライスキャップ制度に参加する当事者に記録の保管を義務付けています。英国の場合は4年間、米国とEUの場合は5年間、記録を保管しなければなりません。記録の保管の程度は、プライスキャップ取引における当事者の立場、すなわちTier 1、2、3のいずれに該当するかによって決まります。
クラブの保険カバー
国際グループの各クラブは、クラブ・ルールに従い、ロシア産原油または石油製品の輸送を合法的に行う船舶に保険カバーを提供することができます。 このような合法的な運送に従事するために、クラブ加入の船主または用船者の皆様は、すべてのプライスキャップ制度の要件を完全に遵守し、適切なデューディリジェンスを実施し、宣誓書のプロセスを完全に遵守する必要があります。
メンバーの皆様がロシア産原油または石油製品を輸送する際には、3管轄区域のすべての要件に注意する必要があり、航海を行うために依拠する宣誓書のコピーを P&I クラブに提供する準備をしていただく必要があります。
各P&Iクラブは、プライスキャップ制度を遵守するために、船主または用船者が提供したプライスキャップ宣誓書が虚偽であると疑われる合理的な理由がある場合、あるいは航海開始後に貨物がプライスキャップを超えた価格で販売された場合、保険カバーを停止することが求められています。
いかなる状況においても、クラブの保険カバーはプライスキャップ制度を厳守することを条件としています。 英国および米国の法律が適用されるP&Iクラブは、プライスキャップ制度の違反が疑われる場合には、それぞれの規制当局に通知する義務を負っています。
各クラブは現在、最近の法律やガイダンスに照らし、Tier 3の宣誓書に対する要件に準拠していることを確認するため、既存の免責条項を見直しています。
メンバーの皆様は、2022 年 12 月 5 日 05時01分(GMT) から、プライスキャップ制度に係るロシア産原油貨物に対するP&I カバーは、供給または引渡される原油の単価がプライス キャップ以下であることを条件とすることに注意していただく必要があります。
プライスキャップ制度に従い、ロシア産原油または石油製品を輸送しようとする船主および用船者のメンバーの皆様は、本回覧の付属書 II に記載されている宣誓書の様式に必要事項を記入し、できるだけ早くクラブに返送する必要があります。
緊急時の保険カバー
プライスキャップに関する法律は、制裁により海上での緊急事態への対応が妨げられないようにする必要性を認識しているようです。 英国の法律には、人間の健康や安全、インフラ、環境に対する危害の防止や軽減を支援する海上での緊急事態に対処する人の活動に対する例外規定があります。おそらく範囲は狭いものの、同様の規定はEUの法律にもありますし、米国のGeneral Licence No.57は、船員の健康や安全、環境保護に関する船舶の緊急事態への対処に伴って必要となる海事関連サービスの取引を許可しています。
国際グループの各クラブは、CLC、バンカー条約や船骸撤去に関するナイロビ条約の各条約に従って発行されたブルーカードに基づき、海難事故の第三者被害者(沿岸国を含む)に対する直接的義務に留意しており、クラブが海難事故による被害の防止と軽減に関して第三者からの請求に対応する必要があるということを認識していただきたいと思っています。
しかしながら、クラブメンバーの皆様は、違法な輸送を伴う航海に関して、クラブがブルーカード上の義務を免除された場合に、クラブはその費用をメンバーから回収する権利があることについて、ご留意いただかなくてはなりません。
リスク
EU、G7とオーストラリアを含む同志国が推進するプライスキャップ制度は、独自のコンプライアンス上の課題を提起しています。
ロシアはプライスキャップ制度に反対しており、貨物の原産地を混同したり、不明瞭にするために、虚偽の書類を作成したり、複数の船から船舶間移送を利用することで制裁を逃れようとする試みが、一般的になるリスクがあります。
船主や用船者の皆様は、適切なデューディリジェンスを尽くしていただき、表面上有効な宣誓書を入手すれば、いかなる法律にも違反しませんが、保険者、再保険者、旗国、銀行などの海事関連サービスや技術支援を提供する者は、プライスキャップが遵守されていないと疑うに足る妥当な理由がある場合には、そのサービスを停止する義務を負っているのです。
船積み後に違反が確認された場合、当局が貨物の最良の処分方法を決定するまでの間、船舶が無保険で、かつ通常の銀行サービスを利用できないまま長期間放置される可能性があります。
国際グループのすべてのクラブは同様の回覧を発行しています。
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Circular 17 22 Japanese 309 KB
2022/12/13
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2022 17E Price Cap On Russian Oil Annex I & II 342 KB
2022/12/12
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