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Nigel Carden
Nigel Carden
Chairman
Date
25 June 2025

本回覧では、米国国務省および財務省外国資産管理局(OFAC)の公表資料に基づき、イランに対する最新の米国制裁の概要を説明します。

米国の対イラン制裁最新情報

I.     2025年4月16日、OFACは「イラン石油制裁回避の検出および軽減に関する海運および海運関係者向けガイダンス」(改訂版勧告)を発表しました。

本勧告は2019年に発行された勧告の改訂版であり、元の勧告で導入されたレッド・フラッグとリスク軽減措置の拡大、2019年以降に実施された追加制裁、およびOFACが特定した制裁回避パターンについてより詳細に説明しています。改訂版勧告は、国際海運・海事産業が、イラン産原油・石油製品・石油化学製品の輸送に関連する制裁回避行為に伴うリスクを検出および軽減する手助けとなることを目的としています。OFACによる措置はイランの石油販売への対抗を目的としています。したがって、イラン産石油の輸送は、「海運会社、船舶所有者、管理会社、運航者、保険者、港湾管理者、港湾サービス提供者、金融機関を含みますが、これらに限らず海事産業に重大な制裁リスクをもたらします」。

OFACの改訂版勧告は次のポイントについて説明しています。(1) イランの制裁回避を目的とした欺瞞的な貿易慣行 (2) 海運関係者が制裁リスクを特定し軽減するための助言 (3) 米国制裁違反に伴う影響。

主な調査結果と推奨の順守事項

石油輸送における制裁回避行為

改訂版勧告で説明されているように、イランは制裁を回避し自国製品を割引価格で販売するために、以下の欺瞞的な国際貿易慣行に関与しています。

  • タンカーの「シャドーフリート」を利用し石油の原産地を偽装するほか、シャドーフリートのガス運搬船を利用し同様な手法を用いてLPG輸送を行うこと。
  • 制裁対象のイランのタンカーが領海外で非制裁対象の船舶との船舶間移送(STS)を利用し、イラン産石油を第三国の購入者に輸送する行為。石油の原産地や制裁対象タンカーの使用を隠蔽するために、通常、1回の輸送で3~5回の船舶間移送が行われます。
  • イラン関連組織が、船舶および貨物関連書類、例えば船荷証券、原産地証明書、インボイス、パッキングリスト、適切な保険加入証明書、最終寄港地リストなどを偽造し、石油原産地と仕向地を隠蔽する行為。
  • イラン産石油を積載する船舶が、意図的にAISトランスポンダーを無効にしたり、トランスポンダーのデータを改ざんしたりすることで、船舶の位置情報や識別データを操作し、特定の海域における寄港や船舶間移送を隠蔽する行為。
  • イラン関連組織が「リスクが高く、透明性が低く、規制が緩い地域」において、ペーパーカンパニーや船舶所有目的の特別目的会社(SPV)を利用していること。
  • イラン国外の石油仲介業者が、イラン産の石油および石油製品を外国の最終消費者への販売・輸送を支援していること。

制裁リスクの特定と軽減

制裁措置に遵守するための手順を定期的に見直しおよび強化されたデューデリジェンスの実施が推奨されます。メンバーの皆さまにとって特に重要な点として、改訂版勧告では、関係者に以下の措置を講じるよう推奨しています。

  • 石油または石油製品の原産地を確認する。
  • 船舶が適切かつ合法的な保険に加入していることを確認する。
  • 船舶の所有権、航海履歴、旗国履歴に関する追加書類を要求する。
  • すべての船積書類を確認し、航海の詳細および関連する船舶、船籍情報、貨物の詳細、原産地および仕向地が正確に反映されていることを確認する。
  • 顧客、顧客の取引相手、および関連船舶に対して適切なデューデリジェンスを実施する。
  • 制裁回避のリスクが高いと知られる地域を航行中にAISデータを改ざんした、あるいはAISが異常を示したと思われる船舶を監視し調査する。
  • 海上石油サプライチェーンにおける取引先から、米国の制裁法規に違反する行為、または米国人に違反させる行為に関与していないことを契約上の条件として保証し担保さえる。
  • 制裁対象船舶へのサービス提供または入港を拒否する。
  • デューデリジェンスのために、オープンソースデータベースや商用船舶データを提供する組織からの情報を活用する。

改訂版勧告では、米国人が制裁対象者との取引やイラン産石油・石油関連製品に関連する取引を行うことに対する一般的な禁止事項に加えて、非米国人が米国人を米国制裁に違反させる、あるいは違反を共謀する行為、および米国制裁の回避行為への関与を禁止することが強調されています。そして、OFACがイラン石油部門に関連して制裁回避的な輸送慣行に関与した非米国人に対して執行措置を取った複数の事例についても言及しています。

II.      2025年5月21日、米国国務省(DoS)は、「イラン自由および拡散防止法(IFCA)に基づくイランに関する米国の調査結果」を発表しました。

2012年イラン自由および拡散防止法(IFCA)」第1245条(プレスリリース)に従い、米国国務省(DoS)は以下の事項を特定しました。

(i) (マグネシウムインゴット、タングステン銅AA2024-T351アルミニウム板および/またはチューブ、および過塩素酸ナトリウムを含む)イランの核、軍事、または弾道ミサイルプログラムに関連して使用されている10の戦略物質。

(ii) イランの建設部門が、イスラム革命防衛隊(IRGC)によって直接的または間接的に支配されていること。

それを踏まえ、以下の者に対して制裁措置が発動されます。

  • イランに、またはイランから、10の戦略物質を故意に販売、供給または移転する個人もしくは事業体(最終用途または最終使用者を問わない)、および
  • 未加工金属、半製品金属、グラファイト、石炭、および統合的な産業用ソフトウェアがイランの建設部門に関連して使用される場合、これらをイランに、またはイランから、(直接的または間接的を問わず)故意に販売、供給、または移転する個人または事業体。

米国政府は、イラン政権の核開発と軍事的野心を抑止するために、最大限の経済的圧力を継続して課す方針を維持すると表明しています。

メンバーの皆様はすべての制裁措置を遵守するために、改正版勧告と米国国務省(DoS)によるイランに関する調査結果を確認することを推奨いたします。

メンバーの皆様は、適用される制裁措置に違反するいかなる取引に対しても保険カバーが適用されないことにご留意ください。また、制裁リスクの高い取引に従事する前に、関与または関与の可能性のある関係者、貨物、船舶およびその他のサービス提供者に関し、取引全体を通じて徹底的なデューデリジェンスを実施することをお勧めいたします。さらに、デューデリジェンスの調査結果を記録に残すことを推奨いたします。

国際グループのすべてのクラブは同様の回覧を発行しています。