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Nigel Carden
Nigel Carden
Chairman
Date
29 July 2025

EUの第18次制裁パッケージ

2025年7月18日、EUはロシアに対する第18次制裁パッケージを採択しました。これらの措置は、改正されたEU規則833/2014およびEU規則269/2014に記載されています。欧州委員会はこれらの新措置に関するプレスリリースおよびFAQを発表しています。

その概要は以下の通りです。

新たな船舶および資産凍結の対象リスト

ロシアの「シャドーフリート」に属するとして105隻の船舶が、EUの港への寄港や海運・その他のサービスの提供を受けることが禁止されました(EU規則833/2014第3条s)。商船三井が運航するLNGタンカー3隻は、ロシアのヤマルLNGプロジェクトおよびArctic LNG 2プロジェクトからのガスを輸送しないとの保証を受け、制裁対象リストから除外されました。

14名の個人および41の事業体がEU制裁リストに追加されました(これにより、資産凍結の対象となりました)。その中には、(すでに英国の資産凍結対象に指定された)Coral Energy/2Rivers Groupの関係者や、Rosneft社が主要株主であるインドの製油所Nayara Energy Limitedが含まれています。

プライスキャップ制度

ロシア産原油(CNコード2709)の価格上限が、1バレル当たり60米ドルから47.60米ドルに引き下げられ、2025年9月3日から適用されます。2025年7月20日以降に締結された契約については、9月2日までを猶予期間として1バレル当たり60米ドルの上限を適用できます。また、2025年7月20日以前に締結した契約について1バレル当たり60米ドルの上限を適用するには、10月18日までに契約を完了する必要があります。

欧州委員会は、ロシア産原油の上限価格を流動的に更新する仕組みを確保するために、「認定報告機関」によって提供される価格評価に基づいてロシア産原油価格を監視します。新制度では、上限価格は常に直近6か月間のウラル原油の平均市場価格(ロシア産原油輸出の価格指標)より15%低い水準に設定されます。ただし、新たに算出された価格が現在の上限価格と比べて差が5%以内の場合は上限価格を変更しないこととします。欧州委員会は、2026年1月15日およびその後は6か月ごとに、関連する平均市場価格を公表し、価格上限を更新します。更新された上限価格は、関連の施行規則が実施された月の翌月一日から適用されます。

英国もロシア産原油の上限価格を1バレルあたり47.60米ドルに引き下げましたが、この新しい上限価格は2025年9月2日(火)英国夏時間(BST)23時01分より発効します。さらに、同日より前に契約発効日が設定され、かつ、既存の上限価格(1バレルあたり60米ドル)に準拠している取引については、45日間の猶予期間が設けられます。この猶予期間は2025年10月17日(金)英国夏時間(BST)23時01分に終了します。英国政府は、上限価格の引き下げに関するFAQを発表しており、こちらで確認できます(FAQ no. 154 onwards under ‘Russian Oil Services Ban’)。

G7のプライスキャップ制度同志国である米国は、ロシア産原油の上限価格を引き下げていません。

石油製品(CNコード2710)に対する上限価格は変更されておらず、原油より高値で取引される製品(Premium to Crude)は1バレルあたり100米ドルで、原油より安値で取引される製品(Discount to Crude)は1バレルあたり45米ドルのままとなっています。

貿易

2026年1月21日以降、第三国でロシア産原油から精製された石油製品のEUへの輸入、輸送、またはそれに関連する保険の提供が禁止されます(EU規則833/2014第3条ma)。ただし、ノルウェー、英国、米国、カナダおよびスイスからの輸入については適用が除外されています。これら以外の第三国で加工された精製石油製品がEUに輸入される際、原油の原産国証明が要求されます。

ロシアの産業能力の強化に寄与する可能性があることを理由に制限の対象となる物品のリストが拡大されました(EU規則833/2014第3条k)。これらの制限(猶予期間あり)により、当該物品がEU原産のものか否かを問わず、ロシアへの輸送(および関連する保険)が禁止されます。制限対象となる物品には、以下のCNコードに該当するものが含まれます。

  • 2613 モリブデン鉱石および精鉱
  • 2707 高温石炭タールの蒸留による油類およびその他の製品;芳香族成分の重量が非芳香族成分の重量を超える類似製品
  • 2801 フッ素、塩素、臭素およびヨウ素
  • 2802 昇華硫黄または沈殿硫黄;コロイド状硫黄
  • 2803 炭素(カーボンブラックおよび他の特定されない炭素の形態)
  • 2804 水素、希ガスおよびその他の非金属
  • 2817 酸化亜鉛;過酸化亜鉛
  • 2821 酸化鉄および水酸化鉄;酸化鉄(Fe₂O₃)として重量70%以上の結合鉄を含むアースカラー
  • 2822 酸化コバルトおよび水酸化コバルト;商業用酸化コバルト
  • 2823 酸化チタン
  • 7315 鉄または鋼のチェーンおよびその部分品
  • 7326 その他の鉄または鋼製品
  • Ex 74 銅およびその製品(CNコード7401 00 00を除く)
  • 76      アルミニウムおよびその製品

第三国経由の先端技術品輸出に伴う制裁回避リスクに対処するための措置が導入されました。(EU規則833/2014の第2条aに基づき、)ロシアの軍事的・技術的強化に寄与する可能性のある第三国への物品および技術の輸出には、許可が必要となります。これは、輸出者が所在するEU加盟国の管轄当局から、当該品目の最終仕向地がロシアである、または最終用途がロシアの関係事業体のためであると疑われる合理的な理由があると通知された場合に適用されます。

Nord Stream

ロシアのNord Stream1およびNord Stream2のガスパイプラインに関連する取引は禁止されます。これには、パイプラインの完成、運用、保守、または使用に関する物品やサービスの提供が含まれます。

取引禁止

EUは、第16次制裁パッケージで導入された、特定の港に対する取引禁止措置に関して、非ロシア産の石炭に対する新しい適用除外規定を設け、FAQを正式に発表しました。

これにより、第三国を原産地とする石炭(CNコード2701)が、ロシアで積み込み、出港、通過のみ行われ、かつ、石炭の原産地および所有者が非ロシア人である場合は取引禁止が除外されます(EU規則833/2014 第5条ae(3)(g))。この取引禁止措置およびEUのFAQに関する詳細は、2025年3月に発行したクラブ回覧「 回覧 07/25」をご参照ください。

金融部門

銀行部門では、サンクトペテルブルク銀行(Bank Saint Petersburg)、ヤンデックス銀行(Yandex Bank)、メットコム銀行(Metcom Bank)、ゼニト銀行(Bank Zenit)を含む22のロシアの銀行が全面的な取引禁止措置の対象となります。この措置は2025年8月9日から発効します。また、ロシア直接投資基金(Russian Direct Investment Fund:RDIF)およびその関連会社に対しても新たな取引禁止措置が導入されました。

ベラルーシ

EUは、ロシアに対する制裁と同様の措置をベラルーシにも課しました。これには機微な物品および技術、並びにベラルーシの産業能力の強化に寄与する可能性のある物品に対する輸出制限が含まれます。詳細は改正規則(EC)265/2006および規則2025/1472で確認できます。

英国の制裁

2025年7月21日、英国はロシアの「シャドーフリート」に属する135隻のタンカーを英国の制裁リストに追加しました。また、(ガボンの船籍登録機関を運営している)Intershipping Services LLCがシャドーフリートの船舶をガボン船籍として登録しているとして、制裁対象に指定されました。ロシアのエネルギー企業Lukoilの国際取引部門Litasco Middle East DMCCも指定を受けました。さらに、英国の規制当局であるOFSIは、General Licence(Wind Down of Positions Involving Litasco Middle East DMCC INT/2025/6488808: Litasco_Wind_Down_GL.pdf)を発行し、Litasco DMCCとの取引に対し2025年9月18日23:59まで猶予期間を認めています。

メンバーの皆様は、適用される制裁措置に違反するいかなる取引に対しても保険カバーが適用されないことにご留意ください。また、制裁リスクの高い取引に従事する前に、関与または関与の可能性のある関係者、貨物、船舶およびその他のサービス提供者に関し、取引全体を通じて徹底的なデューデリジェンスを実施することをお勧めいたします。さらに、デューデリジェンスの調査結果を記録に残すことを推奨いたします。

国際グループのすべてのクラブは同様の回覧を発行しています。

UK P&Iクラブ日本支店 訳