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Date
14 November 2025

本回覧は、2025年10月にEU、英国、米国が導入したロシアに対する新たな制裁の概要を示すもので、エネルギー分野の制限、輸出管理の拡大、制裁回避への対策強化に焦点を当てています。主要な影響とメンバー向けのコンプライアンス指針に後段で触れています。

 

2025年10月および11月には、EU、英国、米国によるロシアに対する新たな制限と指定が次々と導入されました。 

詳細は後段で触れますが、共通の主要テーマとして特筆すべきものは次のとおりです。

  • LNG輸送の保険を含む、ロシアのエネルギー分野と主要な石油会社を標的とした協調的な強化措置
  • 制裁回避を助長するシャドーフリートや第三国仲介業者への監視強化
  • 回避経路を封じるための輸出管理の拡大と金融措置の強化

EU制裁 – 第19次パッケージ

2025年10月23日にEU理事会は第19次制裁パッケージを導入し、EU規則833/2014およびEU規則269/2014の改正により、ロシアのエネルギー分野、金融インフラ、軍需産業複合体に対する制限を大幅に拡大しました。主な措置は以下を含みます。

  • エネルギー分野

    • ロシア産LNGのEUへの輸入全面禁止
      • 短期契約について2026年4月25日発効
      • 長期契約(2025年6月17日以前に締結された1年以上の契約)について2027年1月1日発効
    • LNG輸入に関する上記禁止に関連する技術・金融支援(保険を含む)の提供禁止 
    • EU港でのロシア産LNG積替え禁止
    • RosneftおよびGazprom Neftとの取引禁止強化

 

  • 第三国関係者

    • ロシア原油を購入する中国企業(製油所2社と石油トレーダー)への制裁
    • Litasco Middle East DMCC(LukoilのUAE法人)の指定

 

  • 追加措置

    • 69名の個人を指定
    • 45社の法人を指定。ロシアの軍需および産業複合体への支援が理由
    • 117隻の船舶を指定。港湾アクセス禁止および保険を含む広範囲に渡る海上輸送関連サービスの提供禁止。これにより制裁対象指定船はのべ557隻に上る
    • ロシア関係者が以前に運航していた船舶に対して、売却後5年間、一定の形式での保険・再保険の提供、および第三国の買主または賃借人とのあらゆる形式の賃貸借契約の締結を禁止
    • 電子部品、軍用金属、工業製品の輸出管理強化
    • 軍事システムに使用される金属・酸化物・合金および非環式炭化水素の輸入制限
    • シャドーフリート船舶に虚偽の登録を提供する海事登録機関への制裁
    • EU規則833/2024でまだ対象となっていないロシア政府へのサービス提供に関する事前承認義務
    • ロシアの銀行5行(Istina Bank、Zemsky Bank、Absolut Bank、MTS Bank、Alfa-Bank)との取引禁止。さらにベラルーシとカザフスタンの銀行4行も取引禁止対象。ロシアの金融メッセージングおよび決済システムへの関与が理由

英国の制裁

2025年11月12日、英国はロシア産LNGに対する海運サービス禁止を導入する意向を発表しました。

プレスリリースによると、

この措置は、ロシアのLNG輸出を大幅に削減し、世界トップクラスである英国の海運サービスへのアクセスを遮断することを目的としています。禁止は2026年にEUと歩調を合わせて段階的に導入されます

英国は2023年1月にロシア産LNGの輸入を禁止しています。今回はさらに一歩進め、ロシア産LNGの第三国向け海上輸送と、保険を含む関連サービスを禁止します。

海運サービス禁止導入の意向に関する上記の発表は、10月15日にRosneft、Lukoil、Rosneftが49%出資するインドの製油所であるNayara Energy Limited、その他様々な会社を指定したことに追従するものです。英国政府のこの措置に関するプレスリリースはこちらからご覧いただけます。

RosneftLukoilが英国の資産凍結リストに追加されました。

  • 資産凍結対象90件が追加され、以下を含みます。
    • 中国の4つの石油ターミナル
    • インドのNayara Energy Limited
    • 51隻のタンカーとLNG船
    • 5つのロシア金融機関
    • 防衛関連企業

 

  • 一般ライセンス

    • 一般ライセンスINT/2025/7539056により、Rosneft、Lukoilおよびこれらの企業が所有または支配する法人との取引について猶予期間が認められます。ライセンスは2025年11月28日23:59に失効します。
    • 一般ライセンスINT/2025/7538856によりNayara Energy Limitedを含む特定のエネルギー企業法人との取引について猶予期間が認められます。ライセンスは2025年11月13日23:59に失効します。
    • さらに、2025年10月22日にOFSIが一般ライセンスINT/2025/7598960を発行し、Rosneftの子会社であるRosneft Deutschland GmbHとRN Refining and Marketing GmbHが関与する業務事業活動を認めました。また、OFSIはFAQs(No.169)を更新して、英国制裁が、2022年からドイツ政府の信託引受け下にあるこれら企業の事業に悪影響を及ぼすことを意図するものでないことを確認しました。

米国の制裁(2025年10月22日)

2025年10月22日、米国はロシアの石油大手2社に対して全面的な資産凍結制裁を課しました。

  • RosneftおよびLukoilSDNリストに追加、複数の子会社も対象
  • 2社のいずれかが50%以上保有する企業はすべて資産凍結
  • OFACはRussia-related General License 126を含む4つの一般ライセンスを発行し、RosneftまたはLukoilが関与する取引について2025年11月21日まで猶予期間を認めました。

影響

上記の概要はロシアに対する制裁の一層の強化を示しています。第三国へ輸送されるロシア産LNGに関する保険提供の禁止が提言されていることに加えて、ロシア産石油や他のエネルギー製品の主要な貨物サプライヤーでシッパーでもあるRosneftとLukoilに対する措置は最も注目すべきものです。英国と米国それぞれの一般ライセンスが認める猶予期間に従って、メンバーはこれらの法人との間の傭船契約を含む全ての商業上および契約上の関係を終了すること、これらの法人が貨物所有者である場合に一般ライセンスの失効日までに全ての貨物を荷揚げすることを確実にしなければなりません。事実上、これは2025年11月21日までの完了を意味します。これができなかった場合、制裁の関係当局がメンバーに対して強制措置を講じる可能性があります。

メンバーの皆様は、適用される制裁措置に違反するいかなる取引に対しても保険カバーが適用されないことにご留意ください。また、制裁リスクの高い取引に従事する前に、関与または関与の可能性のある関係者、貨物、船舶およびその他のサービス提供者に関し、取引全体を通じて徹底的なデューデリジェンスを実施することをお勧めいたします。さらに、デューデリジェンスの調査結果を記録に残すことを推奨いたします。

国際グループのすべてのクラブは同様の回覧を発行しています。

以上

UK P&Iクラブ 日本支店 訳