東アジアの特定の港に寄港する船舶を所有するメンバーは、5月から10月の間、出港前に船体を検査のうえ、アジア型マイマイガ(FSMC)不在証明書の発給を受ける必要があります。本措置は、FSMC未発生の国に入港した際、強制的な規制措置が取られるリスクを最小限に抑えることを目的としています。
季節性病害虫検査を実施している国は次の通りです:米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチン
米国およびカナダ
2025年2月、カナダ食品検査庁(CFIA)と米国農務省(USDA)は、FSMCに関する共同声明を発表し、2025年にこの害虫が大量発生する可能性について警告しました。FSMC不在証明書の取得に加え、自己検査の際には細心の注意を払うよう推奨しています。
下記の表に概説されている通り、指定されたリスク期間中にFSMC規制区域に寄港予定の船舶は、公認された検査機関による検査を受けFSMC不在証明書の発給を受ける必要があります。検査は、出港日の日中明るい時間帯に実施されるのが理想的です。
国名 | 港湾/都市名 | 指定されたリスク期間 |
ロシア極東 | Nakhodka, Ol’ga, Plastun, Pos’yet, Russkiy Island, Slavyanka, Vanino, Vladivostok Vostochny, Zarubino, Kazmino | 6月15日~10月15日 |
中国 | 中国北部のすべての港(北緯31度15分以北のすべての港を含む) | 6月1日~9月30日 |
韓国 | すべての港 | 6月1日~9月30日 |
日本 - 北部 | 秋田、青森、福島、北海道、岩手、宮城、山形 | 6月15日~10月15日 |
日本 - 中部 | 愛知、千葉、福井、茨城、石川、神奈川、三重、新潟、静岡、東京、富山 | 6月1日~9月30日 |
日本 – 西部 | 愛媛、福岡、広島、兵庫、香川、鹿児島、高知、熊本、京都、宮崎、長崎、大分、岡山、大阪、佐賀、島根、徳島、鳥取、和歌山、山口 | 5月15日~8月31日 |
日本 – 最南 | 沖縄 | 5月25日~6月30日 |
北米への航海中に、乗組員は自己検査を実施のうえ、FSMCの卵塊およびFSMCをすべて適切に除去もしくは処分することを推奨いたします。北米の港へ入港する少なくとも96時間前までに、船舶は過去2年間の寄港地データを現地の代理店へ提出する必要があります。代理店は、この情報を米国またはカナダの当局へ確実に提出します。
オーストラリア
オーストラリアでは、バイオセキュリティプログラム(FSMCを含む)は農林水産省(DAFF)によって管理されています。オーストラリアの港における規制強化期間は毎年1月から5月で、規制対象地域はロシアの港のみです:
国名 | 港湾/都市名 | 指定されたリスク期間 |
ロシア東部 | 北緯40度から60度、東経147度以西のすべての港 | 7月1日~9月30日 |
過去2年間に規制区域に寄港した船舶は、Maritime Arrivals Reporting. System (MARS)を通じ到着前情報について報告する必要があります。到着前レポートの提出後、対象船はFSMC質問票を受領します。その後、船舶はオーストラリア当局によってFSMC検査の必要性について査定され、最初の入港手続きの一環として対象となるFSMC検査が必要であるかどうかが通知されます。
ニュージーランド
ニュージーランドでは、第一次産業省(MPI)がFSMC規制の所轄官庁となります。ニュージーランドのFSMC規制内容は、米国やカナダの規制と同様です。ただし、過去12ヶ月間(他の地域では24ヶ月間)の指定されたリスク期間中に規制区域に寄港した船舶に限り、出港前に有効なFSMC不在証明書の提示が求められます。
FSMC不在証明書の写しおよび過去12ヶ月間に寄港した港のリストを入港の少なくとも48時間前までにMPIに送付する必要があります。
FSMC不在証明書を取得していない船舶は、MPIが指定する特定港で検査を受ける必要があります。あるいはリスクが非常に高いと判断された場合、4海里離れた沖合の合意した場所で検査を受けなければならない可能性があります。
チリ
チリ農業牧畜局(SAG)は、FSMC政策の執行を担当する機関です。チリのFSMC規制内容は、米国やカナダの規制と同様です。過去24ヶ月以内の指定されたリスク期間中に規制区域に入港した船舶は、少なくとも24時間前までに、その期間に寄港した港のリストおよび、船舶が最後に寄港したFSMC規制区域にて発行されたFSMC不在証明書をSAGに提出する必要があります。
アルゼンチン
アルゼンチン農畜産品衛生管理機構(SENASA)は、FSMC規制の所轄官庁となります。アルゼンチンのFSMC規制内容は、米国やカナダの規制と部分的に一致しています - 指定されたリスク期間は同様であるものの、極東における規制区域の定義には、北緯20度から60度の間に位置するすべての港が含まれます。中国のすべての港が規制区域に含まれており、日本の規制区域の定義にも若干の変更があります。下記の表をご確認ください。
国名 | 港湾/都市名 | 指定されたリスク期間 |
ロシア極東 | Petropavlovsk-Kamchatskiy, Vanino, Nevelsk, Kholmsk, Korsakov, Kozmino, Slavyanka, Posiet; Zarubino, Vostochny, Nakhodka, Vladivostok | 6月15日~10月15日 |
China | すべての港 | 6月1日~9月30日 |
韓国 | Busan, Jinhae, Masan, Tongyeong, Jangseongpo, Okpo, Gohyeon, Incheon, Pyeongtaek-Dangjin, Daesan, Taean, Donghae-Mukho, Okgye, Hosan, Ulsan, Pohang, Gwangyang, Hadong, Samcheonpo, Yeosu, Gunsan, Mokpo, Boryeong | 6月1日~9月30日 |
日本 – 北部 | 青森、福島、北海道、岩手、宮城 | 6月15日~10月15日 |
日本 - 北部 | 秋田、山形、新潟、富山、石川 | 6月1日~9月30日 |
日本 – 中部 | 福井、茨城、千葉、東京、神奈川、静岡、愛知、三重 | 6月1日~9月30日 |
日本 – 西部 | 愛媛、福岡、広島、兵庫、香川、鹿児島、高知、熊本、京都、宮崎、長崎、大分、岡山、大阪、佐賀、島根、徳島、鳥取、和歌山、山口 | 5月15日~8月31日 |
日本 – 最南 | 沖縄 | 5月25日~6月30日 |
過去24ヶ月以内の指定されたリスク期間中に規制区域に入港した船舶は、リスク期間中寄港した港のリストおよび、船舶が最後に寄港したFSMC規制区域にて認定代行機関により発行されたFSMC不在証明書の写しをSENASAに提出する必要があります。
さらに、過去24ヶ月以内の指定されたリスク期間中以外で規制区域に入港した船舶についても、アルゼンチンの港に到着する少なくとも72時間前までに寄港した港のリストを提出する必要があります。
SENASAは、リスク評価に基づきFSMC検査を実施する場合があります。
今シーズンのFSMCに対処するためのヒントとコツ
FSMC未発生の国にてFSMCの定着を防ぐには、卵塊の有無の検査およびFSMCを除去・処分することが極めて重要です。
国によっては、飛翔シーズン中にリスクの高い区域へ入港した船舶に対し、出航前に指定された機関による検査を受け、FSMC不在証明書を取得することを義務付けています。FSMCの侵入の徴候がなければ、指定された機関は船舶にFSMCの不在を示す証明書を発行します。
発行される証明書は機関により異なりますが、「Certificate of Inspection of Freedom from the Flighted Spongy Moth Complex(FSMC 不在証明書)」または「Phytosanitary Certificate(植物検疫証明書)」が発行されます。
飛翔シーズン中に高リスク区域内の同一国または異なる国の複数の港へ寄港する場合、高リスク区域内の最後の港を出港する直前に、公認された検査機関によるFSMC検査を実施する必要があります。
検査の要件にかかわらず、FSMC飛翔シーズン中に高リスク区域内の港へ寄港する場合、FSMC侵入のリスクを軽減するため、船舶は以下の予防措置を講じることを推奨いたします:
- 高リスク区域内の港から出港する前に、船舶の船楼、甲板、船倉、貨物、揚貨装置など、FSMCの侵入可能なすべての場所を徹底的に目視検査する。仕向港までの航路で、再度詳細な目視検査を行う。
- 卵塊は、隙間、空洞、防水シートの下、ドアやパイプラインの裏側、照明器具の周り、ハッチコーミングの下など、隠れた場所で見つかることが多い。光に引き寄せられた雌のFSMCは、夜間照明に照らされた船体の表面に卵塊を産むことがある。
- ブリッジウィングの裏側など、船舶の船楼で手の届きにくい場所を検査するためには、双眼鏡を使う。同様に、棒に取り付けた小さな鏡を使用することで、ハッチコーミングの横にある配管の裏側など、見えにくい場所を検査することができる。
- 卵塊が見つかったら、削り取り、アルコール、熱湯、または焼却により処分する。
- 塗料による死滅は不可能であるため、卵塊の上に塗料は塗らない。同様に、高圧洗浄機を使って除去することは避ける。(卵塊の一部が海に流されてしまう可能性があり、卵塊は海水に浸しても死滅しないため。)
- 全ての目視検査およびFSMC卵塊の除去と処分の詳細を、本船のログブックに記録する。
用船契約条項
メンバーの皆様は、BIMCOの2023年定期用船契約におけるFSMC条項をご確認いただくことを推奨いたします。本条項は、FSMC飛翔シーズン中における船主および用船者の基本的な義務と責任に関して、商業的な解決策を提供することを目的としています。