UK P&Iクラブ理事会は、アテネで開催され、一連の実りある会議を終えた後、2025年5月19日に開催されたメンバー委員会をもって終了しました。
財務状況のご報告
理事会は2024年度クラブ業績をレビューし、好調な業績と資本力の大幅な増加を確認しました。自由準備金は、6.6%に達した投資収益率に牽引され、4億9,400万ドルとなりました。
また、理事会ではクラブ全体の資本力について検証し、ソルベンシー・レシオが242%と大幅に改善し、クラブのソルベンシーと格付機関のリスク選好度を大きく上回っていることに注目しました。
全体の保険引受成績は、コンバインド・レシオが116%となりましたが、これは当年度、プール保険金が史上最も高騰した年度の一つであったことにに加え、例年になく高額な大型クレームが多発したことが影響しています。
当クラブの固定保険料契約と用船者向けカバー引受は、それぞれコンバインド・レシオが93%と83%の好成績でした。相互保険事業以外の引受で約1,000万米ドルの黒字をもたらし、クラブ全体の業績に貢献しました。
理事会は、2022保険年度勘定を保険料の追加調整なしに閉鎖することに合意しました。
保険引受
当クラブは、保険金とこれに付随する諸費用をカバーするために十分な保険料収入によって、中期的に保険引受の均衡を保つことを目指しています。
2021年度以降、保険料は以前の軟調な市場サイクルを経て着実に回復しており、2025年度契約更新において、当クラブはその財政計画に沿った料率の引上げを行いました。2024年度は、業界全体で大型クレームが多発した影響を受けたため、コンバインド・レシオは116%となり、当クラブの財政計画より上回る結果となりました。
2024年3月、Dali号衝突事故のような注目度の高い事故が発生し、第4四半期には複数の大型クレームが報告されたため、プール年間費用は史上最高額となる可能性があります。
一方で明るい側面としては、数年にわたる業績改善措置によって、固定保険料契約と用船者向けカバー引受の収益性が安定しました。
当クラブは引き続きリスク選好を見直し、P&I相互保険と固定保険料契約のポートフォリオ構成を改善するために適切な措置を講じてまいります。
保険成績が思わしくないメンバーへのエクスポージャーを削減する措置を講じたにもかかわらず、相互保険加入総トン数は前年比560万トン増となり、既存メンバーだけでなく新規加入メンバーの皆様の力強いご支援を賜っていることが示されました。
クレーム
大型クレームが多発したため、理事会ではクレームの詳細と、そのような高額クレームに影響を与えた可能性のある根本的な傾向を中心に議論が行われました。大型クレームは多岐にわたり、様々な船種、航路に及んでいました。
特に以下の点について議論されました。
・航海の失敗から学ぶべき教訓
・コンテナ船での貨物火災にかかるコストの増加とそれに伴う課題
・社会的インフレによる損害額の高騰、特に船骸撤去に関連する費用の高騰
・米国の訴訟環境
・重大事故時における水先人の役割
・二元燃料船の新たな事故傾向
また、当クラブの安全&リスク・マネジメントチームによる解説や見解も共有され、技術的な背景の情報をもとに広範な議論が展開されました。
クレーム件数は全体的に減少傾向にあるものの、リスクや規制環境の変動により、クレームはより高額で複雑になっています。当クラブは、長年にわたり複雑なクレームに対応し、メンバーの皆様を支援してきた実績があり、こうした望ましくない事態が発生した場合でも、専門的助言と最適なガイダンスを提供できる態勢を整えています。
ワークショップ
当クラブは理事向けに、クラブの価値観や将来の展望に焦点を当てたインタラクティブワークショップを開催しました。多くの理事から貴重なご意見をいただき、活発な議論が交わされました。
その他の注目事項
サイバー攻撃が世界的に増加する中、当クラブがどのような対策を講じているかについて、メンバーの皆様の関心が集まりました。
安全&リスク・マネジメントチームは、船上システムへのサイバー脅威を軽減するための乗組員向けガイドラインを作成しており、近日中に全メンバーに共有される予定です。
当クラブはサステナビリティへの取り組みを継続的に進めており、最新の「サステナビリティ・レポート」が当クラブのウェブサイトにて公開されています。
最後に、海運業界において、特に米国との貿易に関して急速な変化が進むこの時期に、理事会は、米国の法改正の動向について、船主の責任制限に与える潜在的な影響等を含め幅広い議論を行いました。
UKP&Iクラブ 日本支店 訳