回覧13/20: 米国- カリフォルニア州 油流出関連の違反を厳罰化

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アウトライン

  • 2020年9月24日、カリフォルニア州で新しい法律が署名されました。この法改正は2021年1月1日以降、カリフォルニア州水域を航行するメンバーに適用されます。
  • 船舶からの油流出による損害については、1件の違反につき現行の罰金の2倍、最高100万米ドルの罰金が課されます。罰金は違反した日毎あるいは時間帯ごとに別々の違反とみなされます。
  • 1,000ガロンを超える油流出について、1ガロンにつき1,000米ドルまでの罰金を付加する権限が裁判所に付与されます。

いずれの場合も、違反者が、その行為はカリフォルニア州水域に油流出を引き起こすだろうということを知っていながら、またはこれを当然知りえたはずであった場合に、罰金が科せられる可能性があります。

メンバー各位、

2021年1月1日から、カリフォルニア州の水域における船舶からの油流出による損害に対して、新しい罰金が適用されます。

背景

2020年9月24日、カリフォルニア州知事は、カリフォルニア州議会法案(AB)3214に署名しました。その結果、カリフォルニア州のレンパート・キーン・シーストランド油流出事故防止および対応に関する法律(以下、同法)の改正により、罰則や罰金が強化・増額されることになりました。現行法では、このような民事および刑事罰はさまざまな法令のもとで科されており、州政府法典第8670.3条(Government Code§8670.3)では、責任の主体(違反者)を、個人、信託、企業、共同出資会社、あるいは(政府系企業、パートナーシップ、団体を含むがこれらに限定されない)法人と定義していることから、輸送チェーンに関与するその他当事者のうち、船主、オペレーターおよび船長も、この罰則の対象になります。

当初の議会法案は、次のような内容でした。

  1. カリフォルニア州賠償資力証明(COFR)の金額引き上げ - カリフォルニア州水域を航行するタンカーまたはタンカー以外の船舶は、油流出による損害をカバーする賠償資力を証明しなければならない。タンカーの場合は10億米ドルから20億米ドルへ、タンカー以外の船舶の場合は3億米ドルから6億米ドルへと、それぞ金額を引き上げる。
  2. 油流出時に科される罰金の水準を現行の2倍とする。
  3. 1,000ガロン以上の油流出について、1ガロンの超過ごとに最高10,000米ドルの罰金を追加して科す権限を裁判所に与える。

いずれの場合も、違反者が、その行為はカリフォルニア州水域で油流出を引き起こすであろうということを知っていながら、またはこれを当然知り得たはずであった場合に、責任があると判断されることになっていました。カリフォルニア州法の下では、「当然知りえたはずであった」というのは、単純な過失と同等に取り扱われるのです。

ご承知のとおり、国際グループ・クラブでは、タンカーおよびタンカー以外の船舶が、米国向けに航行するために取得しなければならない連邦または州のCOFRを発行しておりません。 しかし、COFRを取得するために必要となる、1事故につき1船舶あたり上限10億米ドルの油濁損害に対するカバーを提供しています。(これはクラブ・ルールの範囲内であれば第三者からのクレームだけでなく罰金も補償対象となります。) 

AB 3214 - カリフォルニア州議会

国際グループや地元の船主・エネルギー団体が法案起草者へ直接陳情を行った結果、提案されたCOFRの金額引き上げ案は、法案から削除されました。また、法案起草者は、1,000ガロンを超える油の流出があった場合に罰金額を1ガロン当たり最高1万米ドルから、最高1,000米ドルへと引き下げましたが、法案から完全に削除することや、罰金額をさらに引き下げることはできませんでした。法案起草者はまた、既存の罰金額を倍増にすることについても、当初の草案のままにしています。

カリフォルニア州知事-AB 3214に署名

その後、国際グループは国際海運会議所(ICS)と協力し、AB 3214に対する拒否権の行使をカリフォルニア州知事へ直接伝えました。カリフォルニア州内および世界的にも多くの関係者に与える影響を考慮し、国際グループとICSは、現地関係者に働きかけ、海事労働組合から同様の陳情をするように働き掛けました。しかし、残念ながら、知事は拒否権を行使しませんでした。知事は9月24日に同法案に署名し、改定法が2021年1月1日から発効することとなったのです。

改定法に基づき増額された罰金あるいは新たな罰金は、以下の場合に違反者に科されることとなります。

  1. 油流出について、知っていながら行政官の指示あるいは命令に従わなかった場合。
  2. 船舶が、障害の発生を知りながら1時間以内にコーストガードに通報せず、あるいは障害発生の間に船舶から油が海上へ流出したことを知りながら、通報しなかった場合。
  3. カリフォルニア州水域へ油が排出・流出すること、もしくはその原因となることを知りながら、これを行った場合、またはその者が油の排出・流出もしくはその原因となることを当然知り得ていたはずであった場合。
  4. 流出油の清掃、軽減、または除去が要求されていることを知りながら、これらを実行しなかった場合。

上記の禁止行為のいずれかに違反したことで有罪判決を受けた者は、違反した日ごと、または時間帯ごとに別々の違反とみなされ、各違反行為ごとに1万米ドル以上100万米ドル以下の罰金が科されます(メンバーにおかれては、前述のとおり、本回覧でお伝えする罰金に加え、他にも様々な民事・刑事罰が科される可能性があることにご注意ください)。法律はさらに、「裁判所は、細目(a) (つまり、上記1~4)に違反して有罪判決を受けた者に対し、1,000ガロンを超える流出油につき、1ガロン当たり最高 1,000米ドルの罰金を科すことができる」と規定しています。

上記1、2、および4については、罰金が適用されるのは行為が故意に行われた場合に限定される可能性があります。しかし3については、油流出を知りながら行った者だけではなく、「当然知り得ていたはずの者」にも言及しており、カリフォルニア州法のもとでは、単純な過失であっても、この項目に違反したとして船主に罰金が科される可能性があります。

国際グループは、汚染者に対して非常に高額の罰金が科される可能性があることを念頭においた上で、この新法が油濁リスクのカバーにおよぼす潜在的な影響を検討しております。この点については今後も引き続きご案内いたします。

国際グループとICS は、この新法から生じる業界の懸念に対応する措置を講じる可能性について検討しています。とはいえ、どのような措置を講じても、2021年1月1日のカリフォルニア州での法律発効日に変更が発生するということはありません。

メンバーの皆さまには、この点につきまして、できる限り早急にご案内いたします。本件についてご質問がある場合にはDr. Chao Wuへご連絡ください。

国際グループのすべてのクラブは、同様の回覧を発行しています。

UK P&I クラブ 日本支店

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PI Club

Date2020/10/09