太平洋岸北西部での穀物の荷役

Ecola State Park USA

太平洋沿岸北西部での穀物の積み込みは、本当に忍耐力が試されます。年間約 150 日から 180 日間も雨が降り年間総降水量は平均40インチに上ります。このような気候に不慣れな船主にとっては、小雨の中で穀物を最大限積載することや、降雨量の多い時期に貨物を湿気から守りつつ本船の遅延を防ぐことが重要です。

船舶の遅延は、船主と用船者間での紛争につながる可能性があります。雨天により船舶が遅延した場合、ターミナルは用船者に求償し、用船者は船主に支払うべき用船料からその金額を差引くことになります。その場合、船主は用船者よりその差引額を回収しなければなりません。

UK P&Iクラブは、ワシントン州およびオレゴン州の港で穀物を荷役する船主および用船者に以下のアドバイスを提供します。

太平洋岸北西部の穀物企業は、小雨以外の時でも荷役の継続を依頼する、バースの明け渡しを命じる、遅延に対する金銭的ペナルティ(現地では「Tariff for Delay of Berth」と呼ばれる)を課すなど、積極的に船舶に圧力をかけています。さらに船長は通常、本船貨物受取書(Mate's Receipts)、ひいては船荷証券(Ocean Bill of Lading)に、悪天候時に積載されたため貨物の状態が不明であることを反映させるよう指示されています。これはもちろん、銀行や金融機関が資金移動のための当該書類の受け取りを拒否するという問題にもつながります。(LOPは通常このような場合に代理店へ提出され、小雨時の荷役について正式に対応しています。)

通常、抗議状(Letter of Protest)が発行されない限り、船舶は問題が解決するまでバース係留中に拘留または逮捕されます。そして、ターミナルからはバースの明け渡しや積載時間に関するペナルティー、傭船者からはオフハイヤーが課されることになります。ほとんどのMate's Receiptsには「Said to be, Said to Weigh」と記されていますが、これは船舶が貨物の品質や状態について何も知らないからです。

穀物の船積み指示書には、その貨物の最大含水率(通常12%程度)が明記されています。荷役中、農務省連邦穀物検査局(FGIS)または米国ワシントン州農業省(WSDA)は、貨物のサンプリングとグレーディングを継続的に行い、水分含有量を常時カウントしています。これは、貨物がどれだけの湿気を吸収したか、または降雨にさらされたかについて、船舶に誤った印象を与えることがあります。当時の貨物の露出表面を反映するものではありませんが、降雨にさらされた貨物が何層にも重なっていることがあります。

悪天候の際船舶に乗り込み、穀物貨物の荷役の際に船長をサポートするのがサーベイヤーです。一般的なガイドラインとして、小雨時の荷役中にカーゴホールドより穀物粉が発散することが確認された場合、荷役の継続を検討することが提案されています。降水量が穀物粉の発散が無くなるほどの量に到達した場合、船長は荷役作業の停止を検討することができます。もちろん、ハッチカバーが閉まっている間は、貨物が湿気にさらされる可能性があります。私たちの知る限りでは、これらのアドバイスに従った場合にクレームが発生したことはありません。

コロンビア川流域のいくつかのターミナルでは、湿気によるダメージのリスクを軽減するため、船舶のハッチカバーにあるセメントポートにラバーガスケットを装着したレデューサーを使用しています。レデューサーは荷役用スパウトの下部に取り付けられ、レデューサーの外側には空気で膨らませたゴム製のインナーチューブが固定されているのが一般的です。その後、船舶はセメントポートを開き、レデューサーをセメントポートの開口部に設置します。荷役用スパウトは、インナーチューブが圧縮されるまで下げられ、ハッチカバーにシールが作られます。その後、カーゴホールドの通気孔を開け、貨物の荷役時に発生するカーゴホールド内の圧力を下げます。

シールの小さな漏れからカーゴホールドに入る湿気の量は通常、突然の雨によりカーゴホールドを開閉する際に入る雨の量より少なくなります。サーベイヤーは、オレゴン州ポートランド港第4ターミナルでソーダ灰を荷役した際にこのタイプのレデューサーを使用した経験があり、貨物受取人から不利なフィードバックは受けませんでした。ソーダ灰はご理解の通り、湿気の混入に非常に敏感で、セメントのように固い塊ができます。セメントポートより荷役するためハッチカバーを交換する際は、ガスケットの状態が良好であること、固定ボルトを正しい順序で締めること、つまり正反対に締めることが必要不可欠です。もちろん、レデューサーを使用する場合、円錐型に積み込まれた貨物がハッチカバーの下部に到達する前に、カーゴホールドの容量の約70%までしか積み込むことができません。貨物のトップオフやレベリングを行うためには、ハッチカバーを開ける必要があります。さらに、ハッチカバーを閉めた状態での荷役の場合、荷役終了後、各ハッチカバーを開け、ハッチカバーのガスケット、コーミング、コンプレッションバー、ドレインを清掃し、航海中にデッキ上へ海水が流入した際は海水を適切に排出できるようにしなければなりません。

この記事の執筆に協力してくださったDuncan Shoemaker & AssociatesのDave Shoemaker氏に深く感謝いたします。 (https://www.duncanshoemaker.com/)

George Radu

Claims Executive

Date2023/05/03