16/08 - 米国環境保護庁(EPA)のVessel General Permit(VGP)要件

Trulli

米国環境保護庁(EPA)のVessel General Permit(VGP)要件

2008年12月19日以降、漁船以外のすべての船舶(全長24メートル(79フィート)以上で、米国領海3マイル以内あるいは内海に入るすべての商船)は、通常の運航に付随して生じるバラスト排出をはじめとする汚染物質の排出に関し、環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency)が制定するVessel General Permit(VGP)の要件の適用対象となり、排出許可の対象船舶として承認を受けることが必要となりました。

同日以降に米国に寄港予定の船舶を運航されるメンバーは、EPAのVGP案の要件に準拠すべく準備を始めていただくことをお勧めします。EPAが最終決定するVGPの内容によっては修正が必要となることも考えられますのでご承知おきください。

EPAのVGP草案及びその要求事項の概要についてはEPAのウェブサイトをご参照ください。

背景

上記の商船は1973年5月以来、EPAの規則では、バラスト水を含む「通常の船舶運航に伴う汚染物質の排出」についてはCWA(Clean Water Act:水質浄化法)の下でのNational Pollutant Discharge Elimination System(NPDES)の対象外となっていました。

2008年7月23日に、米国連邦第9巡回控訴裁判所は「EPAがNPDESの排出規制から特定の海上排水を除外することは、CWA法の下での権限を超えている」との地方裁判所の判決を支持しました。この裁決に基づき、EPAはNPDES規制の下で、通常の船舶運航に伴う汚染物質の排出を規制することとしました。

EPAは本規制のもとで許可を与えるためのVGP草案を公表、最終的に2008年12月19日をもって本規制は施行される見込みです。

EPAはCWA法の下でその義務を果たすべく、通常の船舶運航に伴う汚染物質の排出に関してすべての商船を包括的に許可するVGP Coveringを発行します。各船舶毎に許可を取得する必要はなく、その代わり本船運航者はVGPの適用を受ける意向を通知するNotice of Intent(NOI)を提出することでVGPが適用されることになります。 

2008年12月19日以降のVGP要件

まだVGP要件は最終決定していませんが、EPAは裁判所の決定した期限の延長手続きをせず、近々最終のVGPを発表すると思われますので2008年12月19日以降は船舶オペレータはVGPの要件に準拠することが求められます。しかしEPAがVGPを発行しても当初すべての対象船舶は、各オペレータがNotice of Intentを提出するまで許可されたと見なされると思われます。VGPの対象となる排出物質については、別紙リストをご参照ください。

現在発表されているVGP草案は、米国コースト・ガードの「バラスト水に関する管理と交換に関する基準(33 C.F.R Part 151)及びバラスト水に関する追加要件」を盛り込んでいます。さらに、すべての対象船舶に対して、デッキ流出水、ビルジ排水、生活雑排水など28種類にわたる排出物質に関する要件を定めています。

それぞれの排出の種類によって起こりうる様々な状況に応じて採るべき措置を定め、場合によっては排出される物質に応じた排出規制を設けた上で、排出許可が出されることになります。

さらに、これら基準及び共通の要件に加え、客船、調査船、油および石油タンカー、大型フェリーなど8つの特定船種に対する要件が別途設けられています。

VGP案には、是正措置、検査、監視、記録保持及び報告に関する規定も定められています。

2009年6月19日から9月19日までに Notice of Intentを提出

最終的にVGP要件が2008年12月19日に施行した場合には、VGPのもとで排出許可を取得するために、すべての対象船舶は2009年6月19日以降同9月19日以前にNotice of Intentを提出することになります。

VGPの下で排出許可(VGP Coverage)を得るためには、登録トン数が300トン以上、あるいは8立方メートル(2,113ガロン)以上のバラスト水を保持あるいは排出可能な船舶の船主またはオペレータは、VGP施行日より6ヶ月以降9ヶ月以内にNOIを提出しなければなりません。

EPAが本船オペレータよりNotice of Intentを受領したその日をもって、VGPの包括的排出許可が本船に対しカバーされることになり、VGPに基づいた排出の権限が与えられます。ただし、2009年6月30日以降に就航した船舶についてはNotice of Intent受領後30日以降に排出許可船舶として認証されます。この包括的許可(Coverage)の有効期間は5年間です。

EPAは現在、Notice of Intentの電子申請システムを構築しています。このシステムが稼動すれば、申請者はEPAのCentral Data Exchangeに登録し、電子的に提出できるようになります。申請費用は無料です。 

罰則等

VGPの施行後は、EPAがVGPの規則違反に対する監督機関となります。 現在のところEPAと米国コースト・ガードの間でどのように調査協力や取締を実施していくのかは明らかではありません。

EPAはCWA法の下でNPDESの排出規制を適用するにあたり、許可なく、あるいは排出限度を超えて汚染物質を排出したことによる違反行為に対して、民事及び刑事上の罰則を課すとしており、さらには違反者に対する民事訴訟も認めています。

CWA法の下では米国水域内での排出許可違反、または無許可排出に対する罰金は、1つの違反につき一日当たり最高27,500ドルになります。また、罰則は行政的罰則に加え、過失もしくは故意による違反行為に対しては重い刑事罰が適用されます。 

勧告

最終的なVGPは草案と大きく変わることはないと思われます。UKクラブとしては、この規制の準拠日が迫っていますので、VGP案に基づいた要求事項に対応する準備を始めていただくようお勧めします。

メンバーにおかれてましては、本VGPの対象となる本船からの様々な排出について見直していただき、これらの排出及び法令順守に必要な書類の記録管理の担当責任者の研修を始めていただくようお願いします。

多くの米国QI及びISM関連企業が本プログラムの準備のための助言やサポートを提供しています。法令順守のためにそれらサービスをご利用いただくようお願いします。 

Staff Author

PI Club

Date2008/11/19