回覧09/16 - 対シリア制裁

Trulli

アウトライン

  • EU と米国は、シリア政府および対象者に指定されている個人/団体に対する貿易制裁を継続しています。
  • 本回覧はシリア関連の海運及びその保険提供に適用される制裁の概要について、メンバーにお知らせするものです。

組合員各位

対シリア制裁 

背景 

EU と米国は共に、シリア政府および指定の個人/団体に対する貿易制裁を継続しています。 本回覧はシリア関連の海 運及びその保険提供に適用される制裁の概要についてお知らせすると共に、最近の進捗状況と派生する影響について メンバーにお伝えするものです。

EU による対シリア制裁 

EU の対シリア制裁は、2011 年 5 月より行われています。現行の EU による貿易制裁は、 EU 理事会規則(Council Regulation)No.36/2012 とその改訂版、及び No.509/2012 を改定した No.168/2012 に基づいています。海運及び海 上保険に最も関連している規定は、以下の通りです。

  • リストされた贅沢品ならびに特定の軍民両用物資、石油及び石油・化学製品の販売、提供、輸送、輸出の禁止
  • 直接間接を問わず、経済的援助およびそれらに関する(再)保険の提供の禁止
  • シリア産原油及び石油製品の輸送の禁止
  • シリアにおける石油およびガス産業で使用される、また発電設備の新設事業で使用される主要設備および技術の供与の禁止
  • シリア国家やその代理の者に対する(再)保険の提供の禁止
  • 内部抑圧に使われる可能性のある武器及びそれに関連するすべての物資の販売、提供、輸送、輸出の禁止
  • シリア国籍の個人/団体への資産凍結及び一般市民に対する暴力的弾圧に責任を有するとみられる特定個人への資金および(物資提供を含む)経済的資源の提供の禁止

加えて、2014 年 12 月 12 日付で発せられた EU 理事会規則 1323/2014 によれば、シリアのすべての団体ならびにシリ ア国内での使用を目的としたジェット燃料及び燃料添加剤の販売、提供、輸送、輸出、またそれらに関する(再)保険 も禁止されています。例外は非常に限定的です。 

米国による対シリア制裁 

米国もまたシリア政府・シリア個人/団体に対し、貿易およびそれに関連する制裁適用を継続しています。これは特 に大統領令 13582 に拠るものであり、禁止事項には以下が含まれています。

  • シリアへの新規投資
  • 直接もしくは間接的なすべてのシリア向けサービスの(再)輸出、販売、提供
  • シリア産石油及び石油製品の輸入、取引

米国による制裁は通常、非米国民への域外適用効力は有しませんが、大統領令 13582 ではすべての対象者(非米国民 も含む)が米国内に所有する資産が凍結されるとさだめています。制裁対象者の条件は、「実質的な援助・支援、ま たは金銭的・物質的・技術的な支援及び物資・サービスを、資産及び権利が本大統領令に従い凍結された者へ提供し た者」とされています。この規定での「実質的」という用語は厳格に定義されておらず、状況に応じ判断されます。

進展 

2015 年、米国財務省外国資産管理局(以下 OFAC: Office of Foreign Asset Control)により、海運業に従事するシ リア法人が複数指定され、その結果米国民はそれらの法人との取引が禁止されました。 指定されたシリア法人:

  • シリア港総局 (General Directorate of Syrian Ports)
  • ラタキア港湾公社 (Lattakia Port General Company)
  • タルトゥース港湾公社 (Tartous Port General Company)
  • シリア港湾当局 (Syrian General Authority for Maritime Transport)
  • シリア・シッピング・エージェンシー(Syrian General Shipping Agencies Company(Shipco)
  • シリア商工会議所 (Syrian Chamber of Commerce)

加えて OFAC は、実質的にシリア政府援助のため LPG とガスオイルを輸送していたとされる、その他8法人(非米国 籍)と船舶7隻を指定しています。それらの貨物は、OFAC が「政府のコントロール下にある」と表現している Banias 港を通して運ばれていました。

上記のような指定からもわかるように、貨物とシリア政府との関係性への懸念から、シリアに運ばれる LPG・ガスオ イルが制裁取締者による監視対象となることは明らかです。そのためメンバーの皆様には、上記のような貨物輸送を 依頼された際、貨物の荷受人及び最終消費者の身元確認を行うなど、相当の注意を払っていただく必要があります。

また、シリア石油輸送会社(以下 SCOT: the Syrian Company for Oil Transport)が、Banias 港で荷揚げする船舶 のためのパイプラインネットワークの主な管理者とされています。そのため、SCOT は EU ならびに米国による制裁で 指定された法人であり、SCOT へのすべての支払は制裁違反とみなされます。Banias 港を利用されるメンバーの皆様 は、特別費用や入港料を含んでいたとしても、SCOT へのいかなる支出も行われないように厳重に注意していただく必 要があります。

最後に、メンバーの皆様は、米国の銀行及び米国ドルは、シリアに関連するいかなる取引にも使用できないことにも 留意していただく必要があります。

現行の貿易制裁と特定のシリア個人/団体への指定が効力を持つ間は、シリアへ又はシリアからの貿易を予定される メンバーの皆様は、トーマス・ミラーへご相談されることを強くお薦めいたします。またシリアへの航海が確定して いるメンバーの皆様は、傭船契約中に制裁法を犯す危険を軽減するためにも、荷送人、荷受人、代表者まですべての 関係者に対し適切な注意を払う必要があります。

国際 P&I グループの全てのクラブが同様の内容の回覧を発行しています。

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Staff Author

PI Club

Date2016/05/10