回覧02/24:ロシア産原油等プライスキャップ制度の更新

Oil tanker

メンバー各位、

ロシア産原油等プライスキャップ制度の更新

プライスキャップ制度

メンバーの皆様は、ロシア貨物CN2709およびCN2710の輸送また保険を規制するプライスキャップ・スキームの詳細について、クラブ回覧05/23をご参照ください。プライスキャップ制度が導入されて以来、宣誓書の保有と共有は、制度遵守の特徴となっておりました。この度、宣誓書(attestation)モデルの変更が発表されました。

プライスキャップ同志国(G7、オーストラリア、EU)はプライスキャップルールの更新について声明を発表しましたCoalition-Statement-on-Price-Cap-Rule-Updates.pdf (treasury.gov)。この変更はプライスキャップ制度の実施を支援し、悪質な業者が不透明な輸送コストを利用して、プライスキャップ上限以上で購入した石油を偽装する機会を減らすことで、制裁逃れを防止することを目的とします。これらの変更は、(英国と米国では)2024年2月19日より、また(EUでは)2024年2月20日以降に積み込まれる貨物に対して発効します。


主な変更点は以下の2点です:

  • 航海ごとに宣誓書の提出が義務付けられ、年間宣誓書(Annual attestation)は認められなくなります。貨物が船舶間貨物移送(STS)で他の船舶に移送される場合は新たな航海として更なる宣誓書が必要とされます。

航海ごとの宣誓書は以下のように提出する必要があります:

    • 船主は用船者又は他の契約当事者から受領する宣誓書を積込み前に取得しなければなりません。これは米国のガイダンスで強調されています。貨物の積込み前に宣誓書を取得しない限り、船主はその貨物がプライスキャップ制度を遵守しているかどうかを確認できません。 EUガイダンスでは、「船主は必要なデューデリジェンスを実施することが求められており、このデューデリジェンスは顧客から提出された宣誓書に頼るのが合理的である」と繰り返し述べられています。
    • 船主が P&I クラブに提出する宣誓書は、積み込みから30 日以内に実行しなければなりません。この期間内に宣誓書が提出されない限り、保険は適用されません。
  • 付帯費用の項目別価格情報は、価格情報にアクセスできる企業が記録し、船主とP&Iクラブの要求に応じて提出することになっています。船主が付帯費用情報を30日以内に入手する権利を有していることをしっかりと念頭に置いていただき、メンバーが、そのような権利を行使できるよう、契約に適切な条項を含めるべきです。

メンバーがこれを怠った場合は、メンバー自身のクラブに対する情報提供義務を果たす能力に影響を与え、結果としてP&Iカバーを毀損する可能性があります。各P&Iクラブは、船主が要求に応じてこの情報を入手し共有することを確実にしなければなりません。EU規則833/2014が改正され、サービスプロバイダーは要求に応じて項目別の価格情報を入手する権利を持つべきであると規定されました。従って、メンバーの皆様にはP&Iクラブや他のサービスプロバイダーと迅速に情報を共有できるよう、30日以内のより短い期間にこれらの情報を得る権利を確保することを検討していただかなければなりません。

英国とEUのガイダンスに定める記録・共有すべき付帯費用の項目は、以下の通り記載されています:

「運賃保険料込み(CIF)の契約の場合は、以下を対象とする必要があります:

  • 費用:輸出ライセンス、検品、売主の港での物品の配送料および積載料、梱包費用、通関手数料、関税および税金、物品の損傷または滅失に対する補償、積載/輸出地での入港税、積載/輸出地での港湾サービス料。
  • 保険:買い手の商品が目的地の港で引き渡されるまでの貨物の保険料。
  • 運賃:売主の港から買主の仕向港まで、海上または水路で貨物を輸送する費用。
  • その他の費用:一般ランセンスに遵守していることを証明し、取引が合法的に行われていることを保証するためのその他費用。(EU FAQでは、これら費用には「船舶間貨物移送(STS)のための補助的サービスの提供関連費用」が含まれると付け加えています)。

本船渡し(FOB)契約の場合は、以下をカバーする必要があります:

  • 費用:輸出品の梱包費用、売主の港へ製品を輸送するための積載・配送費用、輸出税、関税と通関手数料、製品の船舶への積載に伴う移送料、取扱料および積込み費用」。

提出された宣誓書やその他の費用情報を信頼できるようにするため、メンバーは提供された情報の信頼性と正確性について適切なデューデリジェンスを実施しなければなりません。

最後に、プライス・キャップの石油輸送に携わる当事者は、当初、「3つのTiers」のいずれかに分類されており、貨物の価額情報に直接アクセスできない船主やP&Iクラブを含めた法人はTier 3法人に属していましたが、この度、英国とEUはTier 3法人をTier 3AとTier 3Bに分けることとしました。Tier 3Aに含まれる法人を、P&Iクラブ、船体保険会社、貨物保険会社、保険ブローカー、船主、船舶管理会社とし、Tier 3B法人を、再保険会社と一般的な融資制度を提供する金融機関としました。英国とEUのガイダンスにおける宣誓書モデルの変更は、Tier3B法人は適用されないこととなりました。


要求される宣誓書の書式とクラブの保険カバー

上記の変更により、2024保険年度は、航海ごとの宣誓書が必要となり、本回覧の附則Aに記載されている改訂後の書式での提出が必要となります。

加入船舶がロシア産の原油または石油製品の輸送に従事している場合、クラブが支援を提供するためには、メンバーの皆様は:

1)  附則Aに記載の宣誓書を提出しなければなりません。

2)  航海情報をSPIRE報告書(Circular 05/23参照)に記載しなければなりません。メンバーの皆様には、貨物の種類を問わず、ロシアへの寄港またはロシア水域を通過する場合は、当クラブへ航海情報を提供しなければならないことにご留意ください。

上記の情報および書類を提出いただいた後、当クラブはその内容を確認したうえで、更に追加情報または明確な情報を要求させていただく場合があります。これには、本回覧に記載している付帯費用の項目別価格情報を含むことがあります。メンバーにおかれては、当クラブにこの情報を提供できない場合、当クラブによる保険カバーの提供を毀損する可能性があることにご留意ください。当クラブがプライスキャップ制度を遵守していることが十分に確認できない場合、または、関係当局からの要請に応じる際に、これら項目別価格情報をメンバーに要請することがあることをご承知おきください。当クラブが十分な安心感を得られない理由としては、取引関係者に懸念がある場合、クラブ自身のデューデリジェンスから生じる懸念がある場合、違反の疑いに関する情報を得た場合(オープンソースからの報告や関係当局からの要請など)が考えられます。EU規則では、「管轄当局は、プライスキャップ制度の遵守を確認するために、サプライチェーンにおける位置に関係なく、いかなる行為者に対しても、いつでも(項目別価格の)情報を要求することができる」としています。  

当クラブはまずプライスキャップ制度の遵守を確認する必要があるため、当クラブのサポート提供に遅れが生じる可能性があることを予めご承知おきください。 

EUの第12次制裁パッケージ

EUは2023年12月18日、第12次対ロシア制裁パッケージを採択しました。上記のプライスキャップ制度の変更に加え、海運業界にとっての第12次制裁パッケージの主な特徴は以下の通りです:

  • タンカー売却の通知 - ロシア人への、あるいはロシアでの使用を目的としたタンカーの売却や所有権移転の禁止に加え、EUは、タンカーを第三国に売却する場合にも、広くタンカー売却の通知義務を導入しました。規則833/2014の第3q(4)条は、「加盟国の国民、加盟国に居住する自然人、EU域内に設立された法人、団体、組織による、附属書XXVに記載された原油または石油製品の輸送用タンカーの第三国への所有権移転を伴うすべての売買について、第1項で禁止されている売却または所有権の移転を除き、HSコードex 8901 20に該当するタンカーの場合、当該タンカーの所有者がどこの国民、居住者またはどこで設立されたのかを、加盟国の管轄当局に直ちに通知しなければなりません。通知義務は遡及的であり、2022年12月5日から2023年12月19日までのすべての売却は、2024年2月20日までに通知する必要があります。2023年12月19日以降の売却は速やかに通知する必要があります。
  • ロシアを原産地とするダイヤモンド、ロシアから輸出されるダイヤモンド、ロシアを経由するダイヤモンド、および第三国で加工されたロシア産ダイヤモンドの直接的および間接的な輸入、購入、譲渡の禁止。ロシア産ダイヤモンドの輸入禁止は2024年1月1日から適用され、第三国で加工されたロシア産ダイヤモンドの輸入禁止は2024年3月1日から段階的に実施され、2024年9月1日までに完了します。
  • 銑鉄、銅線、アルミ線、箔管(foil tube)、パイプなど、ロシアに大きな収益をもたらす商品の輸入をさらに制限します(対象となるほとんどの金属商品について、2023年12月19日以前に締結された契約については、2024年3月20日まで段階的縮小期間が設けられます)。
  • 液化石油ガスの輸入禁止(2023年12月19日以前に締結された契約については、2024年12月20日まで段階的縮小期間を設けます)。
  • 軍民両用物品と技術に関する輸出規制の強化。
  • 輸出業者に対し、特定の機密性の高い商品や技術のロシアへの再輸出を契約で禁止する義務を課す。(2023年12月19日以前に締結された契約については、2024年12月20日まで、またはその満了日のいずれか早い日まで段階的縮小期間を設けます)関連商品とは、航空、ジェット燃料、銃器、共通の最優先リストに掲載されている商品に関するものです。
  • 140以上の法人と個人に対する制裁対象者の追加

ロシア産バンカーの補油

EUはこのたび、FAQ18aの「EUの船舶がロシア産石油製品を補油することは禁止されているか?」という問いに対し、以下の斜字体の文言を追加し、EUの立場を明確にしました:

「EU船舶がロシアでロシア産石油製品を補油することは、可能であるが、ただし、これはロシアにおいて購入者の不可欠なニーズに応えるために購入が必要である場合に限る。(Article 3m paragraph 9) これはタンカーの運航上、航海を継続するために必要な燃料補給を意味する。

このFAQでは、航海中の「タンカー」の運航に必要であれば燃料補給が可能であると言及していますが、これは「原油プライスキャップ」のFAQで更新したものであり、すべてのタイプの船舶についても同じ立場であると考えられます。

ロシアが関与するすべての取引は、引き続き非常に重要な法的規制の対象となります。適用される制裁措置に違反する取引には保険カバーを適用できないため、メンバーはロシアとの間の取引やロシア経由の取引に従事する前に、取引関係者、貨物、取引について徹底したデューデリジェンスを尽くしていただくようお願いします。

国際グループのすべてのクラブは同様の回覧を発行しています。

参考資料:

ロシア産石油及び石油製品に対するプライスキャップ制度の実施に関するOFACガイダンス:download (treasury.gov)

英国海事サービス禁止および石油プライスキャップに関する産業ガイダンス OFSI OPC Guidance - December 2023.docx (publishing.service.gov.uk)

プライスキャップに関するEUガイダンス:Oil price cap - European Commission (europa.eu)

附則A

Issued to:

本宣誓書は下記クラブに対して発行するものである。

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Name of P&I Club

P&Iクラブの名称

_____________________________________

Address of P&I Club

P&I クラブの住所

 

VOYAGE PRICE CAP ATTESTATION FOR RUSSIAN ORIGIN OIL AND/OR PETROLEUM PRODUCTS

一航海におけるロシア産原油/石油製品のプライスキャップ制度に関する宣誓書

 

Vessel (船名):                                               ………………………

IMO number (IMO番号):                                  ………………………

Load port or place (船積港/船積地):                  ………………………

Expected place of discharge (荷揚げ予定地):                  ………………………

Expected / actual date of loading (船積予定日/実施日):      ..…………………….

Name of charterers (用船者名):                                       ………………………

1.The Assured represents and warrants that for any provision of services related to the maritime transportation of Russian origin oil or Petroleum Products (as detailed above) by any party entitled to cover such transportation has been, is, and will be in compliance with the price cap policy administered and enforced by the governments of the United Kingdom, the United States, the European Union and its Member States, including their allies and partners such as Japan and Norway. The Assured represents and warrants that it has not taken and will not take any action with the effect or purpose of evading, circumventing, or attempting to violate the price cap policy.

1.ロシア産原油または石油製品(上記に詳述)の海上輸送に関連して補償提供の適格を有するあらゆる者が行うサービス提供について、被保険者は、いかなる時においても、英国、米国、EUとその加盟国、および日本やノルウェーなどの同盟国・パートナーによって管理・実行されているプライスキャップ制度に遵守することを、表明・保証する。

2.The Assured shall provide to the Club information and documentation related to compliance with the price cap policy, including any relevant attestation, itemised price information for ancillary costs and proof of reporting provided by a Tier 1 or Tier 2 actor, as quickly as practicable upon request and always within 30 days of the request.

2.被保険者は、要請に応じて、関連する宣誓書、付帯費用の項目別価格情報、Tier1またはTier2に属する者によって提供されるレポートの証拠を含む、プライスキャップ制度遵守にかかわる情報および書類を、実務上可能な限り速やかにクラブに提供するものとし、かつ、常に要請があってから30日以内とする。

3.In the event the Assured becomes aware of circumstances that provide reasonable cause to suspect that it may have been or may be involved in any activity contrary to the price cap policy, the Assured shall immediately notify the Club of such circumstances. The Club may notify relevant authorities of information that provides a reasonable cause to suspect that a violation of the price cap policy has taken place.

3.被保険者が、プライスキャップポリシーに違反する行為に関与している、または関与している可能性があると疑われる合理的な根拠となる状況を認識した場合、被保険者は直ちにその状況をクラブに通知するものとします。当クラブは、プライスキャップポリシーに違反する行為が行われたと疑うに足りる合理的な根拠となる情報を関係当局に通知することができる。

4.The Club shall not indemnify an Assured against any liabilities, costs or expenses where the provision of cover, the payment of any claim, or the provision of any benefit in respect of those liabilities, may expose the Club to risk of violation of the price cap policy. In the event the Club determines that a violation of the price cap policy has taken place, the Club may immediately terminate the policy and will have no liability whatsoever under the policy beyond what is permitted by applicable law.

4.当クラブは、補償の提供、クレームの支払い、またはこれらの負債に関する給付の提供が、プライスキャップポリシー違反のリスクにさらされる可能性がある場合、被保険者の負債、費用または経費を補償しないものとする。当クラブがプライスキャップポリシー違反が発生したと判断した場合、当クラブは本保険を直ちに解除することができ、準拠法で認められている範囲を超えて、本保険の下でのいかなる責任も負わないものとする。

5.The Assured and the Club will retain the executed version of this attestation for five years.

5.被保険者およびクラブは、本宣誓書を5年間保管します。

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Policy Number(s) or other reference

保険証券番号またはその他の参照番号

 

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Name of Assured

被保険者名

 

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Address of Assured

被保険者の住所

 

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Represented by (name)

代理人(氏名)

 

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Position of representative

代表者の役職

 

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Signature

署名

 

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Date of signature

署名日

 

Nigel Carden

Chairman

Date2024/02/01