06/14 - クリミア及びセバストーポリに係るEUの制裁措置 - クリミア又はセバストーポリ産の物品の輸入禁止に関する2014年6月23日付EU理事会規則(Council Regulation (EU) No 692/2014)
アウトライン
- EUはクリミア及びセバストーポリで産出された物品及び、その輸入に係る保険・再保険など、直接的・間接的を問わず、資金の提供や経済援助について経済制裁を発動しました。
- この制裁に該当する可能性のあるメンバーは、クリミア及びセバストーポリからの運送契約を締結する前にアドバイスを求めていただくよう助言します。
- 施行日は2014年6月25日です。
- 国際グループのすべてのクラブは同様の回覧を発行しています。
組合員各位
クリミア及びセバストーポリに係るEUの制裁措置 - クリミア又はセバストーポリ産の物品の輸入禁止に関する2014年6月23日付EU理事会規則(Council Regulation (EU) No 692/2014)
EUは、ロシアによるクリミア及びセバストーポリ編入に対し、2014年6月23日付でEU理事会規則(Council Regulation (EU) No 692/2014、以下、同規則)を発し、クリミア又はセバストーポリで産出された物品の輸入及びこれらの輸入に係る保険・再保険の提供をはじめ、資金提供や経済援助について、直接的・間接的を問わず、禁止する経済制裁を発動しました。
禁止事項
1) 同規則第2条は、下記の行為を禁止しています。
- クリミア又はセバストーポリで産出された物品をEUへ輸入すること。
- クリミア又はセバストーポリで産出された物品の輸入に係る保険及び再保険をはじめ、直接的・間接的を問わず、資金の提供や経済援助。
2) 同規則における「クリミア又はセバストーポリで産出された物品」とは、1992年10月12日付Regulation EEC 2913/92の第23条及び第24条に従い、クリミア又はセバストーポリにおいて完全に取得されたもの、或いは、同地で最後に実質的加工されたものと定義されています。Regulation 2913/92の第23条で「国内で産出された物品」とは、その国で完全に取得又は生産されたものと規定されており、「国内で完全に取得された物品」とは以下を意味するとしています。
(a) 当該国内で採掘された鉱物性生産品
(b) 国内で収穫された植物性生産品
(c) 国内で生まれ、かつ生育した生動物
(d) 国内で飼育された生動物から得られた物品
(e) 国内で狩猟又は漁ろうにより得られた物品
(f) 当該国で登記され、その国を旗国とする船舶により、同国の領海の外で採捕された水産物
(g) 加工船上で取得し又は上記(f)に掲げる水産物から加工された物品。ただし、これら加工船は当該国に登録されその国を旗国とするものに限る
(h) 当該国が海底又はその下の土壌資源開発の独占権を有する領海外の海底又は下層土から採掘された産物
(i) 製造作業や使用済みの物品から産出された廃棄物及びスクラップで、同国内で収集され、原材料回収用のみに適するもの
(j) 同国で製造された物品で、上記(a)から(i)の物品、又はその製造過程で派生したものから産出されたもの
3) Regulation EEC 2913/92の第24条は、複数の国が関与して製造された物品は、最後の実質的加工がおこなわれ、経済的に正当化され、そのための設備を備えた施設で、製造工程が行われ、新製品が製造されるに至るか、又は重要な製造工程を行った国で産出されたものとみなすと規定しています。
4) 今回の新規則はクリミア及びセバストーポリからEUへの貿易活動を包括的に制限しており、規制に該当する可能性のあるメンバー(下記項目7、8及び9 ご参照)は、クリミア及びセバストーポリからの運送契約を締結する前に、当クラブにご相談ください。保険・再保険の提供が禁止となったことを踏まえ、また相互保険のメンバーを保護するため、国際P&Iグループ加盟の各クラブは、制裁対象となる行為に対し保険又は再保険を提供しないことを確実にし、また、クラブが制裁による禁止項目を意図的に回避するような行為に加わらないことを確実にするために、引き続き、保険約款及び加入条件で規定する現行の保険てん補の停止及び除外規定に、依拠することになります。
5) 同規則の第6条は、同規則により禁止される契約や取引に関するクレームの支払い(支払保証に関するクレームや補償状に係るクレームを含む)について、当該クレームが 2014年3月17日付Council Regulation 269/2014で制裁対象に指定された個人、法人あるいは団体により提起された場合や、EU加盟国の当局により同規則に規定された禁止事項への違反が判明した個人、法人あるいは団体により提起された場合、又はクリミアやセバストーポリ産の物品の輸入に関するクレームの場合に、保険金の支払いを禁止しています。
除外規定
6) 同規則の第3条では、下記の場合、禁止規定は適用されないと規定しています。
(a) 2014年6月25日までに締結された契約、又はその履行に必要な付随契約で、2014年9月26日まで実施されるもの。ただし、当該契約を遂行しようとする者は、遅くともその10日前までにEU加盟国当局に事前通知すること。
(b) クリミアもしくはセバストーポリ産ではあるがウクライナ当局が審査した物品で、Regulation (EU) No 978/2012及びRegulation (EU) No 374/2014、あるいはEU/ウクライナ協定に従い、特恵関税制度の条件を満たし原産地証明書が発行されているもの。
適用範囲
7) 同規則の第10条では、適用範囲としてEU領域内、EU加盟国の管轄区域内にある船舶上、EU加盟国の全国民(所在地を問わない)、EU加盟国の法の基で設立されたEU領域内外の法人、企業あるいは団体に対して、同規則が適用されると規定しています。
8) また、同規則は、EU内の全域あるいは一地域で行うあらゆるビジネスに関し、あらゆる法人、企業あるいは団体に適用するとしています。
9) この広範な適用範囲により、EUの国民、EU居住者であるメンバー、そしてEU加盟国を旗国とする船舶が、禁止された貿易を行うことは違法となります。さらに、保険・再保険の提供が禁止されたことにより、EU居住者であるP&Iクラブは、禁止された貿易活動に従事するメンバーに対し、船籍や国籍を問わず、保険を提供することができません。また、禁止活動に対する制裁は、禁止活動及びその保険がEU全域あるいは一地域に関係するビジネスである限り、EUに居住しないメンバーやクラブにも適用されます。国際グループに加盟する全クラブの保険約款は、制裁を理由として保険を提供することが違法となる取引や活動について、保険てん補を除外する規定を設けています。
10) 同規則は2014年6月25日に発効しています。
国際P&Iグループの全てのクラブが同様の内容の回覧を発行しています。