国際P&Iグループ ‐ 2023年度プールおよび再保険契約

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2023保険年度の国際グループ(IG)プーリングおよびIG超過額再保険契約等(以後、総称してGXL)が最終決定されました。

メンバーの皆様は国際グループのウェブサイトでも内容を確認いただけます。

本プレスリリースでは、2023保険年度のIG再保険料率の背景について詳しく説明いたします。

現在までに、IGは2022保険年度のプール・クレームが良好に推移していることを確認しています。しかし、直近の数年間の悪化や、ハリケーン「イアン」、ロシア・ウクライナ紛争はIGの再保険者に大きな影響を与えており、2023年度契約更新にあたり、困難な市況につながりました。しかし、2022年度の支払増と相まって、IGは船主の皆様の保険料率をわずかに引き上げることで2023年度の再保険プログラムを更新することができました。

GXLにより、IGクラブは、ほとんどの保険リスクについて、高レベルで無制限に複数回回収できる再保険を提供することができることとなりました。IGは今回、再保険契約を更新するにあたり、幹事会社であるAXA XLや、長年のパートナーである他の再保険者の方々の努力に感謝しています。

IGはGXLの中で、今回契約期間が終了した2つの複数年個別保険契約(1億ドルを超える6.5億ドルの第1レイヤーの各10%ずつ)のうち、1契約を更新し、もう1つの10%契約については5%の契約に切り換えることとしました。つまり、GXLのうち、個別保険以外のIG超過額再保険の割合が増加して75%となったことを意味します。

その75%部分については、COVID-19、悪意のあるサイバー攻撃、パンデミックのリスクの補償範囲が拡大され、1億ドルを超える6.5億米ドルまでのすべてのクレームに対して追加負担なく無制限に複数回回収できることとなりました。なお7.5億ドル以上の部分については累積回収限度額が設定されています。

IG再保険委員会は、各船種のコスト配分の公平性を確保するため、毎年、使用する船種のカテゴリーについて検討しています。今回も十分に検証した結果、船種のカテゴリは変更せず、再保険料率は、下記に記載する表のとおり調整されることになりました。

IG再保険委員会委員長マイク・ホールの声明

「再保険市場の厳しい状況にもかかわらず、2023年度は船主にとって非常にポジティブな再保険契約の更新を発表できることを嬉しく思います。ロシア・ウクライナ紛争による様々な課題にもかかわらず、GXLの再保険契約の締結に大きな悪影響を与えることなく、COVID-19パンデミックを乗り切ったことを、IGが証明することができました。

IGと、GXL再保険契約の幹事会社であるAXA XLや長年のパートナーである他の再保険者の方々の間で、すばらしいコミュニケーションをとることができ、関係者の皆様に、世界の海運業界をサポートするため、IG再保険の重要性についてご理解いただきました。今年の再保険契約の締結に、変わらぬ支援をいただいた再保険パートナーやブローカーの皆様に感謝いたします。」

再保険契約更新の概要

主要部分のGXL(第1~3レイヤー、1億米ドルを超える20億米ドルの部分)は、3つのレイヤー構造に戻りました(2020年度、2021年度と同じ構造)。オーバースピル再保険は21億米ドルを超える10億米ドルの部分について契約更新され、GXLの第1レイヤーの中の3つの個別契約は、その割合を25%に引き下げましたが、引き続き契約されています。

2023年度のGXL全体の概要

  • 各クラブのリスク保有限度額(リテンション)は1,000万ドルで変更なし
  • プールも昨年同様、1千万米ドルを超える1億米ドルで変更なし
  • 1億米ドルを超える部分については下記のとおり:

    • 第1レイヤーは1億米ドルを超える6.5億米ドル、第2レイヤーは7.5億米ドルを超える7.5億米ドル(15億米ドルまで)、第3レイヤーは15億米ドルを超える6億米ドル(21億米ドルまで)
    • 第1レイヤーの75%部分および第2レイヤーと第3レイヤーはともに、Covid-19・悪意のあるサイバー攻撃およびパンデミックリスクを除き、追加負担なく無制限で複数回回収可能な契約を再保険市場で調達した。2023年度の再保険契約では、1億米ドルを超える6.5億米ドル(7.5億米ドルまで)のクレームについて追加負担なく無制限で複数回回収可能な契約に拡大。これにより、IG加盟クラブがカバー対象と認めたリスクは、ほぼてん補が可能となった。第2および3レイヤーにおける7.5億米ドルを超える13.5億米ドルまでのクレームは、年間累積回収限度額13.5億米ドルを設定。当該年間累積回収限度額を超える損害について、IGのプールでカバーされるため、船主のてん補には変更なし。
    • 第1レイヤーの25%は3つの個別再保険契約によってカバーされる。これらの契約はGXLのオープン市場出再部分とは別途にそれぞれ更新された。
    • ハイドラは、2022年度契約と同条件で、第1レイヤーの年間累積免責額(AAD)部分を負担する。第1レイヤーの保険市場調達部分が75%に増加したことにより、2023年度のAADは1億710万米ドルに増加した。

  • その他:オーバースピル再保険(21億米ドルを超える10億米ドル)およびその他附随的なカバーはトン数(GT)ごとの保険料率に基づいた保険料で更新されている。

バミューダを拠点とするIGの再保険キャプティブであるハイドラが、引き続き一部のリスクを保有することでIGをサポートし、保険料の安定性に貢献しています。個別再保険契約を利用することにより、特にハリケーン「イアン」やロシア・ウクライナ紛争、そして継続的な再保険市場でのカバーの問題等により市場心理が変動した年においても、船主の皆様へ引き続き安定を提供し続けています。

過去数年間、プールクレームは悪化の状況が続いていましたが、2022年度のプールクレームは穏やかでした。しかし、投資市場のボラティリティや、再保険市場コストの増加とインフレ懸念により、大きな影響がありました。そのような状況にも関わらず、GXLは平均保険料率5.8%の引き上げで、船主の皆様に最も広範囲のカバーを引き続き提供いたします。

各クラブのリスク保有限度額とGXLプログラムの発動ポイント

2023保険年度のプールの構造およびGXLプログラムの発動ポイントと同様に、各クラブの保有限度額は1,000万米ドルで変更ありません。

MLCカバー

海上労働条約(MLC)にかかわる市場再保険は、2023年度も競争力のある市場条件で更新されました。この保険料は全体的な再保険料率に含まれます。

P&I戦争危険特別担保

P&I戦争危険特別担保は、2023年度の12か月間について更新されます。繰り返しになりますが、この保険料も船主の皆様の再保険料に含まれます。

しかし、ロシアとウクライナの間で進行中の戦争のため、IGの超過額戦争再保険会社は、この海域で運行する船舶に対して、(再保険会社が船舶戦争保険者の船主責任特別担保ですでに適用している除外文言と一致する)地域除外文言を要求しています。IGは、影響を受ける船舶についてサブリミット・カバーを提供できるよう交渉しています。ただし、利用できるカバーは、主たる超過額戦争保険の限度額である5億米ドルよりも大幅に低い船舶あたりの制限に基づく可能性が高い見込みです。IGは、このカバーの詳細について追ってご報告します。

2023年GXLプログラムの構成

下の図は、2023年のGXLプログラムのレイヤーと全体像を示しています。

2023年度 再保険料率の配分

IGの再保険委員会は、年次分析の一環として、保険料の見直しに加えて、前述のように船種のカテゴリーを検討しています。 

結果的には、現時点ではカテゴリー数に変更はありませんが、GXLに対する各カテゴリーの過去のクレーム成績を勘案し、相対的なレートの変化にいくらかの調整が必要となりました。

下記は2023年度のGI再保険料率です。

船種カテゴリー 保険料率US$ % change in rate per GT
Persistent Oil Tankers 0.6663 +3.00%
Clean Tankers 0.4051 +10.50%
Dry 0.5991 +6.2%
FCC 0.7277 +10.5%
Passenger 3.8677 +0.0%
Chartered tankers 0.3128 +7.5%
Chartered dries 0.1526 +7.5%

「これは、厳しい市場環境を勘案すると、国際グループとそのメンバーにとってポジティブな再保険の更新です。」

マイク・ホール  
– 国際グループ再保険委員会委員長

The International Group

PI Club

Date2023/01/17