補償状(LOI)-本当にあなたは守られていますか?

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"傭船者やシッパーが発行した補償状(LOI: Letter of Indemnity)に基づいてメンバーが求償を行う際に、クラブのアシストが求められることがあります。

LOIは事あるごとに使用されていますが、使用が適切でない場合もあります。これまで LOIは2つの目的に使用されてきました - i) 相手方の損害を支払うことの約定(つまり補償)、そしてもう一つはii) 問題が発生した場合の当該補償の発動です。 これらは長文の正式契約を補完するもので、あえて言えば、ビジネスをよりスムーズに運ぶためのミニ契約書ともいえます。

例えばオリジナルB/Lが揚げ地に未着の場合、傭船者やシッパーが船主に対してLOIを提供し、オリジナルB/Lの提示なしに貨物を引渡すにつき船主が被った損害の補償を約することがあります。適切なリマークが記載されるべきであるのに、傭船者やシッパーが無故障船荷証券(clean B/L)の発行を必要としてLOIが提供されることもあります。

しかしながら、LOIは例外なく期待通りの効力を発揮するものと言えるでしょうか?LOIは常に強制力を持つものとは言えず、ことと次第によっては、文言が記載されたレター用紙ほどの価値もなくなってしまうかもしれないことにご留意ください。

英国法では、契約の内容が違法でない限りは、当事者の意思を反映した行為を行い、契約を結ぶことができます。しかしながら、ここで重要なのは、「違法でない限り」という表現です。たとえば、犯罪の実行について契約合意することはできません。弁護士や裁判官はそのような契約の有効性を認めないでしょう - 仮にそのような契約の下でいかなる支出がなされたとしても、契約の有効性は全くありません。

普段LOIが提供される場面においては、法律に反する行為について約定がなされ、したがってその有効性が確保されないことがあります。すでに上記に事例を挙げてありますが、おわかりになりますか?無故障船荷証券(clean B/L)の発行にあたってLOIが提供される場合がそうです。貨物に損傷があることを知りながら無故障船荷証券を発行する引き換えに船主への補償を傭船者が約するケースです。

船荷証券(B/L)に署名することで、船長は荷主に対して、貨物がB/Lの記載と一致していることを表示するようになります。もし船長がB/Lの記載が実際と異なることを知っていて、にもかかわらずB/Lを発行した場合、船長はそうと知りながら貨物レシーバーに対して不実な表示をしたことになり、事実上、詐欺行為を行ったことになります。詐欺はもちろん犯罪です。そのため、船主が取得したLOIに実際の有効性はありません。補償提供者は、船主から求償を受ける恐れもなく、責任を負担せずに済んでしまいます。

不幸にも、貨物がB/Lの記載が実際と異なることを船長が知っていたがために、取得したLOIの有効性が確保されず、さらにはクラブ担保に支障をきたすことになります。期待に反してダメージ貨物を受け取った被害荷主のクレームからは逃れられず、再求償もできません。傭船者に対応を促すべく営業的プレッシャーをかけることが頼みの綱ですが、これもうまく行くとは限りません。

どのような行為を、どのような理由でしてほしいと頼まれているのか、常によく考えてください。大丈夫と言ってなだめられたり、激論の末そういうことになったり、緊急時という理由で押し切られたりといったこともあるかもしれませんが、そうしたことの背後にリスクが潜んでいます。。もし疑念を感じられた場合は、どうぞクラブへご連絡ください - 私たちはそのためにいるのですから。"

Staff Author

PI Club

Date2017/03/29