回覧08/21: シエラレオネからの微粉鉄鉱石輸送にかかわる液状化リスク

アウトライン
- シエラレオネから積み出される微粉鉄鉱石貨物について、積出港での規制監督の見落としや含水量の高い貨物による液状化と船舶復原力喪失のリスクへの懸念が高まっています。
- シエラレオネのペペル港から微粉鉄鉱石貨物を積載する場合は、荷送人から船積の際に提出される貨物の物理的・化学的特性に関する最新で有効かつ正確な情報を入手することが不可欠です。
- 液状化するおそれのある貨物の含水量と輸送許容水分値をテストし分析するための要件と手順を確実に遵守するのは、荷送人の責任です。
- 国際P&Iグループのすべてのクラブは同様の回覧を発行しています。
メンバー各位、
シエラレオネからの微粉鉄鉱石輸送にかかわる液状化リスク
シエラレオネ積出しの微粉鉄鉱石(Iron Ore Fines)
貨物の液状化のおそれや積出港での監督当局の見落とし等による特定積出港からの鉱石の輸送に起因するリスクについて、当クラブのロスプリベンション速報(LPB No. 896、859、729、695 および660)をご参照ください。微粉鉄鉱石の輸送リスク、特に鉱山を段階的に再開しているシエラレオネで、ペペル港において微粉鉄鉱石貨物を積載・輸送をする船舶のリスクへの懸念が高まっています。
国際P&Iグループ(IG)では、ペペル港から船積予定の微粉鉄鉱石貨物が長期間にわたって覆いのないまま野積みされており、特に雨季には液状化の危険性があると考えています。また、ペペル港から積出される一部の積荷は、以前は輸出用とするには低品質すぎるとされていたもので、長期間野ざらしで積まれていることも知られています。現在そのような低品質の貨物が、輸出用としてより品質の良い鉄鉱石とブレンドされています。
ペペル港から含水量の高い微粉鉄鉱石が積載される場合には、液状化するおそれがあることにご注意いただく必要があります。含水量が14%以上の場合、液状化リスクは非常に高くなります。特に雨季には、この地域の微粉鉄鉱石の含水量は、通常13%から16%となります。また乾季には、野積みされた貨物の表面は、比較的乾いているように見えますが、下に行くにつれて内部は全体的に湿っています。したがって、荷送人は注意深く監視の上、野積みされた貨物で水分除去が必要なものを識別し、安全に輸送可能な状態の貨物とは分離することが重要です。
また、ペペル港で積載された微粉鉄鉱石貨物に関して、荷送人が提出する申告書やテスト証明書には、不審点や矛盾点が報告されていることにもご留意ください。これは、一部の荷送人が、積載する貨物の安全特性を適切に評価あるいは理解していないことを示しています。缶テストによる貨物のチェックテストも、正しく判断をしないと、誤った結果となってしまうこともあります。缶のサンプル表面水分の有無だけを根拠として、貨物の積載可否を判断するべきではありません。
したがって、シエラレオネのペペル港から微粉鉄鉱石貨物を船積する場合は、積載貨物の物理的・化学的特性に関する最新で有効かつ正確な情報を、荷送人から入手することが不可欠です。液状化のおそれがある貨物の含水量及び運送許容水分値(TML)をテストし分析するための要件と手順を確実に遵守することは、荷送人の責任です。荷送人と船長の責任については、以前のLPB No. 729およびNo. 695をご参照ください。
書類上の相違点や懸念がある場合、早期にこれらを特定することが、船積み前にタイムリーに問題を解決し、遅延を最小限に抑える鍵となります。適切なタイミングで問題に対処するためには、船積前に十分な余裕をもって荷送人の申告書とテスト証明書を受け取ることが必要です。シエラレオネのペペル港にて微粉鉄鉱石貨物の積載を行う際に何らかの懸念がある場合は、当クラブへご相談ください。
固体ばら積み貨物輸送の液状化リスク
メンバーの皆様には、鉱石貨物の液状化が他の輸出港においても、依然として大きな懸念事項であることをご承知おきください。特定地域からの鉱石貨物が液状化することにより生じるリスクや、そのような輸送貨物の積載時に取るべき対策について記載した下記のクラブ回覧をご参照ください。
船長は、安全で規則に準拠した貨物のみの積載を許可するというIMSBC Codeに基づく義務を認識し、メンバーは、荷送人が申告する貨物グループに関係なく、微粒子を含むすべての貨物について、2011年2月発行のクラブ回覧29/10に記載されている「推奨する注意事項(recommended precautions)」に従わなければなりません。また、メンバーには、2012年6月発行のクラブ回覧08/12および2015年7月発行の10/15「通知義務の要件(notification requirements)」の遵守をお願いいたします。インドネシアおよびフィリピンの港からニッケル鉱貨物を積載するために船舶の確保や用船を予定している場合、または既存の契約の下で、そのような貨物の積載指示を受けた場合は、速やかにクラブへご連絡いただく必要があります。
ご不明点、ご心配な点等ございましたら、当クラブまでご連絡ください。
国際P&Iグループのすべてのクラブは同様の回覧を発行しています。
UKP&Iクラブ 日本支店
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Circular_8-21_Japanese 197 KB
2021/10/11
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UK_Circular_08-21 156 KB
2021/10/07
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